2013年04月14日

Missing at HARMONIE CINQ

井上陽水@小倉〜20130414

小倉はモノレールの走る町である。昨夜鳥栖からJRで移動し先に来ていた家人と合流して、晩の食事のうどん屋へ行く為モノレールに乗った。嘗て暮らした鎌倉の外れ大船駅にもモノレールがあり、あちらは懸垂式、こちらは跨座式と形式が違い周囲の景色も異なるが、何処か懐かしい気分に浸った。小倉から隣の平和通までたったひと駅、500mあるかないか。おまけにホームで10分近くも待たされて、歩いた方が確実に早いが敢えて乗るのが楽しい。マニアを名乗るのはおこがましいが、軽度の鉄道愛好家である。
昨日の好天は今朝まで保ったが、昼過ぎから俄かに曇り土砂降りになった。一時は宿泊先のすぐ近くに落雷があるなど酷く崩れたが、幸い長くは続かず夜にはすっかり上がった。

井上陽水@小倉〜20130414

『井上陽水 LIVE 2013 Missing』

2013年4月14日(日)
アルモニーサンク 北九州ソレイユホール

開場 17:30
開演 18:00

小島良喜(Piano,Keyboard)
佐藤準(Keyboard)
長田進(Guitar)
高水健司(Bass)
山木秀夫(Drums)

井上陽水(Vo,G,Harmonica)


何やら舌を噛みそうな名前のホールだが、嘗ての九州厚生年金会館だそうである。厚生年金と云えば関東在住の頃、殊に10代後半から20代くらいに幾度か新宿の東京厚生年金会館で井上陽水の公演がありお世話になったが、3年程前に閉館したとのこと。音響等は必ずしも良好と云えなかったが、馴染み深い場所が姿を消してゆくのは寂しい限りである。
昨日の今日なので、1曲2曲入替えがあればその点だけ…と思っていたが、まさかの7曲入替え。また、昨日はアンコールで演奏された「氷の世界」が本編に移るなど、曲順変更も一部にあった。

出だしから今宵は違う空気が漂った。ツアー初日の4月3日・横須賀からずっと「闇夜の国から」で始まっていたので今夜もそうだろう、と高を括っていたらよもやの「傘がない」。不意の強雨に応えたのか、昔は殆ど見せなかったこういう臨機応変さが今の陽水の魅力のひとつである。雨と云えばもう1曲、今日の天気にぴったりの「夕立」を期待したが残念ながらそれはなかった。
いつもならライブの終盤に置かれる大曲をいきなり冒頭に持ってきてこの後はどうなるのだろうとソワソワしたが、そこは代表作があり過ぎて選べないと巷のファンを悩ます日本のポピュラー音楽の申し子である。有余る聴き処には事欠かない。2曲目の「東へ西へ」、3曲目の「心もよう」と初期のアルバムからの曲をファーストから順を追うことで、歴史に触れる想いを抱いた。

殊に前半の入替えが目立ち、6曲目の「鍵の数」及び7曲目の「5月の別れ」共に今期のツアーにおいて初出である。「鍵の数」では抑えた声の揺れがやや気になったが、「5月の別れ」はしっかりしっとり情感と量感たっぷりに歌い上げた。総じて前日の鳥栖より声の調子は良いと感じた。
弾き語りの「いつのまにか少女は」は昨日と同じ。だが、初日から歌い続けた10ccの「I'm not in love」を外し、今宵は「Hello good-bye」。前年のツアーで取上げ、ツアータイトルにもした有名なビートルズの曲である。昨年鹿児島で聴き、もう一度生で聴きたいと想う願いが叶い、思いがけず狂喜した。
新曲の「キャッホー」を二夜連続で聴けたのは嬉しいが、一方でツアー開幕から余所の地で披露してきたという「青いフラミンゴ」をいずれも聴けなかったのが残念。残念と云えば今夜は「バレリーナ」もリストになかったのが個人的にはとても残念だった。今期初出の「ジェラシー」は勿論名曲だが、好みで云えば「バレリーナ」が上。…ま、あくまで私の個人的思い入れに過ぎないので、一般には「ジェラシー」の方が遥かに人気も知名度もあるのだろう。
「新しいラプソディー」は昨夜も好調だったが、今夜は更に声が伸びていた。終盤のコーラスを上り詰め、一瞬『クラムチャウダー』バージョンの再現なるかと思わせながら結局途中で止め、後半の下降する処は脳内でのみ鳴り響いていた。
不吉な「限りない欲望」を昨日だけでしまい込み、今日は「氷の世界」がアンコールから本編に返り咲いた。「ビルの最上階」も「氷の世界」も快調な様子だったが、本編の最後「積み荷のない船」では思わず上擦る声に不安を覗かせた。急に具合が悪くなったのか?―心配しながら見守ると、サングラスの向こう側で泣いている様な表情を浮かべている。不意にスイッチの入る人だから、計り知れぬ想いに感極まっていたのかも知れない。

