2013年05月04日

星の夜 vol.21 -Maris Stella-

昨日に続き好天に恵まれた関東。しかし気温が一段と上がった様で、朝夕冷えることもあるかと携えてきた上着がすっかり邪魔になってしまった。
今夜は黒百合姉妹のLive。場所は吉祥寺だが、自由が丘に寄り道して行った。関東住いの頃行きつけだった銀座和光のチョコレート・ショップ「ル・ショワ」のオーナーシェフ川口行彦氏が、もう大分前に独立して自由が丘のスイーツフォレストに「オリジンーヌ・カカオ」という新しい店を構えたというのを、つい最近になって知った。この機会に寄ることにしたのだが、ル・ショワの方はもう一切後進に譲ったのだろうか。確かに或る時から微妙に味、食感が変ったか―と感じてはいたが。

自由が丘は幼少の頃、祖母や両親に連れられて幾度か来たことがあり、懐かしさを伴う街。尤も、自身が成人してからは滅多に用もないので、個人的には数える程しか実際は訪ねたことがない。
黒百合姉妹〜20130504
東急の駅を南口で降り、大井町線に沿って一本隔てた遊歩道を緑が丘方面に向かって5分程歩くとスイーツフォレストの建物が見えてくる。オリジンーヌ・カカオはその2階の奥まった処にある。店内に入ってすぐにケースの中を覗くと、見覚えのありそうなショコラ・フレが並んでいる。しかしよく眺めると、見慣れない名前が殆ど。マラカイボやアリバ等ル・ショワでお馴染みのものもあるが、主に調達していたグアナラやクリオロ等は見当たらない。
だが似た風なボンボンを見つけ、黒百合姉妹のメンバーと今夜会う友人の分だけ買って店を出た。自身の分を買いそびれるとは随分間抜けだが、7日まで滞在するので後日改めて訪れるつもりでいた。会計の際先の3月に新橋店オープンの案内が目に留まり、そちらに行っても良いと思った。
店を出てから「マカロンも買えば良かったか」と思ったが、ぼんやりしつつショーケースを眺めた時にはマカロンはひと口サイズの小ぶりのものしか見当たらなかった。ル・ショワでいつも買っていたマカロンは直径8cmくらいもありそうな大きなもので、ひとつだけでもかなり腹に溜まる。それをマッタリ、時間をかけて食べるのが醍醐味なのだ。

自由が丘から東急東横線で渋谷へ出て、京王井の頭線に乗換え吉祥寺へ。東横線の渋谷駅が副都心線との相互乗入れも兼ねて新しく、地下駅に移行したというニュースは最近見聞きし知っていたが、その後訪れるのは初めてである。嘗ての渋谷なら東横線から井の頭線まで、目隠ししても辿り着けるくらいだったが、すっかり様変りした構造にいささか面食らい、しかも長い地下道の中で迷子になりそうだった。
黒百合姉妹〜20130504
吉祥寺の会場の前で友人と合流し、連休中の所為か普段より鈍い客足を心配しながら開演を待った。


黒百合姉妹Live
『星の夜 vol.21 -Maris Stella-』

2013年5月4日(土)
吉祥寺Star Pine's Cafe
開場18:00/開演18:30

JURI(Vocal、etc.)
LISA(Piano、etc.)
有馬純寿(Keyboard、etc.)

Guest
佐藤洋嗣(Contrabass)
赤羽美希(Irish harp、etc.)
近藤治夫(Bagpipes、etc.)


まばらな客席も開演前には八割方埋まり、多少安堵の息をついた処で場内の照明がゆっくり落とされた。
深厳なSEが流れる中、コントラバスの佐藤洋嗣が後方から登場しJ.S.Bachの器楽曲を奏で始める。が、次第に調整が崩れ始め、現代音楽めいた即興へと移行する。彼のソロが続く間に有馬純寿、LISAさんそしてJURIさんが出てきて音を重ねてゆく。近年のアルバム『森羅万象の聾』冒頭に似ているが異なる楽想をJURIさんが歌い、そのまま「水のマリア」に連なってゆく。
お馴染みのJ.S.Bachのカヴァー「Nu alrest」で荘厳さを受継ぎ、続く「深」は20年近く前のライブを想わせる長いバージョンのイントロが懐かしく甦った。
最初のMCが入り、冒頭から参加している佐藤洋嗣とアイリッシュ・ハープその他を操る赤羽美希を紹介して、そこから先はハープを加えての演奏となる。
黒百合姉妹の活動最初期から重要なレパートリーである「Under the moon」もいつもとは違うアンサンブルの下、新たな生命を得た様に響く。この曲だけではなく、聴き親しんだ多くの楽曲が新世界を見たかの様だった。
「Pour ce se d'amer」は通称「ハープ」と呼ばれ、ハープの音色を生かす為に描かれた作品。実は前回、昨年11月の南青山でも同じ顔ぶれで演奏されたが、その時は新鮮である反面いささかぎこちなさがあった。今夜は遥かに溶け込んでいる。前半の器楽演奏部分、リピート前で一瞬ピアノが先走った様に聞こえたが…まあそっとしておこう。
「Lilia」、「Blue forest」とチェンバロを起用する楽曲にも別の撥弦楽器が加わることで膨らみが増す。アイリッシュ・ハープは一般的なグランド・ハープよりも音が硬質だが、それが却って水の弾ける様な清冽さを醸し出す。
再びMCの後、第1部は「眠り」で締め括ったが、睡魔の闇に堕ちるどころかワクワクして一層目が冴えてしまった。

第2部冒頭は赤羽美希と残る一人のゲスト・近藤治夫のデュオで、彼等のユニットのオリジナル曲から「はりねずみのハンス」と「カサロザーダ」を披露した。
グリムの童話に材を得たと思しき「はりねずみのハンス」では赤羽がハープ、近藤がハーディガーディを担当。ハーディガーディと云えば個人的には灰野敬二の操る電気式が馴染み深いが、オーソドックスな機種が備える音色の芳醇さと機能の高さに改めて魅せられた。「ピンクの家」を意味、ブエノスアイレスの総督官邸を表す曲名の「カサロザーダ」では赤羽が鍵盤ハーモニカ、近藤はバグパイプに持ち替え、同じ二人でありながらまた違う音色を生み出した。何より日常では滅多に耳にする機会のないバグパイプを聴けたのが、今回来られて良かったことのひとつである。
再び全員揃っての第2部後半。六人がステージの持ち場に着く様子を2階席から眺めた時、冬のダイヤモンドの並びに似ているな、と気づきハッとした。このセットは選曲もだが、シュトカプーのメンバー二人が参加したおかげでよりトラッド色の強い演奏となった。
「The door on the shore」は元々は違う系統の曲に聞こえていたものが、この編成により隠されたトラッドの影響を垣間見ることとなった。それは数曲後の「Sonnet」や「The stream is the wind」等も同様である。
「Always the tree」と「Gautier 1」(1は正しくはローマ数字(ラテン文字)表記)が続けて演奏される。これは殊に昔の黒百合姉妹を知る、長年聴き続けてきた者にとっては極めて感慨深いことである。「Gautier 1」は5拍子を用い、セカンドアルバム『夜が星をしたがえて』に収められた器楽曲。「Always the tree」は嘗ては映像作品『SCHWARZWALD』巻末収録の「Gautier 2」と題された、こちらもインストゥルメンタルであった。その後歌付きで今の曲名となり、『天の極み 海の深さ』にも正式収録されライブでも度々聴ける様になったが、一方で1の方はSibyllaによるセカンド・アルバムの再発売記念公演でも取上げられず、ライブではこれまで全く縁がなかった。今回は聴けただけでも満足だが、歌無しの為JURIさんが傍らに置いた小さな鉄琴を奏でる姿が実に可愛らしかった。1と2で順序が逆だが、この際気にしない。
古楽曲「Pavan」が久々に演奏される。この曲の後半タンバリンを持つJURIさんはやはり今も月の女神の様に見える。早や20年、いやこの曲を初めて聴いてからまだ20年は経っていないが、黒百合姉妹と巡り合ってからおよその年月、この19年20年に見聞きし体験した出来事がロンドの様に回想されて、思わず溢れる涙を堪えることが出来なかった。故・北村昌士の希望で彼女達がこの曲をレパートリーに加えた経緯と、追悼ライブで弔文と共に演奏された日の思い出も。
第2部の終りは、この公演の副題ともなった「Maris stella」。「海の星」を意味するラテン語だが、「Ave Maria」に通じる聖母を讃える賛歌である。

珍しい編成による珍しい曲、或いは懐かしい曲の並ぶ今宵のライブ。3曲のアンコールにもそれは通じた。
『森羅万象の聾』発売記念公演では「最初で最後」と云っていたが、今日の顔ぶれが集ったことで再び叶った「風のマリア」実演。続く「左の耳のための喜びの歌」も展開や転調が難しいからと、嘗ては殆ど日の目を見なかった。本当に稀な夜。最後は「Kyrie」。今夜何度かパーカッションに携わった有馬純寿がここでも豪快に聴かせてくれるが、これもゲストのおかげだろう。この上なく晴れやかな賛美歌を、いつになく雄大にホールいっぱい響かせて締めを飾った。


前回南青山で行った公演は「noche azul」と題され、訳すと「青の夜」であったが今回はいつものStar Pine's Cafeでタイトルも「星の夜」に戻った。やはり会場との因果関係があるのだろうか。
次回ワンマン・ライブは未定だが、黒百合姉妹として8月に高円寺HIGHで催されるイベントに出演するとのこと。不特定多数の出るイベントではいつもよりややぶっきらぼうで、キメは粗いが普段味わえない「とんがった」黒百合姉妹を聴くことが出来それはそれでとてもユニークである。思い出すのは大阪南港のベイサイドジェニーで嘗て催された『Omen of Evil』出演の時のこと。黒百合姉妹が最初の出番だったおかげで夜通し柄の悪い箱の中で過ごさずに済んだのだが、戦慄を覚えながらも愉しい夜だった。悪名高いあのベイサイドジェニーも、今はもうないと聞く。
夏のイベント、とても興味深くはあるが今度こそ途切れてしまいそうだ。

黒百合姉妹〜20130504

第1部
(SE)
水のマリア Ave Maria-water-
Nu alrest

Under the moon
Pour ce se d'amer
Lilia
Blue forest
眠り

第2部
はりねずみのハンス[近藤+赤羽]
カサロザーダ[近藤+赤羽]
The door on the shore
Always the tree(Gautier 2)
Gautier 1
Sonnet
The stream is the wind
Pavan/Tourdion
Maris stella

アンコール
風のマリア Ave Maria-wind-
左の耳のための喜びの歌
Kyrie
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2012年11月18日

noche azul vol.1〜黒百合姉妹『SCHWARZWALD』発売記念Live

黒百合姉妹ライブ
“noche azul vol.1 SCHWARZWALD発売記念”

2012年11月18日(日)
南青山Mandala

開場18:00/開演19:00

黒百合姉妹noche azul〜20121118

今年5月のStar Pine's Cafe、ニューアルバム『森羅万象の聾』発売記念公演からおよそ半年振り。前回のMCで「やっとCDが出来たので、これからは沢山ライブをやりたい」という風な発言があったので、恐らく年内には…と思っていたら案の定。年2回、半年振りなどと聞けば少なく思われるかも知れないが、この方々にとってはこれが至ってコンスタントなペースである。
一方、今夜の会場である南青山マンダラでのライブはこれが実に久々で、1996年3月18日以来16年と丁度8ヶ月振りになる。そもそもこのハコでの公演数自体少なく、1995年12月3日とその16年前のライブ以来、今回で3度目。過去2回のいずれも、黒百合姉妹の全公演の中で下降線の底辺に近い内容のもので、従って黒百合姉妹にとってここは決して験の良い場所ではなかった。何故今回敢えてこのハコを選んだのか察し得ない処だが、過去は過去として見做し、3度目の正直ではないが充実した演奏が出来れば良い意味で今後に繋がるだろう。
副題の“noche azul”とはスペイン語で「青い夜」を意味する。1998年以降多くのライブに付けられた“星の夜”に替る形で、前回がそのvol.20に当たり節目の意図があるのかと思っていたが、寧ろハコの違い(ありていに云えば店の名前)に由来するものだろうか。そういえば2008年夏のマンダラ2でのライブは黒百合姉妹の活動開始から20周年の意味合いを含んでいたが、当時の主催公演でありながら“星の夜”の名は冠されていなかった。
『SCHWARZWALD』とは、嘗て1992年にSSEからリリースされたビデオソフトである(詳細は黒百合姉妹の公式サイトを参照)。この度はSibyllaより、DVDとして改めて発売されることになったもの。長らく廃盤状態にあったSSE時代の作品を全てオリジナルレーベルからリリースし直すアナウンスがあった際、この『SCHWARZWALD』は難しいかも知れない、という話を伝え聞いていたので、こうして(時間はかかったが)無事の発売に漕着けたことは誠に嬉しい限りである。


JURI:Vocal、etc.
LISA:Piano、Keyboard、etc.