アンコールは今夜も3曲。暗転の前で見せた不穏な気配は微塵も残さず、絶好調とはこのことかと云わんばかりに嬉々として「渚にまつわるエトセトラ」を唄う。今夜の打上げは蟹料理だろうか。「アジアの純真」も久々聴きたかったが、またいずれの機会に期待したい。
「夢の中へ」そして「少年時代」と代表曲を歌いきり、メンバーを前方に呼び寄せ感謝の言葉を届けて退場、終演。

小倉の会場には前夜の鳥栖とはうって変って熱いファンが集い、「少年時代」の後メンバーが退く前から更なるアンコールを求める喝采を送っていたが、それには応えなかった。体調が(見た目より)悪かったのかも知れないし、自身としては遣り切った想いが強かったのかも知れない。会場の都合も見過ごせず、あと1曲を欲する想いは本音としてあるが次に預けよう。
この日のMCは小倉と自身の関わりについて、その昔小倉に一人住いをしていた時の逸話などを語ってくれたが、殊に高校時代小倉に自動二輪免許を取りに通った話、そして取得した免許証のその後の顛末は以前何処かで聞いたか読んだかして知っているものの、本人の口から改めて聞くとつい哀しくも笑える話なのであった。


今夜のセットリストを以下に。殊に今回は前日と見比べてみる甲斐があると思う:

01 傘がない
02 東へ西へ
03 心もよう
04 ダンスはうまく踊れない
05 飾りじゃないのよ 涙は
06 鍵の数
07 5月の別れ
08 いつのまにか少女は
09 Hello good-bye
10 キャッホー
11 リバーサイド ホテル
12 灰色の指先
13 ジェラシー
14 新しいラプソディー
15 ビルの最上階
16 氷の世界
17 積み荷のない船

アンコール
18 渚にまつわるエトセトラ
19 夢の中へ
20 少年時代

井上陽水@小倉〜20130414
posted by 紫乃薇春 at 22:36 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年04月13日

Missing at TOSU

何かと移り気なこの頃の空模様であるが、今日は朝からほぼ快晴。午後になり少し雲が目立ち始めたが、不意の夕立でもない限り雨の降る心配はないだろう。しかし気温も上がって、日陰はともかく一寸でも陽向を歩くと汗ばんでしまう。だが恐らくこれで漸く平年並の気温に違いない。
心配なのは天気よりもむしろ今朝発生した淡路島の地震だ。寝つきの悪い明け方突然に携帯が鳴り、開くと気象サイトからの一報が。最大震度や規模は18年前の阪神淡路の地震より控え目だが、震度6弱は決して小さい地震ではない。一震による津波の心配はなく今の処死者の報告はない様だが、詳細がわからず気掛かりである。
2年前の3月11日、同じく井上陽水のコンサートを聴く為博多へ向かう際、あの時は移動する列車の中で報を受けたのを思い出した。

井上陽水@鳥栖〜20130413

『井上陽水 LIVE 2013 Missing』

2013年4月13日(土)
鳥栖市民文化会館

開場 17:30
開演 18:00

小島良喜(Piano,Keyboard)
佐藤準(Keyboard)
長田進(Guitar)
高水健司(Bass)
山木秀夫(Drums)

井上陽水(Vo,G,Harmonica)


昨年の全国ツアー『Hello,Good-bye』と同じ顔ぶれによる今季のツアーである。前回は一部の面子に賛否両論湧いた様だが、挫けずに同じ布陣で臨むというのは陽水本人がこのバンドを気に入り自信を持つ表れだろう。未消化な部分の皆無とは云えなかった昨年に比べ、大分音も成熟したかと楽しみな処だ。
開演予定時刻の18時にブザーが鳴り、客席への案内とお願いのアナウンスが流れる。客電が落ちるより早くスタッフに先導されたベースの高水健司が出てきて楽器をセットし、袖の方に軽く合図を送ると消灯と共に他のメンバー、そして井上陽水が登場。向かって左袖から出てくることの多い陽水だが、今回は何故か右袖から。会場の構造の都合だろうか。しかし他のメンバーは左右それぞれ近い袖から出てきたので、側を変えたい何らかの想いが今回はあるのかも知れない。

アルバム『Blue Selection』を彷彿とさせるジャズめかした実在感のある導入、やがて聞き覚えのあるリフが始まり、1曲目は「闇夜の国から」。未だ先行きの見えないこの世の中から放たれた海原へ舟を漕ぎ出そう、というオープニングに相応しい曲だ。行先はわからない。もしかしたら今夜のこの数時間を過ごす箱の中だけに進むべき海路があるのかも知れない。
しかし(レコードではアコースティック・ギターで弾かれる処)強烈な歪みを効かせた長田進のエレキのフレーズに導かれて続く2曲目は「断絶」。辛辣なアンチテーゼを匂わせるが、「どうして悪いのだ 愛していることが いつでもそばにいて 愛していることが」という絶叫にいつもはにかんで語らない陽水の痛切な本音が見え隠れする。近年は弾き語りで歌われることの多い楽曲だが、原曲を倍増しにした様な硬質のバンドサウンドが新鮮である。
3曲目は「心もよう」。ミリオンセラー・アルバム『氷の世界』の売行きを支えたシングル・ヒット・ナンバーで、通俗と云われようとライブでこの曲が聴ける度にワクワク、ドキドキする。
ここまで3曲いずれも初期、ポリドール時代の作品が並んだ処で最初のMCが入る。相変らず身も蓋もないというか、捉えどころのない話し振りだが、文字にしたら「?」と思う様なことでも絶妙な間の取り方、話す抑揚と声の響きについ笑ってしまう。この日は「鳥栖ですから〜」を連呼しつつ、北へ行けば福岡、南へ行くと熊本・鹿児島、西に行けば長崎、東は大分…と延々交通の要衝である点について箇条書きした後で「これだけ云っても出てこない県がひとつある」と。在住の方の名誉の為にも答えは敢えて云わずにおこう。
MCの後は他人に書いた曲から2曲、「ダンスはうまく踊れない」及び「飾りじゃないのよ 涙は」。「ダンス〜」は通常のスイングではなく、8ビートで間を詰める様な歌い方、演奏がユニークである。一方「飾りじゃないのよ 涙は」はほぼ『Blue Selection』のバージョンを踏襲したもの。圧倒的なシャウトより息を抜き呟く、囁く様な歌い方が主になりつつある近年の陽水には『9.5カラット』より此方のアレンジが合う様に感じる。
恐らく1996年に行われたライブハウス・ツアー以来となる「目が覚めたら」は『永遠のシュール』から。そして奥田民生とのユニットで生まれた「手引きのようなもの」と、思いがけぬ日常の隙間を教えられる様なバラードが続く。声の豊かさは健在だが、正直な印象として今夜は高音部の出が余り良くない気がした。不調なのか、ツアー序盤でまだ脂が乗切っていないのか。衰えたかと思えば次にはまた絶好調になったりする人なので、調子の程は憶測でしかわからない。