有馬純寿:Keyboard、etc.
佐藤洋嗣:Contrabass
赤羽美希:Harp、Keyboard


場内に流れるJ.S.Bachのオルガン曲がまだ止まぬ内に現れたLISAさん、有馬さん、そしてコントラバスの佐藤さんによって導かれるSEに乗せて、JURIさんの朗読が始まる。オープニングが朗読というのは初めて黒百合姉妹を聴いた『猫耳』ライブがまずそうだったので個人的には親しみ深い。地下にあるこのホールの底の底に沈んでゆく様な、緩やかに下降する螺旋を描く響きを纏う。

 すべての物質が 形を成すままに
 光もまた 音の 元となる粒子
 混沌の中を 深い眠りに堕ちてゆく

時折、英語かラテン語か定かでない囁きが朗読と戯れる様に浮かんでは消えて、初めは有馬さんの仕業かと思ったが実はLISAさんのボイスなのだった。
朗読とSEがそのまま導入となり、「Down in you forest」へと誘う。曲調から云って通常の歌い出しを飾る曲ではない筈が、SEからの流れで余りにも違和感なくこの夜の入口を形成してしまう。
沈みゆく螺旋は途切れぬまま、黒衣の道士を想わせる「La pluie est noire」へ、そして「Le chant de l'etoile」(シャンセ)と続く。実に懐かしい古い曲が連なるのは、昔の作品の再発売に合わせた選曲だろうけれども、結果として近年の志向とも単に古めかしいだけとも違う新鮮な構成を生んでいる。
雰囲気が変り、仄かに愉しげでいて不安な「Kum」(uは正しくはuの上に二点(‥)のアクセント記号が付くもの)。実は猫の名前だそうで、『Schwarzwald』及びLYS NOIRS CLASSIQUESの特典CDに収められた珍しい曲。元はLISAさんによるピアノ・ソロだったものがこの日はバンドで、JURIさんによる歌(歌詞)付きで演奏された。似た楽想を曲と曲の合間に即興的に弾く処は聴いたことがあるが、この曲を実際に人前でやるのは初めてとのこと。「Kum」が聴けただけでも今夜聴きに来た甲斐があったというもの!名曲なのだから、もっとライブで頻繁に演奏してくれれば良いのに、と願う。
「The stream is the wind」は嘗て、ライブの定番曲の一つだった。LISAさんの書いた英語の詞と軽快なリズム、姉妹二人のコーラスが切れを生み、セットリストに抑揚をつけるのに格好の曲だった。有馬さんが操るタンバリンが『Schwarzwald』の画と重なる。
再び沈む螺旋が蘇り、アルバム『月の蝕』から『Ma clamour』。『猫耳』で演奏したので馴染み深いが、実はライブでやる機会のそれ程多くはない曲。だが《月のめざめ》であったり、90年代後半の活動休止前のミノヤホールであったり、要所で時折演奏して忘れ難い印象を残す曲。
ここでJURIさんのMCが入り、ゲストでアイリッシュ・ハープ奏者の赤羽美希さんが登場して『Blue forest』及び『Marble Angel』を。赤羽さんのハープは音数も音量も総じて控え目ながら、他の楽器が止む瞬間にハッとするパッセージを刻んだりして、普段の黒百合姉妹とは異なる響きを醸し出す。アルバム『森羅万象の聾』にも参加している方だそうだが、いつも一緒にやる訳ではない人や楽器を加えても破綻せず、むしろ芳醇に膨らむ黒百合姉妹の音楽は若い頃より今が旬なのかも知れない。熟成の進むワインにも似て、今後益々味わいが増すのではないだろうか。

黒百合姉妹noche azul〜20121118

少々の休憩を挿み、後半はゲストを含む全員が初めから登場して森厳なSEに乗せ「月のマリア」を。ふと気づけば最新のアルバム『森羅万象の聾』からは前半の「Down in you forest」とこの曲の二曲のみと、意外にも少ない。
前作『天の極み 海の深さ』から「Lilia」。先の「Down in you forest」や「Blue forest」も同様だが、チェンバロとアイリッシュ・ハープという音色の異なる構造上の撥弦楽器の重なりが心地良い。
懐かしい曲「Under del linden」は『月の蝕』から。似た曲調を持つ『星のひとみ』収録の「Bring the light」が主に演奏される様になってからこの曲の出番が減った様な気がするのは、あくまで気のせいか。2000年以降では2006年6月11日の“星の夜 vol.16”―CLASSIQUESシリーズとしての『月の蝕』発売記念でこの曲と「Bring the light」の両方をやり聴き比べしたのを覚えている。
続く曲の冒頭でLISAさんは一瞬だけ、「魔物」を弾こうとしていなかったか。あくまで演出の一環と見えて、ハープの鮮烈なアルペジオと共に速やかに「One snow」へと移行した。JURIさんベルの音と共に、聖夜を感じさせる讃美歌調の曲である。
『森羅万象の聾』からは少ないが、『天の極み 海の深さ』からは多くが演奏され、LISAさんのピアノによるインストゥルメンタル「Spica」までが聴けたのは「Kum」同様に貴重だ。
「Pour ce se d'amer」は90年代の中盤にしばしば演奏されていた。長いイントロを持ち行間の多いユニークな曲で、『星のひとみ』にも収録されたがその後は殆ど聴けなくなってしまった。生のハープとコントラバスのピチカートを有して今宵、改めて復活した。ハープ奏者をゲストに迎えるのも、「ハープ」と巷で呼ばれるこの曲を生ハープで演奏するのも実は今夜が初めて(の筈)である。
『月の蝕』からお馴染みの冬の曲「White of snow」。そういえば今回は(まだ11月ではあるが)『Schwarzwald』発売記念と並行して冬、殊にクリスマスをイメージした選曲もされていた様だが、もう一つの冬の定番「冬のはじまり」は演奏されなかった。
後半のMCの後、二部最後の曲は「Laurie」。まだまだ出てくる懐かしい曲、のオンパレードもここで一区切り。夢見る様な中間部を、ハープ入りで更に可愛らしく演奏したのが印象的。

嘗てのベストドレッサー賞になぞらえたメンバーから客へのプレゼント・コーナーの後、アンコールはクリスマス・ソングを、と云って「We Three Kings」を。この曲を以前聴いたのはいつのライブだったか、あたかもオリジナルの如く黒百合姉妹に相応しい曲。原曲は1856年に書かれたクリスマス・キャロルで、直訳すれば「我ら三人の王」だが邦題は「我らは来りぬ」とされている。
アンコール二曲目はJ.S.Bachのカバーで『月の蝕』に収められた「Her Gott,nun schleuss den himmel auf」を、JURIさん曰く「初の試み」と称して赤羽さんと有馬さんのキーボード、佐藤さんのコントラバスに乗りJURIさんとLISAさんのコーラスで。
そして、音楽を続けられる環境全てに対する感謝を伝えた後、締め括りの曲は「K」。最後まで懐かしさに満ちた顔ぶれの一方で、「星のひとみ」や「Kyrie」、「水の姿」など最近の主だった楽曲が軒並外れる風変りな選曲であった。昔の曲も今の曲も好きな私にとってこういうライブを偶にはやって欲しい処だが、次は果たしてどうなるだろう。


DVD『Schwarzwald』はこの日手違いからか到着が遅れ、開場時には間に合わず結局終演後の販売となった。実は映像の文字の映りが悪いという不具合があったそうで、発売を延期するかの瀬戸際でとにかく、会場のみでの先行販売として届けさせたとのこと。
改めてプレスし直すそうで、今夜購入した人で交換を希望する方には対応するとのことだが、勿体ない。ファンとしては内容が不具合であれ、その日その場でしか手に入らない状態のものは所謂レアものであり、手許に置いておきたいものなのだ。

残念な点を幾つか。キーボード、殊にオルガンの高音部がいささかキンキンと耳に痛く響いた点。以前南青山でやった時はJURIさんが風邪を召していたことがあったが、今夜はLISAさんが風邪気味だったのか声がややかすれ気味だったこと…お大事に。
『Schwarzwald』に収録された「Gautier II」(Always the tree)が無かったのも少々残念。

次回ライブは未定で、出来れば来年の10月頃に南青山か吉祥寺(Star Pine's Cafe)でやりたいとのこと。
その時もまたこうして駆けつけ、そして今夜再会した友人達、或いは来られなかった友人達とも再び集えることを願う。

黒百合姉妹noche azul〜20121118

第一部
01 (朗読)
02 Down in you forest
03 La pluie est noire
04 Le chant de l'etoile
05 Kum(uはアクサン記号“‥”の付くもの)
06 The stream is the wind
07 Ma clamour
08 Blue forest
09 Marble Angel

第二部
01 月のマリア Ave Maria -moon-
02 Lilia
03 Under del linden
04 One snow
05 Spica
06 Pour ce se d'amer
07 White of snow
08 Laurie

アンコール
01 We Three Kings
02 Her Gott, nun schleuss den himmel auf
03 K
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2012年05月27日

星の夜 vol.20〜黒百合姉妹Live

黒百合姉妹〜20120527壱

黒百合姉妹Live〜
“星の夜 vol.20 ニューアルバム発売記念concert”

2012年5月27日(日)
吉祥寺 Star Pine's Cafe
開場 18:30/開演 19:30

JURI(Vocal、etc.)
LISA(Piano、etc.)
Arima Sumihisa(Keyboard、etc.)
Sato Yuji(Contrabass)

昨年6月に行われた北村昌士追悼イベント“WORN OUT MUSIC”への出演以来11ヶ月余り、ほぼ1年振りの黒百合姉妹Live。今回は来る6月20日にリリースされる新作『森羅万象の聾』の発売記念とのこと。黒百合姉妹名義のオリジナル・スタジオ・アルバムとしては6作目に当たり、こちらは前作『天の極み 海の深さ』から実に7年振りとのことだが、1年振りだの7年振りなどと聞いても別段意外に感じないのが彼女達のペース。これを役得と呼べるのかはわからないが、彼女達にも取巻く人々の周りにも機械じかけの刻とは異なる時間が常に流れている。
入場の後新たなCDを購入し、ステージ背景にはこの『森羅万象の聾』のジャケットに起用されたホーリー=ワーバートンの作品のスライドが写し出されているのをしばし眺めた。J.S.バッハの『フランス組曲』が流れる中スタッフや友人達と歓談しながら緩やかに開演を待った。
黒百合姉妹〜20120527弐
ほぼ定刻通りに場内の照明が落ち、有馬さんが登場。JURI et LISAのアルバムに収められた「Ancient Chant」を想わせるヴォイスと低音通奏によるSEが漂い始め、やがてLISAさんとゲストのコントラバス奏者の佐藤さんが現れ、最後にJURIさんが登場すると荘厳なオルガンが響く。「Ave Maria-water-」。新作に収録された<マリア三部作>のひとつ「水のマリア」である。実はこの流れは『森羅万象の聾』のオープニングそのものだ(最初のSEは「prologue-la chamble du clair de lune I-」)。2曲目に『月の蝕』から「Nu alrest」が演奏されたが、第1部の前半は概ねニュー・アルバムからの曲を披露する形となった。LISAさんの操る音はこの間オルガンもしくはチェンバロのみで、表向きは静かだが意識の底であらゆる気配が揺れ動く様を紡ぎ出していた。「Nu alrest」もその音の流れの中にあって、恐らくこの新作に収められていても違和感のないものだったと思う。
5曲程演奏された処でJURIさんのMCが入り、1部後半は過去のお馴染みの曲から「Under the moon」「La pluie est noire」「Always the tree(Gautier II)」「深」等々。漸く堰を切った様にピアノの響きがほとばしる。背景のスライドはいつの間にか曲に合わせ動く映像となっている。
最後は新作から荘重なオルガン曲「IN DICH」を演奏し、休憩。

第2部も新譜に収められたSE―こちらは終曲の「la chamble du clair de lune II」から導かれ、「月のマリア Ave Maria-moon-」「GLORIA」「DER ENGEL SCHAR」そして「Lotus-Zal-」を挟み「水の姿」と新作の曲が演奏される。「GLORIA」及び「DER ENGEL SCHAR」はアルバム『星のひとみ』収録の「DER NEBEL」以来のJ.S.バッハのカバーであるが、前出の「Nu alrest」と云いこれは黒百合姉妹の真骨頂のひとつだ。9割はオリジナルが占めるレパートリーにあって不自然さの欠片もなくこの古典が嵌っている。というより、これこそが黒百合姉妹の原点の中枢を担う一翼であり、J.S.の曲を演奏することは彼女達にとって羊水に回帰する意味を持つのではないだろうか。
第2部の曲数を少なく感じたのは私がのめり込み過ぎ、半ば酩酊状態に陥っていた所為だろうか。実際には導入のSEを含めいつも通りに10曲はやっていたことに後で気づいた。と云って物足りなかった訳では全くない。1曲1曲が(黒百合姉妹としては)長大であり、演奏の密度が濃く、第1部ではいささかリバーブが深く効き過ぎ時として鮮明さを欠いた響きが澄み亘り、不足は何ひとつ感じさせなかった。LISAさんの書いた本来はインストの「Lotus-zal-」に今宵はJURIさんがハミングを加え、ここでも変化の兆しを垣間見せていた。「水の姿」は長くライブで演奏されてきた曲であるが、以前は「The wind(part 1)」として紹介されていた(当初は「The wind part 2」として調子の異なる曲を併せて演奏するのがお決まりだった)。CD化を待ち望んだ曲のひとつだが、久しく歌詞がなくハミングだけで歌われていたものが前回のライブから言葉を伴う様になった。嘗て(今も)ライブの定番曲のひとつで、演奏される度に変容を繰返した「Blue forest」にその辺り通じる気配がある。
「Bring the light」から「星のひとみ」そしてその「Blue forest」へとお馴染みの曲が続けて演奏されノスタルジアを漂わせた後、フィナーレは「聖なるかな」。嘗ては『月の蝕』にボーナス・トラックとして収録されていた荘厳な賛美歌である。SSE在籍時代のアルバムが先年Sibyllaよりまとめて再発売された時、リマスターにより確かに音は良くなったがこの曲と「左の耳の為の喜びの歌」が(或る意味想定通りではあるが)『月の蝕』から外されてしまったのは残念なことである。非売品のSpecial CDで今も聴くことが出来るのが救いか。『天の極み 海の深さ』のリリース以降、大トリの座を「Kyrie」に譲り演奏される機会も少なくなったが、久々にこうして聴けるとそれだけで鳥肌が立つ。個人的に『猫耳』プレミアム上映でのライブが邂逅である為か、その時の鮮烈なこの曲の印象という呪縛から18年を経過しても尚逃れられない。