一旦バンドが退き、ハーモニカを取出しながら椅子に腰掛けて再びMCを入れる:「鳥栖出身の女性がミスインターナショナルに選ばれたそうで」という前置きから弾き語りで「いつのまにか少女は」を。イントロ部分では三連符を細かく刻むギターがまた新鮮だったが、その後は伝統芸能の世界だった(個人的には非常に好きな曲であり、毎回でも聴けたら良いくらいで嬉しいのだが)。
ギターを12弦に持替えながら語りを入れる間にバンドが袖から出揃い、10ccのカバーで「I'm not in love」。ビートルズ或いはサイモン&ガーファンクル以外で海外の曲をライブで取上げるのは異例に思うが、これが実に今の井上陽水に合っていた。
続いて新曲の「キャッホー」という曲を。曲紹介の時、「特に、鳥栖の皆さんの為に」とか「初めて人前で歌う」などと語っていたが、実を云うと事前に或る新曲をツアーのこれまでの公演で披露したという情報を得ており、内心「よく云うよ」とほくそ笑んでいたのだが、いざ曲名と歌を聴いて良い意味で裏切られた。これは、実娘である依布サラサの為に書いた曲だそうで、曲調は「結局雨が降る」や或る意味吉田拓郎に通じる様なシャキシャキした明るさで、歌詞は一部「アジアの純真」を想わせる。だが一番の特徴は、『ユナイテッド・カバー』に収められた「嵐を呼ぶ男」以来の、陽水のオリジナルとしては「桜三月散歩道」以来およそ40年振りの台詞入りという点である。しかもその台詞が博多弁で語られるとなれば、…嘗て客席から「(出身地の)田川弁で喋ってー」と云われて「是非、福岡に行かれたら…」と拒んだ彼に一体、どんな心境の変化があったのか知らないが、先年家族で福岡に移住したとの噂と無関係ではないのかも知れない。
高音部にやや疑問を覚える今夜の陽水だが次の「リバーサイド ホテル」を難なく終え、今回のツアーで最も秀逸な流れ「灰色の指先」のジャズアレンジからよりドラマティックな「バレリーナ」へとプログラムが続く。「バレリーナ」での小島良喜のピアノと陽水の声の絡みはこの日の最良のパートのひとつ。深く暗い湖の底に沈む様な黒く透明な時間の後、「新しいラプソディー」で一気に晴れやかな空へと駆け上がる。
コンサートも終盤を告げる語りと再度の楽曲紹介の後、「ビルの最上階」を緩やかに歌い始める。出だしはメロウで牧歌的ですらある哀調を帯びているが、次第に核心がめくれ上がってゆく。優しげな顔をしたお婆さんがやがて大きな口を開け、牙を剥く童話の様に。
そしてクライマックスへと。今夜は「限りない欲望」が選ばれ謳われる。デビュー間もない若き日の作品だが、本能的欲求と死生観が垣間から覗くシニカルでシリアスな曲。何でこんな曲を彼は書いたのだろう。名曲だが、聴く度霊柩車に遭遇した時の様なリアクションを思わずしてしまう。更に淡々と怖い光景を綴るバラード「積み荷のない船」をさざ波の様に寄せ返しながら、本編は幕を閉じた。

アンコールは3曲。これまでの日程ではPuffyに提供した曲を歌っていたそうだが、この日は「氷の世界」と「夢の中へ」。そしてメンバー紹介の後、「少年時代」を口ずさんで終了。鳥栖の人は控え目なのか淡白なのか、「少年時代」が聴けたらそれで満足した様にアンコールを求める手拍子もあっさりとフェイドアウトした。曲目・曲数は公演毎にきっちり決まっている訳ではなく、客席の強い要望があれば1曲2曲は増えることもあるので、何処かの町の会場の様にもっと暑苦しくねだれば―と思わないでもない。

井上陽水@鳥栖〜20130413

私が井上陽水を聴き始めた30何年前と違い、今はパソコンや携帯端末が普及して何時々々何処其処で行われた公演のセットリスト等知るのが容易な時代である。それはとても便利で私も度々その利器のお世話になるが、反面余所でやって自分の通うライブでやらない曲があるとアレも聴きたい、コレも聴きたいとつい存外の欲が出てしまう。困った弊害である。
20時過ぎには演奏が終了したので、歩いて新鳥栖駅に行き、明日の会場・小倉へと向かった。


本日のセットリストを:

01 闇夜の国から
02 断絶
03 心もよう
04 ダンスはうまく踊れない
05 飾りじゃないのよ 涙は
06 目が覚めたら
07 手引きのようなもの
08 いつのまにか少女は
09 I'm not in love
10 キャッホー
11 リバーサイド ホテル
12 灰色の指先
13 バレリーナ
14 新しいラプソディー
15 ビルの最上階
16 限りない欲望
17 積み荷のない船

アンコール
18 氷の世界
19 夢の中へ
20 少年時代

井上陽水@鳥栖〜20130413
posted by 紫乃薇春 at 22:38 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年04月04日

『Missing』始動

昨日の神奈川・よこすか芸術劇場での公演を皮切りに、今期の井上陽水ツアー『Missing』が無事スタートしたとのこと。

ツアーメンバーは昨年と同じ、まとめて下さっているサイトが他にあるので曲目等の細かいことは敢えて載せないが、ここ数年のツアーと比べて一味、いや二味くらい違うユニークな選曲が行われていた模様。新曲や10ccのカバーもあるとのことで、楽しみである。
日程をこなすにつれて徐々に曲目の入替えが行われるのが通常の彼のツアーだが、初日のリストを見たら是非そのままで、欲を云えばやや少なめな為あと2、3曲追加して九州まで来てくれないかと期待している。
取敢えず、来週末の九州公演(4/13鳥栖、4/14北九州)までに2公演。6日の新潟及び7日の長野公演における曲目の推移に注目してみたい。
posted by 紫乃薇春 at 21:54 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年02月12日

ロマネスコ

本日、九州の音楽プロモーターBEAによる井上陽水の佐賀及び北九州(小倉)公演チケットの予約受付開始日であったので、受付開始時刻の正午にはパソコンの前に陣取り時報と共に予約ボタンをクリック。受付のメールはすぐに来たがそれから1時間余り経って、漸く予約確定メールも届いた。
入金はネットでは出来ず、後日期限内に郵便窓口から振込まねばならない。今日でも勿論良いが、都合がつかず明日行くつもりである。予約確定とは云っても入金し、無事現品を受取るまでは安心出来ない。昨年の福岡公演での自身の不手際を踏まえれば尚のことだ。だがとにかく、第1段階はクリア出来たのだろう。

西日本新聞文化面の『ビートルズが教えてくれた』(田家秀樹)の井上陽水編はやはり先週で終り、今週月曜日からはフォークル(フォーククルセダーズ)編がスタートした。「帰ってきたヨッパライ」で名高い、あのグループである。今後は同エッセイの題字を担当した詩人、吉田拓郎の多くの楽曲の作詞でも有名な岡本おさみ氏も登場するというし楽しみではあるが、延々と新聞を買いに寄るのも煩わしく、いずれ書籍化されることを期待し購入してみたいと思う。

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ところで、昨日買物に寄った大塔のスーパーでこんなものを見かけた。

ロマネスコ〜20130212

御存知だろうか?ロマネスコと呼ばれるブロッコリー、もしくはカリフラワーの一種で、れっきとした野菜である。
フラクタルというのか、何とも云えぬこの形状を目の当たりにした時はまずギョッとして仰け反りそうになったが、好奇心の方が勝り買って帰ってしまった。
とはいえ使い方がわからずネットで調べてみると、原種であるブロッコリーやカリフラワーと同じ調理法で粗方行けるらしい。小房毎に切り分けてと書いてあるが、何処から包丁を入れれば良いかわからない。結局適当にざっくりと捌いて茹で、鍋料理に使った人参や大根、白菜のハギレと共にサラダにした。