アンコールは<マリア三部作>のトリを飾る「風のマリア Ave Maria-wind-」と「Kyrie」。ライブでやるには限界があるので、とJURIさん曰くこれが最初で最後の「風のマリア」だが、「月の蝕」を思い出す姉妹による連弾と久々のJURIが操るパーカッション(タンバリン)、曲調も可愛らしく貴重な楽曲なので、是非「CDにてお楽しみを」などと云わずこれからも演奏して欲しい。
前作から7年振りともなれば聴き手が待詫びるのは当然のこととして、今回ばかりは届ける側も待ちに待ったアルバム完成でありまたライブであった様だ。JURIさんがいつになく高揚した声で「早くアルバムを作って、このライブの最後の最後にこの曲を歌うのをずっと…ずっと…ずっと想像して、今この時が来て凄く嬉しい」と云って歌い出した「Kyrie」。高らかな祝福を感じさせるこの曲の響きがいつもに増して力強く、輝きに満ちて行き亘る。今夜、都内では各地で無数のライブやコンサートが開かれたであろうが、間違いなく最も幸せな音が、想いがここにあった。

およそ3年振りに訪れた吉祥寺の街であるが、駅の造りが様変りしていたことに驚いた。今はまだ工事中なので今後どうなるのかはわからないが、以前のつもりで鼻唄など歌いながら曲がろうと思った先が壁に。うっかり迷子になってしまいそうだった。
今宵のStar Pine's Cafeでは6年振りだか7年振りとなる懐かしい友人との再会があり、ひとしきり嬉しい気分に浸った。だが実はもう一人、遠方の新潟から大切な友人が駆けつけたことを迂闊にも知らずに過ごしてしまった。終演後メンバーとの会話で彼が来ていたことを知り、慌てて辺りを探したが後の祭り。その繊細な性格を知るだけに、黙って帰った友人を責められない。私が気づくべきだったのだ。


わかる範囲でセットリストを:

第1部
01 prologue-la chamble du clair de lune I-
02 水のマリア Ave Maria-water-
03 Nu alrest
04 DOWN IN YON FOREST
05 IMPERAYRITZ DE LA CIUTAT JOYOSA
06 Under the moon
07 La pluie est noire
08 Always the tree(Gautier II)
09 深
10 IN DICH

第2部
01 la chamble du clair de lune II
02 月のマリア Ave Maria-moon-
03 GLORIA
04 DER ENGEL SCHAR
05 Lotus -Zal-
06 水の姿
07 Bring the light
08 星のひとみ
09 Blue forest
10 聖なるかな

アンコール
01 風のマリア Ave Maria-wind-
02 Kyrie

Star Pine's Cafeから宿泊先に戻り、購入した新作『森羅万象の聾』を早速聴いた。が、即座に感想を書ける程一筋縄の内容ではない。2、3の曲を除き殆どを当夜のライブで演奏したのだが、CDで通して聴くとライブでは見えなかった姿が見えてくる。その様に熟慮し練尽して創られたアルバムであることは確かである。
暫く繰返し聴き込んだ後、書き切るだけの言葉に恵まれたら改めて記してみたい。
黒百合姉妹〜20120527参
posted by 紫乃薇春 at 23:31 | Comment(6) | 音楽<黒百合姉妹>

2011年06月17日

黒百合姉妹ライブ〜WORN OUT MUSICより

どらビデオとさがゆきによる奇天烈極まりないライブの余韻(というより後遺症?)により昨夜は明け方近くまで寝付けなかった。寝落ちしても幾度か目を覚ましては拳を突き上げ意味のない勝鬨を発するなどまるで、逸話で伝わるベートーヴェンの最期の様な振舞いをしていた気がする。尤もその時半分以上は寝ぼけていたので、夢の中での行いだったかも知れない。
漸く昼前になって本格的に目が覚めた。携帯をチェックすると今日は時間に従い天気が回復してゆく様子だったので期待したが、宿を出ると小雨が降っている。傘を差す人が目立つが、昨日程の降りではないので傘は出さず小走りに歩いた。
宿の近くの電化ショップで要用の物を少し買い、新大久保にある今夜の会場へと向かった。
WORN OUT MUSIC〜20110617壱
新大久保に着くと雨はほぼ小止みになっていたが、まだ時折細かい滴が落ちてくる。だがまず改札をくぐり街に繰出してみて驚いた。
噂には聞いていたが、駅前から通りに沿って隣国の飲食施設やら雑貨屋などが果てしなく林立している。知らずに迷い込んだら日本ではない風な光景だ。昔からこうだったろうか。否定はしないし嫌いでもないが、正直個人的には疎い文化のひとつである。今夜は初めてのライブハウスなので場所を確認する意味もあり早めに訪ねたのだが、街の様子にまず圧倒されてしまった。しかしそれより肝心のライブハウスの場所がわからない。事前にネットで住所を調べ地図を見て当たりをつけてはいたが、それらしき場所を訪れても見極められない。一応目印となりそうな施設を見定めお店に電話して、やっと会場への入口がわかった。
その後開場まで時間を持て余してしまい路頭に迷いかけたが、歩き回る内に漸く一件馴染みのあるチェーンの喫茶室を見つけ、そこでハコが開くまで時間を潰すことにした。

WORN OUT MUSIC〜20110617弐

WORN OUT MUSIC
2011.6.17(金)新大久保EARTHDOM

出演順:
BACTERIA
黒百合姉妹
101A


昨日はさがゆき達による容赦ない音圧攻撃を喰ったが、今日は黒百合姉妹なので耳に優しい夜を過ごせるだろうと思っていたが甘かった。対パンがあるのを忘れていた訳ではないが、顔触れに留意すべきであった。
最初の出演者はBACTERIA。昔懐かしいハードコアなロックバンドである。などと書くと牧歌的に聞こえるかも知れないが、牧歌というよりは撲殺の調べ。凶暴な細菌が地響きを立てながら猛威を奮うというニュアンスである。こういう音を嘗てはよく聴いていた。いや音量だけならもっと凄いものを度々耳にしていた。決して不得手ではないが、昨夜も同様であった様にスタミナ不足を痛感した(だが昨夜のどらビデオとさがゆきの音圧は実はこれ以上だった)
こんな生音に接するのも久々でそれはそれで嬉しいが、出来ることなら黒百合姉妹より後にやって貰いたかった。どうしても難聴気味になり、音の残像が灼きついてしまうからである。
WORN OUT MUSIC〜20110617参
BACTERIAの演奏が終るとJ.S.バッハのオルガン曲が厳かに流れ、やがて森川誠一郎の携わるSEに乗せて黒百合姉妹の演奏が始まった。

(Ave Maria)
Nu alrest
Under the moon
K
The stream is the wind
(曲名不詳)
眠り
Lost wings
最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶

今宵のイベント「WORN OUT MUSIC」は音楽レーベルSSE及び音楽誌Fool's Mateの創始者である北村昌士氏追悼のイベントであることをヴォーカルのJURIさんが告知、イベントの企画は今年2月頃に立上がったらしいが、その後発生した東日本大震災を受けてより広い意味での追悼を込めた企画となった。
今夜の会場EARTHDOMはオールスタンディングで、黒百合姉妹のライブでのこうした環境は1990年代半ばに下北沢シェルターでのイベントに参加した時以来ではないかと思う。
いつもキーボードで参加する有馬純寿氏が今海外にいるらしく不参加、代りにベース及びSEで森川誠一郎が加わり、「Lost wings」では作曲者の立花氏がキーボード演奏を行った。
最初の賛美歌と「Lost wings」以外のキーボードが全てチェンバロの音色で統一されていたのは生ピアノのない環境だからか。終演後メンバーに訊ねた処やはりその意識はあった様で、普段はチェンバロでやらない曲もその音で聴くことが出来るなど貴重なライブでもあった。店に似合わず客席で聴く分には良い音なのも好印象。2月にイベントの話が出た当初は重厚な曲を中心に予定していたというが、震災の後からか方針を変え軽やかだが気持の晴れる曲に選び直したという。各曲の歌い方にもいつもと違いが見られたが、殊に顕著だったのは「最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶」。ここでは歌詞にも改変を加え、中間部では歌うのを控えて祈りを捧げた。
LISAさんのキーボードの響きは常に穏やかで、JURIさんのヴォーカルはやや音程にふらつく場面があるものの声が非常に良く伸び、森川誠一郎のベースは深い熱意を想わせた。短時間ではあるが、聴けて良かったライブだったと思う。

101A
黒百合姉妹の後は再び音圧攻撃。だがBACTERIAに比べるとマイルドというのか、音量も僅かに控えめだが、音の角が丸く聞こえる。BACTERIAは文字通りアンダーグラウンドなハードコア、もしくはパンクというアプローチなのに対してこちらはハード・ロックの流れを汲んでいる様だ。ギターなど激しく歪みを効かせてはいるが、以外にも出音は綺麗である。バンドとしての演奏力は思いの外高いのだろう。器楽音に比してヴォーカルがややひ弱に聞こえるのが難点。
最初の内は結構気持良く聴いていたが、曲が進むにつれ次第に眠くなってきた。私の体内リズムに対してそういうテンポ感なのかも知れないが、やや冗長な処があるのも否めないだろう。BACTERIAは音は乱暴だがいざ演奏が始まってしまうと有無を云わさぬ力がある。謂ば無駄がないのだ。
だが当夜のライブなおいて、コマーシャルな音楽に慣れた人にとっては最も耳心地良く響くだろう。

そして「鬼」。森川誠一郎の新しい?ユニットである。相変らずプログレなお方ではあるが、以前のユニットで披露した様な、全員が違う拍子を刻み何十何小節目で揃う等というトリックはなかった。途中プログレというより歌謡ロックの様な曲もあったが、女声コーラス部隊を配した編成や曲構成など一頃の高円寺百景を思い起こさせた。
ユニークな世界観ではあるが、全体の演奏技術が曲の要求に適っていない印象を受けた。森川氏は恐らく何でもやれる人なのだろう。普通のロックバンドなら恐らく充分な技量なのだろうが、森川さんのやろうとすることはもっと高度な技術を要する筈。少なくとも吉田達也や大友良英などは自分の求める音楽に見合った人材を選び抜いている。
それとも、この器量的危うさが嘗てSSEに携わった者の宿命なのか。
posted by 紫乃薇春 at 23:36 | Comment(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2009年12月20日

黒百合姉妹「星の夜Vol.19“Recit de Sirius”」

黒百合姉妹〜20091220

ウェザーニューズからのメールで長崎県北は今日も降水確率50%、不安定な空模様が続いている様だが、東京は冬型気圧配置の恩恵で清々しい晴天になった。
時折吹く風は季節を伝えるが、それでも外套を纏いながら歩いているといつの間にか汗ばんでしまう。


2009年12月20日(日)
吉祥寺Star Pine's Cafe

開場/18:30 開演/19:30

黒百合姉妹 Live
星の夜Vol.19“Recit de Sirius”

JURI(Vo,Bells,etc.)
LISA(Piano,Vo,etc.)
有馬純寿(Keyboard)

森川誠一郎(Bass,SE)
Sato Yoji(Kontrabass)

岩下達朗(Visual)


今回はゲスト・ミュージシャンにZ.O.A.で有名な森川誠一郎及びコントラバス奏者のSato Yoji、更に映像ゲストとして岩下達朗が参加。森川もベースを担当する為エレクトリックとウッドベースによるツインベースになるのかと思ったが、第1部に森川が、第2部で佐藤が弾き、更に第2部全編に亘り森川が裏でSEを司る形となった。
予定より10分遅れの19時40分頃に照明が落とされ、有馬純寿と森川誠一郎が登場しキーボードとベースで効果音を醸し出す。やがてLISA、そしてJURIも現れハンドベルを手に取ると聴き馴染んだ一曲目が始まった―「冬のはじまり」。その後は「Lilia」やアヴェ・マリアを経てこの時期に相応しい「One Snow」が演奏された。元々冬をイメージさせる曲の多い彼女達だが、この曲は取分け降臨節の雰囲気を伝えてくれる。
その後は久し振りの「Under The Moon」や「深」など初期の頃の曲を今の黒百合姉妹の音で奏で、最後の「K」まで9曲、30分余りの比較的あっさりと短めのセットだった。

Star Pine's Cafe〜20091220

だが後半は大きく様変りした。まだ客席の電気が落ちる前から場内に厳かなSEが響き出し、明かりが消えて出てきた有馬はパーカッションにエフェクトをかけて奏でる。佐藤氏のコントラバスがそれに絡み、LISAのピアノが微かに慄える。そしておもむろに登場したJURIは手に本を抱えてマイクの前に立ち、朗読。第1部から抽象的な映像を写し出していた岩下がここではステージの様子を拾い、今正に佇むJURI、それに時折ピアノのLISAの姿をステージの背後に投影した。その様子がJURIの独特の風貌を陰影深く浮彫りにして驚くべき視覚効果を与えた。
朗読の後は曲演奏に移ったが、曲と曲を絶えず森川のSEが繋ぎ進行を支配する。それは終盤まで続き、元々少なめのJURIのMCがいつもより更に少ない印象を受けた。普段ならライブのタイトル「星の夜」の後につけられた副題についても説明があるが、今宵はそれもなかった。ただ、“Recit de Sirius”―“Sirius”とあるのは大犬座の1等星シリウスのことを差しているのだろう。
口数は少ないが、表情を見る限り例えばPAが不調であるなどJURIの機嫌が殊に悪かった訳ではないだろう。あくまで今夜のライブの流れを重視して多くを語らなかったに違いない。

「星のひとみ」で一旦プログラムを終えた後、JURIとLISAの二人で出て来て客席の一人にプレゼントを。黒百合姉妹からお客へのギフトと云えば「ベストドレッサー賞」がお馴染みだが、今宵はそうではなく「両利きの人に」―私も思わず手を挙げてアピールしたが見留めてはくれなかった様だ(笑)
その後有馬と森川が登場し、有馬の太鼓とJURIのベルをフィーチャーして珍しい「Azul」を、更に佐藤が登場し、ここで初めてツインベースの体裁を取り「Kyrie」で締め括った。
アンコールの際のMCでJURIは「誰もがやりたいことを思い切り出来る世の中であります様に」と語った。これに限らず最近の黒百合姉妹の活動の源は「祈り」の想いなのだろう。嘗てに比べて音のひとつひとつをより丁寧に紡ぐ彼女達からもそう感じる。

次回のライブは現在製作中のCDを待ってとのこと。だがCDのコンセプトが途中で変ったそうで、仕上がるまでには一層の時間を要するのではないか。何年かかっても待つつもりだが、待ち遠しい。
今夜の様な視覚的効果に長けたライブの模様を是非ともDVD化して欲しいと思うものだが、メンバー及びスタッフの方は如何だろうか。

吉祥寺〜20091220

本日の曲目を覚えている分のみ挙げておくが、曲順は不同。
いずれ公式サイトにて正確なセットリストが掲載されると思うので、その後訂正を加えたい。

第1部
01 冬のはじまり
02 Lilia
03 Ave Maria
04 眠り
05 One Snow
06 Under The Moon
07 深
08 Bring The Light
09 K

第2部
10 (朗読)
11 Ave Maria
12 Always The Tree
13 水の姿
14 Nu Alrest
15 La Pluit Et Noir
16 ()
17 Blue Forest
18 White Of Snow
19 ()
20 星のひとみ

アンコール
21 Azul
22 Kyrie
posted by 紫乃薇春 at 23:43 | Comment(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2009年02月14日

【黒百合姉妹】星の夜 Vol.18【Live】

黒百合姉妹ライブ〜20090214(1)

昨日の荒れ模様を見て今日の天候も心配していたが、一夜明けて昼過ぎにはすっかり晴れ、風も大分鎮まった。
その代りに気温が上がり、冬の服装が辛い程だった。夕方吉祥寺に着いた頃には肌寒い風が出てきたのでコートが邪魔にはならずに済んだが、この季節は判断が本当に難しい。

2009年2月14日(土)
黒百合姉妹ライブ
「星の夜 Vol.18 “Jupiter en Verseau”」

JURI(Vo,Bells,etc.)
LISA(Piano,Vo,etc.)
有馬純寿(Keyboard,etc.)

Guest Musicians
牧野(古楽器)
佐藤(Bass)

昨年8月以来ほぼ半年振りのライブ。本当は昨年末にやる筈だったものがずれ込んだ形だが、無事開催出来て本当に良かったと思う。
今日はバレンタインデーに当たる為銀座の行きつけのチョコレート・ショップに寄りメンバーへの差入れを買って行ったが、開場すると受付の脇にメンバーからも今日の来場者の為にチョコレートが用意されていたのが嬉しかった。
19時開演予定の処10分程押して客電が落ち、有馬さんが出てきて荘重なSEを紡ぎ始める。続いてゲスト・ミュージシャンの一人、ウッドベースの佐藤さんが登場。そして黒百合姉妹ことキーボードのLISAとヴォーカルのJURIがステージに現れ最初の曲「秋の終りに冬の海を見に北へ車を走らせた」を演奏し始めた。
古いライブ・アルバムにこそ収録されているものの未だにスタジオ録音されない名曲で、聴く度にCD化を望むのだがメンバーにその気はない様だ。この曲と2曲目の「水〜」ではややヴォーカルが遠く聴こえたが、元々その設定だったのだろうか。冒頭の歌詞を囁く様に語った後歌詞のない旋律を謳い綴るのだが、嘗てより長いサイズで演奏していた様に感じた。以前、ライブにおける演奏前のSEを「睡眠導入剤の様なもの」と表現した黒百合姉妹だが、この曲もそんな意味合いを持つのかも知れない。
過去のライブでは「The Wind」と仮題がつけられた「水〜」は異なる曲想2曲を繋げた組曲風であったものの後半部分が演奏されなくなったのが残念だが、ハミングだったものに歌詞が付き、次のCDに収録されることを期待しても良いのだろうか。
3曲目の「Nu alrest」の為LISAさんがピアノから電子キーボードの前に移った処で、キーボードの音が出ないハプニングが発生。珍しく客席越しにLISAさんとPAスタッフのやり取りの聞かれる場面があったが、その間を利用してJURIさんが最初のMCを入れた。
今夜のライブの副題「Jupiter en Verseau」は現在木星が水瓶座に入ったことを表したものとのこと。「Verseau」を「Venus」と読み違え、今非常に明るい宵の明星を指差してしまった私は間抜け者である。
キーボードのサウンドチェックが終り「Nu alrest」。だが出だしの音がやや不安定に聴こえたのが残念。この日はミストーンも少なくJURIさんのヴォーカルの調子も良く、ここ最近でも殊に完成度の高いライブだっただけにこの時のトラブルが目立ってしまった感がある。
LISAさんが再びピアノに戻り、「White of snow」と「冬のはじまり」を続けて演奏。冬場のライブでは必ず(冬でなくても度々)演奏される2曲。昨年末にライブが行われていればいつかの様に冒頭を飾ったのだろうか。第1部の中盤という位置に置かれたのは、もう季節が変りつつあることを感じてのことか。一方で冒頭に「秋の終りに冬の海を見に北へ車を走らせた」を選んだのは、年末に出来なかった意味を含め過ぎた季節への挽歌であるのか。
LISAさんがまた電子キーボードに移り、チェンバロの音で賛美歌を2曲、そして「Blue forest」を演奏。黒百合姉妹は賛美歌やバッハを初めとするバロック時代の楽曲をしばしばライブで取上げているが、一部を除きレコーディングしていない。出来るなら是非賛美歌集のCDなども出して欲しいと思う。
第1部はその後初期の名曲「Under the moon」を演奏して終了。全9曲。

15分程の休憩の後、第2部前半の4曲はJURIさん、LISAさん、有馬さんの3人で演奏。冒頭はまた賛美歌らしい曲で、前半で演奏された中にもあったが「Ave Maria」を謳ったものだ。2曲目は今一番新しいアルバム『天の極み 海の深さ』より「Lilia」を、そしてJURI et LISA名義のCDに収められた「Mariamne the Martyr」。この曲でのJURIさんのヴォーカルが少し辛そうに聴こえ心配したが、その後また元に戻ったので一時的にバイオリズムが乱れたのかも知れない。
4曲目、ここ最近のライブでしばしば演奏されるがまだCDには入っていないソネット風の曲を演奏した後次回ライブについての告知を入れ、二人のゲスト―第1部にも登場したベースの佐藤さん、そして古楽器奏者の牧野さんを迎えて4曲。
古くからのファンにはお馴染みの「Under del linden」がトラッド調にアレンジし直され、極めて新鮮に響いた。続く「Sonnet」の後、「Pavan/tourdion」は以前と随分雰囲気が変ったが後半のインストでJURIさんがタンバリンを抱え、「月の女神像」が復活。有馬さんが叩いた太鼓の効果も聞き逃せなかった。
第2部ラストは「White Angel」。後半の8曲はやや少ないが、今の黒百合姉妹にはこのくらいが相応しいのかも知れない。

アンコールは3曲。ゲスト・ミュージシャンがそのまま参加して、「The streaming is the Wind」「Lost Wing」そして「最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶」。今でもこの「記憶」が一番好きな曲である私にとって、今宵のライブがこの曲をやるのに合った内容であったことが嬉しかった。

JURIさんの「音楽をやりたいと思い、出来る境遇に感謝」というMCに、私こそ「音楽を聴きたいと思い聴ける境遇に感謝」した夜だった。

黒百合姉妹ライブ〜20090214(2)
posted by 紫乃薇春 at 23:50 | Comment(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2008年08月09日

黒百合姉妹 Live at Mandala2

黒百合姉妹〜20080809
今年は黒百合姉妹が活動を始めて20年目に当たる節目の年。新たなCDを製作中と云いつつ仲々出ない処が如何にもこの人達らしいが、六月に行われたDJイヴェントに今宵のライブと、記念の年を何かと活動的に振舞っている様だ。
とはいえ現在はワンマンに気持が向いていないのか、対バンが二つ有のセットとなった。
新作ではなく以前リリースされた『星のひとみ』のリマスター盤発売という予告があったがそれも間に合わず、アニバーサリー・アイテムとして団扇とステッカーのセットが限定30部のみ当日ひっそりと売られていた。

対バン一組目は黒百合姉妹のデビュー当時からの盟友・シモーヌ深雪。相変らずお綺麗で、旧い恋人に恋をし直した気分を味わった。歌う曲目も個人的に懐かしい「アムステルダム」「イザベル」「カブキ」そして「トップシークレット(極秘)」など目頭の熱くなる想いだったが、驚いたのは井上陽水の「カナリア」。一部シモーヌらしく歌詞を替えているとはいえほぼ原詞に忠実で、井上陽水を(というより「カナリア」を、というのが正しいのかも知れないが)取上げた心の内を訊いてみたい気がしたが、「別段(井上陽水の)ファンという訳ではない」と云われて終いになりそうで止めた。

二組目はEkiben organumと名乗るユニット。通常はパーカッションと和笛を加えた四人編成とのことだが、この日はチェロとピアノの二人での演奏。冒頭のMCで「バッハのカヴァーを」と語っていた様に聞こえ、耳を傾けながら「これの何処がバッハなのだろう?」と暫く混沌に浸っていたが、やがて「これは紛れもない現代音楽に違いない」と思い至った。

そして黒百合姉妹の登場。

JURI(Vo)
LISA(Piano)
有馬純寿(Keyboard、SE)

オープニングはLISAと有馬の二人で即興調の音出しをして暫くそれが続くのかと思ったが、すぐにJURIの登場となり「最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶」を。それから「深」「Le chant de l'etoile」そして「Under the moon」とファーストアルバムから四曲続く。アニバーサリーを意識しての選曲かと思い年代を追って演奏してゆくのかと思っていたが、その後は(少なくとも現時点では)まだCDに収められていない二曲を演奏。そして『星のひとみ』から「Bring the light」、『天の極み 海の深さ』から「Maris stella」。その後Ekiben organumでチェロを弾いていた田井智樹をゲストに迎えて三曲。「水の姿」と呼ばれた曲はこれまでも「The wind」としてしばしばライブで演奏されてきた曲だが、今回は新たに歌詞が加わり(これまではハミングで歌われていた)作品としての構想が熟してきたのだろうか。そしてバッハの「オルゲルビュッヒライン」からのカヴァー曲「Der nebel」、最後に「星のひとみ」を演奏して袖へ。アンコールに応えて「Paur & Liese」と「K」を歌い終了。
「Kyrie」や「聖なるかな」の様な大掛かりな曲はなかったが(強いて云えば「星のひとみ」)、その分(ワンマンでないだけ演奏時間は短いが)よりゆったり時間の流れるライブだった様に感じた。

次回のライブは正式に決定してはいないそうだが、出来れば年末に、アニバーサリーである今年のうちにもう一度行いたいとのこと。その時は(スタジオ録音でなく)ライブCDのレコ発となるかも知れないとのこと。



(出先にて携帯投稿の為、後刻編集予定)
posted by 紫乃薇春 at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2008年06月21日

黒百合姉妹 DJイヴェント at fourth floor

黒百合姉妹〜20080621-1

2008年6月21日(土)
18:00〜22:00
吉祥寺 fourth floor

今日は夏至の日。

吉祥寺のクラブ「fourth floor」にて黒百合姉妹のイヴェントが開催された。いつものライブとは趣向を変えたDJイヴェント。といっても音源をミックスして延々と流すのではなくオーソドックスにCDやレコードをBGMの如くかける場面が殆どで、とても緩やかなパーティーの様な雰囲気だった。
ほぼ18時きっかりに開場し、並んでいた一通りの客が入ると黒百合姉妹のヴォーカル・JURIによる挨拶があり、後は終了時刻まで思い思いの時を過ごす。JURIにより各テーブルにひとつづつ蝋燭が灯された。場内の壁には幾つかの雑誌に掲載された貴重なインタビュー記事の写しが貼り出され、表には立たないがピアノのLISAも来場して元気な姿を見せていた。
場内にいた一人はZOAの森川誠一郎だろうか。森川の新しい?音源もDJにより流されていたのでそんな気がするが、最後に見かけたのがもう10年近くも昔なので確信が持てなかった。
DJはいつも黒百合姉妹ライブでスタッフを務める奥山君。途中から姿を見せた有馬純寿が一時DJを替る場面もあり音に変化がついて興味深かった。
黒百合姉妹のCDをほぼ初期から順に、合間には恐らく二度と聴けない未発表テイクや黒百合姉妹がカヴァーした曲のオリジナル等を挿み、使用中のCD或いはレコードのジャケットをスライドとして見せるサービス付き。「DJイヴェントの為演奏はありません」とのことだったが、終了間際にかけられた「キリエ」と「眠り」ではオフマイクでJURI及びLISAがコーラスを重ねる稀な出来事もあった。

この日、来る8月9日にMandala2で行われるライブの前売チケット発売日であり、CD発売記念ライブと前々からの告知だったが、内訳はかつてリリースされた『星のひとみ』のリマスター盤発売と発表された。新たなCDは現在もまだレコーディング中とのことで、早くても来年以降と黒百合姉妹らしいマイペース振りをアピールしていた。が、昨年は全く動きのなかっただけに8月のライブは楽しみだ。

黒百合姉妹〜20080621-2
posted by 紫乃薇春 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2006年12月04日

黒百合姉妹Live『星の夜 Vol.17』

『星の夜 vol.17 
 Les étoiles heureures dans le Sagittarire』

 2006年12月3日(日)
 吉祥寺Star Pine's Cafe

 JURI(Vo、Perc)
 LISA(Piano、Keyboard、Vo)
 有馬純寿(Keyboard、SE)
 小門学(Keyboard、Guitar)
 Piedi(Bass、Perc)

黒百合姉妹Live、今回は1993年に発売されたLive CD『LUX AETERNA〜久遠の光』そしてJURI et LISA名義で1994年にリリースされた『All Things Are Quite Silent』の再発売記念である。まだ数時間前のことだが、日付の上では既に昨夜になってしまった。
ここ数回同様ステージから見て2階に当るカウンター席を取り、舞台を見ると明らかに普段とは異なるセッティング。向かってステージ左に据置の生ピアノとLISAさんのものと思われるキーボードが背中合せに置かれ、右側には手前と奥に二台のキーボードが並行に並んでいる。奥の脇にはギターがあるのでそちらが小門さん、手前は有馬さんだろう。中央にはJURIさんのものと思しきスタンドマイクが据えられ、傍にはいつもの様に装飾された丸いテーブルが置かれているが、その後ろに立て掛けてあるベース及びパーカッションはピエディさんのものだろう。
開演予定時刻を約10分程過ぎて、鈴の音を模したSEが流れ始めた。おもむろに有馬さん、小門さん、ピエディさんが位置に着き、やや遅れてLISAさんが登場。最後に花束を抱えたJURIさんが姿を現わした。
最初の曲は「冬のはじまり」。この季節のLiveのオープニングとしてはオーソドックスだが、以前12月なのに「やり忘れた」と仰云ったことがあるので、今回は周到に用意していたに違いない。
2曲目「Always the tree」は現在最も新しいアルバム『天の極み 海の深さ』から。続く新曲らしき作品も頻繁に耳にする曲で、この辺りは最近のLiveの流れに近い気配を漂わせるが、その後は賛美歌風の楽曲が2曲続き、来るクリスマスへの導入を意図したのであろうか。「冬のはじまり」では少し音が籠り気味に聴こえたが、この辺りになるとバランスも良く、響きもクリアに感じられた。尤も出だしの音の微妙さは2階席で聴いていた為かも知れないが、JURIさんのヴォーカルがはっきりと聴こえるのが何より嬉しい。
ここで最初のMCが入る。今回Liveの趣旨(CD発売記念)を告げた後は『All Things Are Quite Silent』より6曲立て続けに演奏。まずは「Moon Calf's Waltz」。CDではJURIユニットによって収録され、黒百合姉妹を通じて知合った友人の一人のHNの由来ともなった曲である。更にJURIユニットの曲から「Klara's Song」が演奏される。『All Things Are Quite Silent』が発売された当初東京(Mandala2)と大阪(MUSE HALL)で行われたレコ発Liveで演奏された他はまず日の目を見ることのなかった曲だが、欧州の童話の世界に紛れ込んだ様な可愛い表情を持つこの曲が私は大好きで、冒頭この曲とわかった途端目頭が熱くなった。この辺り小門さんの弾くギターも抑え目ながら時折強いアクセントを与えて小気味良い。
その後はLISAユニットの収録曲から3曲。「Dindirin,Dindirin」ではJURIさんがタンバリンを左の小脇に抱えて叩く。このスタイルは94年11月のMandara2、95年1月のMUSE HALL、そして95年夏に渋谷クアトロとMUSE HALLで行われた「月のめざめ」という名演の誉れ高いLiveで「Pavan」をやった時と同じだ。このJURIさんの立ち姿が私には頗る印象的で、あたかも月を司る女神の如く写った。その後暫く、「Pavan」と身の程知らずに銘打ちその時のJURIさんをモティフに拙い葉書絵を描いた時期があるが、再びその頃の記憶が蘇った(その拙画をWEBの何処かにupしていたかと探してみたが見当らなかった。自意識の果てにいずれこちらの記事に掲載するかも知れない)。「Dindirin」は「月のめざめ」の時はCDと異なる展開を見せ、間奏でJURIさんの叩く太鼓が極めて印象深く響いたが、今回は(編成こそ違うものの)かなりCDに忠実な演奏を行っていた。「From Away」「Valley Blue」ではそれまで立ったままだったJURIさんが椅子に腰掛け、膝にタンバリンを置いてリズムを刻みながらLISAさんの珍しいリード・ヴォーカルにコーラスを被せる。殆ど耳にすることの出来ない曲が次々に演奏されて、これでも黒百合姉妹を聴いて10年以上を過ごす私には涙ぐましい時間が過ぎて行った。
1部の最後はJURIさんが再びスタンドマイクに戻り、JURIユニットの「Mariamne The Martyr」を。“JURI et LISA”と名乗りあえて普段の黒百合姉妹とは違う曲選び、音作りを試みた『All Things Are Quite Silent』だが、この曲はその中で最も黒百合姉妹らしい曲だ。以前JURIさんにその印象を伝えると、JURIさんも「黒百合姉妹として入れようか迷った」という程だったらしい。
前半終了を告げるJURIさんの挨拶の後、休憩に入った。

後半は「Marble Angel」に始まり、1stアルバムラストを飾る曲でありながら『LUX AETERNA』にも収録されておりレコ発を匂わせるが、その後はまた新曲が。そして「The Wind」が演奏されたが、初めの頃は組曲の様に「1」「2」と曲想の異なる2曲を続けて演奏していたのが前回からは「1」のみが演奏される様になった。形を変えたのにはどういう意図があるのか、もしかしたら単に(続けると)長いだけ、という理由かも知れないが、「2」のエアリーな曲想が私は好みだったのでこのまま埋もれてしまうなら残念な想いを禁じ得ない。
そういえば1部において、黒百合姉妹としては大掛かりな舞台設定が目を引いたが、これまでのLiveでは1部と2部でセットを変更することがしばしばだった。しかしこの日は2部に入っても殆ど変らず、気づいた違いと云えば1部で置かれていたJURIさんの為の椅子が2部では撤去されていたことくらいか。
後半はこのまま近年のLiveの主要なプログラムで通すのか、と思い始めていたが、4曲目に「Bring the light」、5曲目に「星のひとみ」といつもならLiveも終盤にやる曲を早々と演奏したことで、どうやら2部も普段とは流れが違うことを予測させた。
後半最初のJURIさんのMCがあり、「薔薇」と「Next Life」を。いずれも『LUX AETERNA』に収録されているが、他(スタジオ録音盤)には入っていないものだ。同様の曲は「秋の終りに冬の海を見に北へ車を走らせた」「古」と他にもあるが今回演奏しなかったのは、先の2曲よりその後のLiveでも取上げられることが多いからだろうか。実際JURIさんはこの夜の2曲を「二度とやることのない(かも知れない)曲」と語っていた。だが「Next Life」はともかく、「薔薇」は二度と演奏しないということがあるだろうか。確かに、最近の主だったレパートリーとは大分雰囲気を異にするが、かつては重要なレパートリーのひとつだった曲だ。或いは、黒百合姉妹の今後を読む上で重大な鍵となるMCだったのだろうか。
この夜三度目のMCが入る。「今夜はMCの多いLive」とJURIさんは仰云ったが、実際にここから先は2部終了まで1曲毎に語りの入る珍しい一夜となった。
今回のLiveのサブタイトルである「Les étoiles heureures dans le Sagittarire」とは「射手座にいる金星」の意味と語り、そしてこの日は別会場にて今年6月に亡くなった北村昌士の追悼Liveが行われていることに触れ、かつて北村氏の主宰していたレーベルSSEにてデビューから初期の一連のCDをリリースした黒百合姉妹にとっても彼とそのもたらした人脈、環境がかけがえのないものであることを語り、そちらのイヴェントには出られないがこのLiveで、と北村昌士追悼の儀と云える演奏を行った。選んだ4曲の最初は「The stream is the wind」。LISAさんの書いたアップテンポの曲だが、「北村さんの好きだった曲」だそうだ。続く「Pavan/Tourdion」は先にも触れた様に94年頃から当時しばしば演奏されたトラッドナンバーだが、実はこの曲を黒百合姉妹に録音して欲しい、という北村氏の希望がきっかけとなり、JURI et LISAの『All Things Are Quite Silent』が生まれたという秘話がこの夜、明かされた。結局同曲は『All Things Are Quite Silent』には収録されず、北村氏の生前に録音が行われることもなかったが、今からでも遅くない。出来れば黒百合姉妹名義でスタジオ録音を実現し、CD化して欲しい。欲を云えばかつて頻繁に演奏された重厚なイタリア古謡「Se tu della mia morte」もそう願うが、それはまた別の話だ。「Pavan」は黒百合姉妹のオリジナルではないが、個人的にこのユニットの最も好きなレパートリーのひとつでもあるのだ。
そして北村昌士が詞を書いた「Lost wing」を演奏。黒百合姉妹と出会って以来、その活動をずっと追い続け、まだ知りもしなかった時期の逸話まで幾らかは得る処となったが、黒百合の周辺については私は殆ど知らない。「Lost wing」が北村氏の詞ということも知らなかったが、98年11月におよそ2年4箇月のブランクを経て彼女達がlive活動を再開した時、「Pavan」また「Lost wing」が選曲されていたのは、対バンであったディフェランスの北村氏へのオマージュもしくは北村氏の希望であったのかも知れない。
2部の終りはSSEから初めてリリースした『最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶』からその表題曲を。この曲もまた私の最も好きな黒百合姉妹の楽曲のひとつだ。それ以前にオムニバスへの参加があるとは云え、黒百合姉妹の歴史はこの曲から始まったという深い想いが慟哭を呼び起こした。
アンコールの拍手が止まず、再びメンバーがステージへ。最初は間もなくクリスマス、我が国では冬至の時期だけれども、その時が来れば全てが上手くゆく、という意味を謳う「One snow」を。追悼のしめやかさが漂った2部後半から一転、華やかな明るさに溢れたこの曲のもたらす気分は、これから先も彼女達は生き続け、音楽を創り続けることへの強い意志を伝える様だった。そして最後は「Kyrie」。黒百合姉妹を取巻く(黒百合姉妹と関わりがある人もない人も含め)全ての人達への感謝を捧げるとJURIさん。この人はいつからこんなに謙虚になったのだろう。生来の資質が年月を経て屈託なく顕れただけのことかも知れない。けれども、北村追悼と云いここ最近のLiveでの発言と云い、些細で人によっては当然の様なことの多くにこの夜私は改めて深い感動を覚えた。

初めに記した通り、この日のLiveは『LUX AETERNA』及び『All Things Are Quite Silent』のCD発売記念Liveだったけれども、『All Things Are Quite Silent』は何やら事情があって当夜に間に合わなかったらしい。その為当日会場では『LUX AETERNA』のみ先行発売され、『All Things Are Quite Silent』は予約用紙をフライヤーやアンケートと共に配布する形となった。
『All Things Are Quite Silent』がすぐに聴けないのは残念だが、届くまでは旧盤を愛でることにしよう。一方の『LUX AETERNA』であるが、私にとって実は最も想い出深い黒百合姉妹のCDだ。私が始めて黒百合姉妹を聴いたのは1994年6月末日の映画『猫耳』プレミアムゲストとしてのLiveだったが、その日は持合せが殆どなく、Liveを聴くだけで帰った。その後その晩の音が忘れられずあちこちでCDを探し回ったが何しろ世間ではインディーズ等と呼ばれるユニットである。CDを置く店も余りに限られていて、さんざん歩いた挙句漸く手にした最初のCDがこれだったのだ。恐らく当時最新作ということもあり、他のCDよりは在庫が多かったのだろう。
しかしこのCD、初めて聴いた時から眉をしかめる程音質が悪い。Live録音故スタジオ盤に比べて不安定なのは致し方ないことと云えよう。しかし、如何にも客席から、DATか何かで録った風な音はどうにかならないかとその後音の良いスタジオ盤を買い揃えるにつれ不満を抱く様になった。そして次第に聴くことも少なくなってしまった因果なCDなのだが、今回のリマスタリングで果たしてどれ程音質が向上したのか非常に興味ある処ではあった。元の音源が良好でなければ勿論それ以上にはならないが、今し方買ったばかりの新盤を聴いてみると、旧盤に比べれば若干音の分離は良くなった様に感じる。だが、音が全体に遠いという印象を受ける。再発売は嬉しいし、想い入れも含めこのCDでしか聴けない数曲はとても貴重だが、黒百合姉妹を知らず、興味を抱いて聴いてみたいと仰云る方に真先に薦めるには甚だ躊躇を拭えないのは止むを得ない処か。
黒百合姉妹の今後の活動だが、MCで「来年は新譜を作る」とのこと、正真正銘の新作が出るのは実に楽しみだ。しかしその分Liveは遠退いて、早くても来年暮頃になるとのこと。それまでが待ち遠しいが、その分充実した再会が出来れば喜ばしいことだ。そう思おう。

今回のレビュー(と云えるのかどうか…)は、吉祥寺からの帰りがけに携帯で取急ぎしたためたものを余り吟味もせずに追記して捏上げたものだ。従って分量だけは変に豊富だが、ちぐはぐな処が多いに違いない。さぞ読み難いことであろう。ここまで付合って下さった方には申し訳ないと思いつつ、御容赦願いたい。
題のわからない曲が多く穴だらけだけれども、とりあえずセットリストを:

I)
 1. SE〜冬のはじまり
 2. Always the tree
 3. (曲目不明)
 4. (曲目不明)
 5. (曲目不明)
 6. Moon Calf's Waltz
 7. Klara's Song
 8. Dindirin, Dindirin
 9. From Away
 10.Valley Blue
 11.Mariamne The Martyr

II)
 1. Marble Angel
 2. (曲目不明)
 3. The wind(1)
 4. Bring The Light
 5. 星のひとみ
 6. 薔薇
 7. Next Life
 8. The Stream Is The Wind
 9. Pavan/tourdion
 10.Lost wing
 11.最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶

アンコール)
 1. One Snow
 2. Kyrie

 黒百合姉妹公式HP/
 http://www5.airnet.ne.jp/lisnoir/
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2006年10月07日

【告知】黒百合姉妹 星の夜 vol.17【Live】

まだふた月近く先のことではあるが、本日(10/7)が前売チケット発売日なので告知。

 黒百合姉妹Live
 「星の夜 vol.17
  〜Les étoiles heureures dans le Sagittarire〜」

 2006年12月3日(日)
 吉祥寺 Star Pine's Cafe
 開場 18:30 / 開演 19:30

 前売/当日共 3000円
 (全席自由・整理番号順による入場)
 会場及びチケットぴあにて前売取扱
料金等詳細は会場(Star Pine's Cafe)にお問合せを。

Star Pine's Cafe>>0422-23-2251
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
http://www.mandala.gr.jp/spc.html
(受付 16:00〜)

チケットぴあ>>
オペレーター予約(音声認識) 0570-02-9999
Pコード予約 0570-02-9966(Pコード:242-072)
(受付 10:00〜23:30)

黒百合姉妹公式HP>>
http://www5.airnet.ne.jp/lisnoir/

*

本日は横浜・エアジンにて「インプロ祭」前夜祭がある。
さがゆきも出演するそうなので聴きに行きたいと思う。但し、はっきりした出演プログラムがわからず、また時間も通常(19時半〜20時前後開演)より随分早い夕方からとなる様なので、黒百合姉妹のチケットが無事に購入出来たら踵を返して向かう破目になりそうだ。
posted by 紫乃薇春 at 12:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2006年06月14日

〜La pleine lune dans le solstice d'ete〜
黒百合姉妹Live「星の夜Vol.16」

2006年6月11日(日)
於:吉祥寺Star Pine's Cafe

昨年暮の「星の夜 Vol.15」以来ほぼ半年振りの黒百合姉妹Live。前回に続き、過去にSSEレーベルからリリースした作品の再発売記念Liveとなった。今回は3rd『月の蝕』の先行発売が行われ、Liveの内容もそれに沿ったものとなった。とはいえ、1st及び2ndと2枚のリマスター盤を同時に出した前回と比べると、その他のアルバムからの曲もふんだんに盛られた選曲。昨年暮同様ワンマンでの2部構成。演奏時間もさして違わないのでそれも道理である。

 JURI(Vocal,etc)
 LISA(Piano,Keyboard)
 有馬純寿(Keyboard)

この日のステージセットは中央にJURIさんのスタンドマイクが置かれ、その脇に丸いサイドテーブル。向かって左にLISAさんのピアノ及びエレクトリックキーボード、右側に有馬さんのキーボードセットが配置され、シンプルで、どうやらゲストの参加もない様だ。
前半は2曲目に「Nu alrest」、8曲目に「Under del Linden」、10曲目に「White of snow」が置かれていたが、全体としては余り「レコ発」を意識させない雰囲気で進められた。

 1)(Ave maria)
 2)Nu alrest
 3)La pluie et noir
 4)秋の終りに冬の海を見に北へ車を走らせた
 5)Lilia
 6)(新曲)
 7)深
 8)Under del linden
 9)Always the tree
 10)White of snow

開演予定時刻の19時を約5分程過ぎて照明の落とされた中、有馬さんが登場。鈴の音と通奏音を基調としたSEが厳かに流れる中LISAさん、JURIさんが相次いで部隊に姿を現した。この日のJURIさんは白いドレスの出で立ちで季節柄カサブランカ、或いは鉄砲百合の花を連想させる。LISAさんは落着いた茶色い服で、JURIさんがフロントマンとして図らずも光を受けて目立つこの人はいつもオープニングは「Ave maria 〜」と謳われる賛美歌調の短曲で、最近のLiveでは頻繁に演奏されるがアルバムに収録されていない為曲名がわからない。だが、或る友人に指摘され気づいたことだが歌詞を耳を澄ませて聴いてみるとどうやら黒百合姉妹の公式サイト「Sibylla」の表紙に記されたテキストが歌われている様だ。
次の「Nu alest」でレコ発の香りを一瞬漂わせるがその後暫く遠ざかる曲目が並べられる。「Nu alrest」から「La pluie et noir」「秋の終りに冬の海を見に北へ車を走らせた」と続く選曲は、私が初めてこのユニットと出逢った映画『猫耳』上映時のゲストでのLiveで演奏された曲目でもあり、それ以来深い想い入れのある作品達となった。聴く度にその時の強い衝撃を余儀なくされた時間と空気が蘇るのだ。尤もその初めてのLiveはPAの不調によりハウリング等度重なるノイズに見舞われ、おまけに前半の間JURIさんのステージモニターから音が出ないトラブルもあり、黒百合姉妹にとって具合の悪い方から1、2を争う酷いLiveだったという話を聞いたけれども。今夜は(少なくとも客席から聴く限り)音は頗る良い様だ。いや、JURIさんのヴォーカルがはっきりと伝わってくるのに比べ、ピアノの音がやや籠って遠いか。
最新アルバム『天の極み 海の深さ』より「Lilia」を、それからまだアルバムには収められていない曲を続けて演奏。だが、この辺りからLISAさんのエレクトリックキーボードでチェンバロの音を弾く時、指を離すと「チャッ!」と弾く様なノイズが入るのがやや気になった。配線の不具合だろうか? その後には「深」を。以前何処かに書いたが、或る時期この曲は黒百合姉妹のLiveでは必ずといって良い程演奏される曲だった。また黒百合姉妹の所謂「空気」を端的に伝えてくれる曲としてまず初めに脳裏に浮かぶ曲でもある。その後演奏される機会が減り残念に思っていたが、前回の1stのレコ発では取上げられ、また今宵も聴くことが叶って幸せである。その後『月の蝕』より人気の高い「Under del linden」を演奏。そう度々ではないが、かつてはこの曲も何度かLiveで披露されていたのにこの数年全くやらなくなってしまったのは、ひとつにはその後発表された「Bling the light」と曲想が近似している為だろうか。繰返し聴いていると少し長い気がしないでもないが、個人的にはむしろ「Linden」の方をより聴きたいと願う。
ここでこの日最初のMCが入る。この日のLiveの主旨―『月の蝕』のレコ発であること―と、副題“La pleine lune dans le solstice d'ete”について。このフランス語だかラテン語だか定かでない文言は、「真夏の満月」という意味だそうである。この夜が満月だったかどうか、暦に疎くて恐縮だが、本来ならば月が見える筈だった―が、生憎の雨模様。そう、2日前に入梅したばかりだ。
MCの後は最新アルバムより「Always the tree」、そして『月の蝕』に戻り「White of snow」を演奏して前半を終了。およそ35分〜40分程の演奏。

約10分程の休憩の挟んで後半が始まった。再び有馬さんが最初に登場、今度は鐘の音を踏まえた神秘的なSEが起用され、姉妹が登場。後半のJURIさんは黒い衣装に茶色いヴェールを重ねている(但し照明の加減により別の色に見えることもあったので、本当の色味は定かでない)。昔聴いた頃には前半で黒い衣装を、第2部では白い衣装ということが多かった様に思うので、些細なことだが新鮮な印象を受けた。

 1)Num komm,der heiden heiland
 2)Herr gott,nun schleuss den himmel auf
 3)月の蝕
 4)The wind(1)
 5)空を紡ぐ
 6)Four of pentacles
 7)Blue forest
 8)Ma clamour
 9)Bling the light
 10)Under the moon
 11)眠り

後半は冒頭から『月の蝕』の曲が続けて演奏される。「Num komm,der heiden heiland」、「Herr gott,nun schleuss den himmel auf」とオルガンサウンドが神々しいJ.S.Bachのカバー曲が連なった後、おもむろにJURIさんがスタンドマイクの前を辞し、ピアノの傍らに移動してLISAさんと椅子を並べて腰掛ける。そう、表題作ともなった「月の蝕」だ。LISAさんが主に低音で曲の骨格を、JURIさんが高音で旋律を奏でる連弾演奏の曲。この曲にはヴォーカルは登場しないが、その指から紡ぎ出されるピアノがJURIさんの生歌そのものだ。以前のLiveで用いた2弦ベースを有馬さんがまた弾いてくれることを期待したが、それはなかった。静かに、内側で激しく燃焼する。
JURIさんがヴォーカルマイクに戻ると、まだ何処にも収録されていない「The wind」を。この「The wind」という題名が正式のものか仮のタイトルかはわからないが、以前は「1&2」として、やや楽想の異なる曲が組曲風に続けて演奏されていた。だがこの日は「1」のみの演奏。「1」の緩やかな「風」を受けた「2」のするりと吹き抜ける様な曲想が好きなのでやや残念な想いだが、しかしその後に演奏された「空を紡ぐ」への繋がりはとてもしなやかに感じられた。そして『月の蝕』より「Four of pentacles」。滅多に演奏されないが、私が生で聴くのはこれが2度目、いや3度目か。以前CDより黒百合姉妹のセレクションをこさえてみた時に、この曲と「Linden」を並べてみるととても上手い具合に音が受け渡されたのを覚えている。確かに地味な曲だが、もっと頻繁に演奏するだけの含みはある曲だと思う。
ここで2部最初のMCが入る。この日会場で配ったアンケートについて語られた。黒百合姉妹のアンケートは幾つかの項目が毎回ほぼ同じ問いになっており実は書く度に苦労し苦笑してしまうのだが、「今回は少し変った質問をしてみました」とも。「前世。満月の夜に想うこと。神秘体験」など。前世など書けるものか―と悪びれつつ適当なことを書いてお茶を濁した様な気がする。月には常に絶大なインスピレーション、生きる力を与えてもらっていることを実感しているのでそのことを手短に記した。神秘体験はあるのかないのか曖昧な半生だけれども、振返ればここにこうして居合せて黒百合姉妹のLiveを聴いていられることこそが正に「神秘」だと強く感じる。
2部の後半は『星のひとみ』から「Blue forest」。なるほど、月についてひとしきり想い巡らせた後でこの曲を聴くと、月の蒼き光に映し出された白夜の森を彷徨い歩く自分JURIさんの姿が瞼に浮かぶ。CDに収録されるより大分以前からLiveで奏で継がれてきた曲だけれど、この辺りでかつてのシンプルな版の演奏を聴きたいと願うのは無粋だろうか。
『月の蝕』より「Ma clamour」が演奏される。この曲も『猫耳』で最初に触れた曲のひとつ。黒百合姉妹のファンクラブというものがかつて存在した頃に唯一作られた会報の中でLISAさんがJURIさんに宛てて「長いこと『お蔵入り』になっていたこの曲を素敵に歌ってくれて有難う」と告げた一文があったが、暗澹たる面持ちながら美しい作品で私は好きだ。そして最近の定番のひとつ「Bling the light」を演奏した後再度MCが入り、次回Liveについて「まだ決まっていないけれども、秋頃に出来れば」とのこと。余り頻繁になくても内容が濃ければそれで云うことはないが、願わくば週末に。
「太陽の下では輪郭があやふやになってしまうけれど、月の光の下で本当の自分と出逢える、そんな想いを込めた歌」と語って歌った第2部最後の曲は「Under the moon」。1stアルバム収録曲だが実はそれ以前にSSEのオムニバスにも収められており、彼等の最も古いレパートリーのひとつだろう。そして退場。

静かだが鳴り止まぬアンコールの拍手の中、この日一番意外な出来事が起こった。それまでシンプルだったセットだが、スタッフがタムを抱えて現れ、ヴォーカルマイクの向かって右脇に設置。更に左脇にはウィンドチャイムまで置かれた。これまで、始めに大掛かりなセットが置かれ、後半は片付けられるということはままあったが、その逆は恐らく初めてに違いない。少なくとも私は今まで見たことがない。

 1)魔物
 2)Lios * Here * Pleiades
 3)K

メンバーが登場し、JURIさんが先のMCを反芻する様に「次回Liveは秋を目指して頑張ることになりました」と照れ笑いの様な口調で語った。そして「『月の蝕』のレコ発ということで、これまで殆どやらなかった曲にチャレンジしてみました」と、まずは「魔物」を。私が聴くのは2002年6月?の“aestas recens”以来2度目だが、1993年当時SSEから『月の蝕』がリリースされた頃と合せても片手で足りるくらいしかやっていないのではないだろうか。
続く「Lios * Here * Pleiades」(*は正しくはヘキサグラム(六芒星)で表記されている)は、「この曲は初めて(Liveで)やりましたが、恐らくこれから先も2度とやることはないでしょう」とJURIさんが語り、正に「一期一会」を実感。だが魔が差してまたいつか…と願うのは、ファンの横暴なのかも知れない。そして最後は2ndよりお馴染みの「K」を。そして終幕。
後半はアンコールを含めてほぼ1時間。

この日、『月の蝕』の中の代表曲とも呼べる「聖なるかな」も、最近の定番「Kyrie」もやらなかった。「Kyrie」はともかく、「聖なるかな」は何故?と思いながら帰路に着いたが、帰宅してこの日買ったCDを開封してみると、かつてのCDには収録されていた同曲(そしてその後に収録された「左の耳の為の喜びの歌」)が入っていない。そうか、そういうことだったのか。少しショックを受けながらも納得した。そもそもその2曲は以前のリリース当初から「初回プレスのみのボーナストラック」とされていた曲である。だが実際にはその後いずれの場所で目撃した同CDにも全て収録されており、初回プレスがそれだけ多かったのか、それとも実は再プレスにも収録されていたのか定かでなかった。けれども今回はリマスターではあるが、明らかに初回プレスではない。従ってメンバーが公約を守った形になったか、或いはマスターに収められていなかったか。とにかく、過去には代表作と云われていても再発されたCDに収録されていないのならばレコ発であれ演奏する謂れもない。むしろ、演奏しないことでリマスター盤の位置付けを明確にしたとも云えるだろう。リマスタリングされた「聖なるかな」が聴けないことが残念だが、リマスターシリーズの特典として予定されているCDに出来ることならば収めて欲しい。
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2005年12月24日

『星の夜 vol.15 le solstice d'hiver』
   〜classiques 1&2 発売記念〜


黒百合姉妹Live〜20051222(1)2005年12月22日(木)
於/吉祥寺 Star Pine's Cafe
開場 18:30 / 開演 19:30

JURI(Vocal,Percussion)
LISA(Piano,Keyboard,Vocal)
有馬純寿(Keyboard,SE)
ピエディ(Bass)

待ちに待った黒百合姉妹のCD―1st&2nd発売記念Liveの模様である。
幾度もこちらの記事に書いていた通り直前まで私自身が来られるかどうか疑問だったが、どうにかつつがなく当日を迎えることが出来た。
Star Pine's Cafeはステージを臨む客席が2階建てになっているが、昨年暮と同様、今回も階上の席で聴くことにした。階下の方が音が良いのだが、どうも最近精神的なスタミナが不足している様な気がする。黒百合姉妹のLiveは他の何より楽しみに違いないが、同時に他のどのLiveよりも緊張する。その緊張は昔から変らないどころか、日に日に高まっている様に感じる。近頃はいささかその重圧に気圧され気味で、少しでも寛げる2階をと選んでしまうのだった。

開演予定時刻を5分程過ぎた頃、場内にはJ.S.Bachの「パッサカリアとフーガ」の重厚な響きがSEとして流れ始め、照明が落とされた。どんなLiveになるのだろう。初期2枚のオリジナル・アルバム再発のLiveなので、いつもより幾らかそうした昔の曲が多いだろうか、と期待してはいたが、見事に…。
オープニングはどの曲だろうと耳を済ませていたが、「パッサカリアとフーガ」に紛れる様に鐘の音が聴こえ始めた瞬間にそれは察しがついた。「最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶」。同名のファースト・アルバムの1曲目のその曲が、アルバムの世界を再現する様にLiveの冒頭を飾った。実際には2分そこそこの短い曲なので瞬く間に終ってしまったが、久しく聴きたいと願いながらここ数年のLiveからは漏れてしまっていたのでのっけから喜びに打ちひしがれた気分だった。「この曲はピアノが相応しい」等と嘯いていたのも早やどうでも良くなってしまった。その通り、CDではチェンバロの音で弾かれているのだから。
2曲目は「深」。或る時期までは殆ど必ず演奏されていたこの曲も、最近は外されることが多くなった。だがこの宵の宴には全く違和感なく、「記憶」を引継ぐ自然の音の流れの中にあった。
そし3曲目。この日、入場してステージを見渡した時、何より目についたのが中央のJURIさんのマイクの傍らに並んだタム、スネア、そしてシンバルといういわば「大物」の打楽器達。それは何を意味するか。遥か以前の黒百合姉妹のLiveに馴染みのある方々ならばすぐに閃くに違いない。黒百合姉妹の客層も経年により移り変っているだろう。恐らくその意味は一部の方にのみ通じたのだろうが、「花」。幾本か前のLiveで久し振りに演奏されはしたものの、その時はパーカッションなしで淋しい想いをしたが実際、この形で演奏されたのは10年振りの筈(1995年8月の『月のめざめ』以来)だ。この曲に限らない。小物―例えばハンドベルやウィンドチャイム等はその後も登場するが、大きな打楽器は殆ど持ち込まれることが無くなってしまった黒百合姉妹のLiveだ。一度、やはり数年前に「azul」が一度だけ、タムとハンドベルとでかつてのスタイルを以て演奏されたことがあったが、それすらも既に懐かしさより「新鮮さ」に映ってしまう程珍しいことだった。リズムが微妙だったのはこの際問わないことにしよう。
4曲目の「under the moon」もまた、『最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶』からの曲である。幸いこの曲は最近のLiveでもその夜のプログラムの流れの中で幾度か演奏される機会に恵まれている様に思うけれど、「月」をテーマとした内容がそうした幸運を呼び寄せているのだろうか。
ここで最新アルバム『天の極み 海の深さ』より「always the tree」を。出だしから4曲続けて1stからの作品ばかり演奏して、すっかり10年前、或いはそれ以前の日々にタイムスリップしたかの様な錯覚を起こしそうな雰囲気であったが、しっかりと黒百合姉妹の「現(いま)在」を伝えるかの如く清らかに、優しげに。あくまでも「懐メロ」ではなく「現役」として存在することを教える様に響いた。
最初のMCがここで入った。第一部の中盤でMCを入れるのは、黒百合姉妹としては早い方かも知れない。この日のLiveの副題である『le solstice d'hiver』についてのお話を。この言葉はフランス語で「冬至」(冬至点)という意味を持つこと、クリスマスは元々は冬至の日のお祝いが転化?したものであること、この日、冬至の日にLiveが出来たのでこのタイトルをつけたこと(私はまた、この日が冬至なのでLiveを入れたのかと思っていたが、逆だった様だ。笑)、この日の未明もしくは早朝に冬至のピークを迎えて、今は太陽が復活してきたことへのお祝いの意味を込めたLiveであること等を語り、その話の流れのままに最新アルバムから「one snow」を演奏。この曲は「冬至の日のお祝いの為に創った曲」だとこの日、初めて知った。だからという訳ではない。演奏が優しさと温もりと歌心に満ちていたから、「花」で既に緩んでいた涙腺が完全に綻んでしまった。嗚咽こそしなかったもの、じんわりと涙ぐんでいたのを隣の友人に気づかれただろうか。
そして「azul」をハンドベルとタムで演奏。この曲は2ndアルバム『夜が星をしたがえて』からだけれども、実はこれはフライングではなかったかと思わず苦笑してしまった。何となく、(近作の2曲はともかく)ここまで1stの曲で押してきたのだから、2ndの楽曲は堪えて2部まで待って欲しい様な気分になっていた。が、演奏は美しく豪放で申し分なかった。1分台の短い曲である。
続く「le shant de l'etoile」、通称「シャンセ」でまた1stに戻る。かつては度々演奏された1stの曲の中でこの作品は本当にもう何年も何年も出番がなかった。確かに、めくるめく様なピアノのリフと低声部を主体としたJURIさんのボーカルを中心に他とはいささか異なる「蠢き」を伝える曲なので、近作・新作中心のここ数年のLiveには合わない曲調であることは否めない。だがそれすら淀みなく紡がれる程この日のLiveは独自の意味に於いて徹底していたと云えるだろう。
再びMCが入る。「CD発売記念Live」であることについて。第1部に2度もMCが入ることは滅多にない。大抵は途中一度入れるだけだったり、少ない時は休憩前の挨拶だけのこともある。つまりそれだけ今宵は告げる内容が(具体的に)多かったから、とは云えるだろう。今回再発された1st及び2ndはそれぞれリマスターされているそうだが、JURIさんはこれまでリマスターされたと記された他の人のCDを聴いてもピンと来なかったらしい。だが今回自分達の初期の作品のリマスターを行い、前日になって仕上がったものを聴いてみたら、全然違う音になっていたので、皆も是非聴いてみて欲しいと語っていた。
そしてまた『記憶』より、「地中海の夢」。この曲はむしろ、私が聴き始めた94年以来当時は全く演奏されず、最近になって初めて一度演奏される処を耳にしたが、タムを叩きながらは勿論、この夜が初めてである(私の知らないデビュー当時から93年頃までには、もしかしたらそうしたスタイルで演奏されていたのかも知れない。その辺りは全く存じ上げない)。続く「marble angel」で第1部を終了。この曲もまた、『記憶』からである。アルバムの最後の曲を以て第1部の締め括りとする流れが本当に、「レコ発」をかくも、という面目躍如だが、さすがにお終いの鐘の音はなかった。

10分ないし15分程の休憩を挟み、2部へ。


休憩の間に舞台中央を彩った大物の打楽器は片付けられ、後半は一見普段のステージセットの様に見えた。
最初の曲は「white of snow」。この曲の歌の入ったバージョンは3rdアルバム(月の蝕)に収められている為、後半冒頭は「レコ発」から少し離れた風にも見えたが、実はこの曲の器楽バージョンが2ndの最初に収録されているのだ。だから、これはあくまでも「レコ発」の第2部の始まりをオマージュしたものと云って良いかと思う。勿論季節を慮って冬の曲を、という意図もあっただろうけれど。そして同様に「冬のはじまり」やはり、1コーラスを繰返して歌うのがLiveでの慣わしとなった感がある。その方がより曲を堪能出来るけれど、1分そこそこの短い演奏を儚く輝かすのも良いかも知れない、と近頃は思う様になった。
3曲目の「laurie」はこれまでも演奏される機会が必ずしも多くなかった。時には演奏されるが、感じる以上に難しい曲なのかも知れず、或いは演奏を控える何か気持の上での動機があるのかも知れない。単なる想像、もしくは憶測に過ぎないものだけれども。この日のJURIさんはヴォーカルの調子は良さそうだったのに、この曲の時は発声が鈍く感じられた。JURIさんの「今」に曲が合っていないのだろうか。それともやはり想いの由縁があるのだろうか。
続く「the stream is the wind」は「冬のはじまり」と共に最近の黒百合姉妹Liveの中でも最も頻繁に演奏されている曲かも知れない。通称は「魚」。タイトルからすれば「風」となりそうだが、或いは風の流れ水の流れの中を泳ぐ魚のイメージだろうか。LISAさんのテンポの良いピアノとリードに近いコーラスが活きた名曲だ。
そして『天使禁猟区』のサントラにも使われた「Paul & Liese」。ここまでずっと(「white of snow」は半分、というニュアンスだが)2ndアルバムからの曲が続く。「azul」を前半に持ってきたのは、舞台設定の都合で後半はパーカッションを引込めてしまう為だったかも知れない。いや、恐らくそうに違いない。曲の繋がりを意識して、という要素がそれに加わっていることも勿論あるだろう。
その後はCDに未収録の曲。最近のLiveで幾度か演奏されているがまだ題もわからない。新曲、と呼んで良いだろう。前半の「always the tree」そして「one snow」が「現在」なら、この曲は「未来」と呼べるものだろうか。この先に製作されるCDに収録されてゆくならば。もう1曲、タイトルのわからない曲が続いたが、LISAさんの弾くオルガン・サウンドに乗ってそれは賛美歌調に響いた。新曲なのかカバーなのか疎い私には定かではないが、こういう曲も出来ればスタジオ録音を行って欲しい。
その次に『星のひとみ』から「bring the light」が演奏された時には「ここからはいつもの(お終いの)流れか」と思ったものだが、果たしてそうはならなかった。いつもなら「bring the light」の後は「星のひとみ」そして「Kyrie」と続いてエンディングとなるのだけれど、今宵はここでMCが入れるJURIさん。開場時に配布したアンケート用紙についてのこと:
「いつもアンケートにはひとつ、違う質問を載せているのだけれど、今回は『至福の時』は、という質問を」。JURIさん曰く「私の『至福の時』は、まわりに自然だけがあって、人が居ない状態。出来れば其処で眠ってしまえる状態。そして、目が覚めたら空が在る状態」。同じ質問をLISAさんにしてみたら「『美味しいワインと美味しいチーズがあれば幸せ』だそう。私もそうです」と云って笑ってらした。私の「至福の時」は…内緒にしておこう。ただひとつ、この晩の2時間は紛れもなく「至福のひと時」に違いなかった。
そして第二部ラストは『夜が星をしたがえて』より「K」。いつもと違い、第1部に対して2部が短いという印象を受けたが、曲目を数えてみたら実際、2部が1曲少なかった。また小品の多い2ndアルバムからの曲主体だったこともあるだろう。
すぐにアンコールが起こり、JURIさんとLISAさんの二人だけがまず戻ってきて「黒猫ティヴの子守歌」を。演奏回数の極めて少ない曲のひとつだが、私は幸運にもこれが3度目。『猫耳』以来執拗に毎回馳せ参じた御褒美だと偶には自分を労っても良いかと思う(笑)
軽いMCの後、キーボード&SEの有馬純寿氏、ベースのピエディ氏を呼び戻して「little star」。この曲も演奏されることの少ない曲。そんな曲が次々と飛び出す辺りはやはり「レコ発」ならではだろう。終演後メンバーの方とお話をした時に「こんなLiveはさすがにもうないよ」とまで云われた。ない、と云い切られてしまうと一抹の寂しさもあるので、ここまで出揃うことは、ということにしておいて頂いた。この曲での有馬さんのキーボードはさり気なくギターの音を醸し出しており、スタジオ録音でのアレンジを仄かにオマージュする役割を果たしていた。
更にMCで恒例の(やらないことも実際はかなりあるが)「ベストドレッサー賞」を決めた後、最後の曲は「Kyrie」。『天の極み 海の深さ』のエンディングの大曲がこの日は本編ではなくアンコールに用意されていた。その為か「聖なるかな」を聴けなかったのが残念(年末なので薄らとだけ期待はしていた)だが、次回は恐らく3rdアルバム『月の蝕』発売のLiveとなりそうなので(確証なし)、そちらには期待しても良いかと思う。
「Kyrie」の終り、JURIさんの声の具合が詰まって聴こえたがどうしたのだろう、と思った。遠目だったので定かではないが、何処か涙ぐんでいる様に見えた。一見クールだが実は人一倍細やかで感じ易い心を持った方である。この日の演奏が素晴らしかったことに、今生きてこうして歌えることに、その他諸々の出会いに感極まっていたのだろうか。演奏の後のMCが実の処涙声が混じっている風でよく聴き取れなかったのは残念でもあり、しかしそれ以上はもはや望んではいけない様にも感じられた。

…正しく見事な「classiques 1&2 発売記念」Liveだったと云えよう。
ベースは今年8月の吉祥寺Mandala2でのLive時と同様、ピエディ氏が担当していたが、前回よりも黒百合姉妹の音世界に溶け込む様に馴染んでいたと思う。今後も参加して貰えたら、と期待してしまうが、果てさて。
次回のLiveは春頃に…とのことだが、まだ未定の様子。出来たら、今度は土曜日か日曜日にやって欲しいと願いつつ。
写真は、2部の演出で用いられた紫色のスイートピーである。この日の第2部でJURIさんは黒い衣装に紫色のヴェールを纏って現れたが、その衣装に合わせたとして登場の際に持って出てきてLISAさんの弾くピアノの上に飾っておいたものだ。終演後にLISAさんとお喋りをした時に丁度目に留まる処にこの花束が置かれていたので、自然と話がそちらに向いた。「良い色ですね〜持って帰りたいくらい」と口走ると「良いよ」と云って下さったので、遠慮もなく頂いてきてしまった。おかげ様で、今でも我家の玄関先を彩ってくれている。


黒百合姉妹公式HP
http://www5.airnet.ne.jp/lisnoir/

posted by 紫乃薇春 at 08:27 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2005年12月01日

黒百合姉妹Live情報〜
2005/12/22 at Star Pine's Cafe

以前こちらの記事を書いた時に文中にて記したけれども、単独の記事としてはまだ掲載していなかったLive情報である。12月に入ったので、改めて掲げておく。

      『星の夜 vol.15 le solstice d'hiver』
         〜classiques 1&2 発売記念〜

      2005年12月22日(木)
      於/吉祥寺 Star Pine's Cafe
      開場 18:30 / 開演 19:30
      前売/当日共 3,000円 + ドリンク代

      Star Pine's Cafe、チケットぴあにて
      前売取扱中

公演タイトルの“le solstice d'hiver”とは仏語で「冬至点」という意味である。「冬至点」とは「黄道上の黄経270度の点」を指すらしい。今年の冬至は12月22日(正確には同日午前3時35分頃)なので、なるほどこの日にLiveが予定されたのも合点がゆく。
因みにこの日の副題に「classiques 1&2 発売記念」とあるが、これはかつてSSE在籍時にリリースしたアルバムをリニューアル及びリマスタリングして新たにSibyllaより発売するものであるらしい。「classiques 1」は1st(最後は天使と聴く沈む世界の翅の記憶)、「classiques 2」は2nd(夜が星をしたがえて)である。また公式サイトによればこれに続き「classiques 3」(3rd『月の蝕』)、「classiques 4」(Live『LUX AETERNA〜久遠の光』)、そして「classiques 5」(JURI et LISA『All Things Are Quite Silent』)の再販も予定しているという。
個人的にはいずれのCDも持っているが、再販されるなら喜んで再び買い揃えるつもりだ。かつて某所にて惜しみなく「魂を売り渡した」と黒百合姉妹について私は語ったし、Sibylla仕様でのリニューアル、そしてリマスタリングされた音色が如何なものかもとても興味がある。正直1stに関しては内容はともかく音質にはやや疑問があったので、これで改善されればもう、云うことはない。

但し、この日は平日だ。おまけに年末の仕事において最も忙しい日に違いない。
未だに休みを無事取れるのかどうか、極めて悲観的に不安である。

      黒百合姉妹公式HP
      http://www5.airnet.ne.jp/lisnoir/

      吉祥寺 Star Pine's Cafe
      http://www.mandala.gr.jp/spc.html
posted by 紫乃薇春 at 04:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2005年08月25日

黒百合姉妹Live『 星の夜 vol.14〜jupiter and venus 』

      2005.8.23(火)
      於/吉祥寺 Mandala2

      対バン/water seek,morpheus

昨年暮、吉祥寺Star Pine's Cafeにおける『星の夜Vol.13』(CD『天の極み 海の深さ』発売記念Live)以来、ほぼ8ヶ月振りのLiveとなる。
今回は会場をMandala2に移し、久々の対バンを迎えてのステージ。その為、演奏時間及び曲目はワンマンに比べ大幅に少ない(ワンマン2セットの第2部+アンコール程度)が、内容に充実感があり、物足りなさは感じなかった。対バンがまた豊かな演奏力を持ったバンド達だったこともあるだろう。
開場は数分程押していた様だが、私自身が時間ぎりぎりにバタバタと慌しく到着した為に待ちぼうけを食わされたという感はなかった。

(以下、追記に記載)
posted by 紫乃薇春 at 05:46 | ☁ | Comment(13) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2005年07月10日

黒百合姉妹Liveチケット発売/入手

先のエントリを含め過去の記事にて幾度か触れているが、この夏の黒百合姉妹Liveの、今日がチケット発売日である。

「星の夜 vol.14
〜Jupiter and Venus〜

w/ morpheus, WATER SEEK



8.23.Tue.2005
at MANDA-LA2/KICHIJOJI
open 18:30 start 19:30

info
MANDA-LA2 0422-42-1579
チケットぴあ 03-5237-9999(Pコード:205-487)
3,000yen」

上記通り、今回は対バンが2つ。いずれも私には疎いバンド(ユニット)名だが、WATER SEEKの方は現在ZOA(黒百合のLISAさんとも共演歴のある森川誠一郎氏のバンド)の人が在籍、以前にはGAZZELEさんが籍をおいていたこともあったり、morpheusもその関係者のバンドらしく、黒百合姉妹とそう縁遠い訳ではないらしい。
折角なら只の対バンではなく、ギターやドラムの方が黒百合姉妹のゲストとして加わってくれたらまた一味違う演奏が楽しめそうだが、それは期待しないでいた方が無難か。

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posted by 紫乃薇春 at 19:06 | ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2005年06月09日

緊急告知<黒百合姉妹Live情報>
2005年8月のLiveについて

昨日告知した黒百合姉妹Liveについて、公式サイトの方で更新があった様なので御報告。
日付が決定した模様である。

 2005年8月23日(火)
 吉祥寺Mandala2にて


尚、詳細は依然未定だそうなので、引き続き公式サイトにて御確認されたい。

Sibylla(黒百合姉妹公式サイト)
posted by 紫乃薇春 at 01:22 | ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2005年06月08日

緊急告知<黒百合姉妹Live情報>

黒百合姉妹の公式サイトにて、Liveの予定が掲載されたので御報告。
まだ日付が確定していない様なので勇み足になるかも知れないが、覚書として、ということで。

 2005年8月22日(月)−25日(木)の間に予定
 吉祥寺Mandala2にて


場合によっては上記の日付からもまたずれる惧れもあるので御注意を。
また、こちらでの告知が今後遅れる可能性もあるので、詳細は以下のサイトの“information”にて各自御確認頂きたい。

Sibylla(黒百合姉妹公式サイト)
posted by 紫乃薇春 at 06:46 | 🌁 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2005年01月25日

「天の極み 海の深さ」ポスター到着

「天の極み 海の深さ」ポスター(1)
今夜、日付が変って帰宅すると玄関の下駄箱の上に私宛の細長い筒が置かれていた。一瞬「?」と思ったがすぐにそれと察した。確かに、先週の末、Sibyllaからメールが入っていたのを思い出した。
うきうきしながら部屋に引篭り、着替えもそこそこに筒を開けてみた。
確かに、頼んだ分の枚数が入っている。メールには「御依頼のポスターを一枚」と記載されていたので少々不安だったのだが、どうやら取越し苦労だった様だ。
今回のこのポスターは「限定150枚」となっていたので、個人が何枚も注文するのはどうかと思ったが、度を越していなければスタッフとしては問題がないのかも知れない。
ポスターを筒から取出し、暫く眺めて楽しんだ後、一枚を部屋の扉に画鋲で留めて残りはひとまず筒に戻した。

ポスターを写してこちらに載せてみたい処だったが、この「知的財産権」は黒百合姉妹に帰属するものであり、またポスター(及びCD)に使用された写真はHolly Warburtonの作品である。即ち「著作権」に触れる惧れがあるため、掲載は見合わせた。悪しからず、御諒承頂きたい。
posted by 紫乃薇春 at 04:15 | ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

2004年12月21日

黒百合姉妹<星の夜Volume13>
〜NEW ALBUM発売記念Live〜

黒百合姉妹Live〜20041220b
さて、昨年11月以来、一年以上振りとなる黒百合姉妹のLive「星の夜Vol.13」である。

2004年12月20日(月)吉祥寺Star Pine's Cafe

JURI:Vo,Perc.
LISA:Piano,Keyboard,Vo.
有馬純寿:Keyboard
小門 学:Keyboard,Guitar

ゲスト/Christophe Charles:SE

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posted by 紫乃薇春 at 05:02 | ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽<黒百合姉妹>

2004年12月13日

黒百合姉妹   新譜情報

黒百合姉妹の新作CD情報が明らかになったので御報告:


   <黒百合姉妹 新譜情報 -CD->

   「天の極み 海の深さ」(SIBYLLA-002)
         ・全12タイトル
         ・初回プレス限定特典付
         お問合せ:メールまたはフォーム
         2005年2月1日(火)全国のCDショップにて発売予定


今月下旬のLiveにてCDの先行販売予定とのこと。
Liveスケジュールは以前掲載済みだが改めて:

   2004年12月20日(月)   18:30 open/19:30 start
         at Star Pine's Cafe / Kichijoji,Tokyo 0422-23-2251
         前売券:チケットぴあ / Star Pine's Cafe

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posted by 紫乃薇春 at 06:49 | ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽<黒百合姉妹>

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