ロマネスコ〜20130212

見た目のインパクトに比べて味は大人しく、控えめなブロッコリーという感じ。芽キャベツの改良種プチヴェールを思い出し、これはこれで美味しいが個人的にはもっとクセの強いのが好み。但し、独特の形状を生かしたメニューはあって良い気がする。
改良種の一つであるが、歴史は意外と古く16世紀頃には既に栽培されていた様だ。
posted by 紫乃薇春 at 21:41 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年02月08日

西日本新聞文化面 その6

昨日一日また間が空いて、西日本新聞文化面連載の田家秀樹氏による『ビートルズが教えてくれた』も第21回、井上陽水編としては6回目を迎えた。

「一人で延々歌っていた」―デビュー後の陽水について、「当然の結果」としてその周囲には筋金入りのビートルズマニアが集う様になったこと、彼と親しい小室等や星勝、音楽プロデューサーの川瀬泰雄らの「陽水はいつもビートルズを歌っていた」という談話、この連載の題字を書いた作詞家の岡本おさみも「(吉田)拓郎と一緒にビートルズを歌っているところに遭遇した」と語るなど、少なくとも若い頃の井上陽水が自身歌手になってからもビートルズ漬けの日々を過ごしていた様子を伝えている。一人で延々というのは、先述の川瀬氏が初めて陽水と会った時、音楽練習室に案内したら何時間も出て来ず、心配になって覗いたらただひたすらビートルズを歌い続けていた―という逸話によるものだ。
陽水の友人の中にはビートルズを迷路に例え、一度嵌ると抜けられないと話したそうだが、陽水自身は同じくらいに影響を受けたボブ=ディランの存在を挙げたり仕事等の環境のおかげで「迷路に入らずに済んだ」という。しかし、昨年のツアーでは自身の気分とビートルズの50周年を意識して見出しを『Hello, Goodbye』と付け、途中からは同名のビートルズの楽曲をセットリストに加えるなど現在に至るまでその影響が続いていることを示唆している。

今年四月から始まる新たなツアーのことに触れて文は締括られている。次回掲載は週明けの二月十一日とのことだが、文末に「この項終り」と記されていたので、井上陽水編は本日を以て完結か。
ま、月曜日に億劫でなければまた出掛けにコンビニエンスストアに寄り、新聞を買うつもりだ。
posted by 紫乃薇春 at 22:37 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年02月06日

西日本新聞文化面 その5

本日午前、ソロモン諸島沖でマグニチュード8.0の地震が発生し、日本の太平洋沿岸部でも現在津波注意報が発令されている。既に小笠原や伊豆諸島、三重県や和歌山県、宮城県に福島県等では津波が観測されている模様。50cmの予想に対し到達した津波は現在の処微弱なものから20cm程度と小さめの規模だが、第二波や第三波の津波が来ることも予想される為発令地域の殊に海岸付近では充分な警戒が必要とのこと。
震源地に近いソロモン諸島では所により1mの津波が観測され、これまでに少なくとも5名の犠牲者が出ているらしい。

先週から続いた温暖な気温も一段落したのか、昨夜頃からまた冷えを感じる様になった。都心部で出ていた今朝の大雪予想は外れた様だが、寒波はまだこれから来る様なので体調管理にも気をつけたい処。
先週から続くといえば西日本新聞文化面連載の田家秀樹氏による『ビートルズが教えてくれた』、井上陽水編も本日で5回目を迎えた。「触発され、自分の世界を」の題の下、音楽面におけるビートルズからの影響と、それに基づく陽水の楽曲の特徴についてが綴られていた。陽水曰く、スタッフの話として「(陽水の曲には)二拍三連の曲が多い」とのこと。二拍三連とは、二拍を三分割するリズムの取り方である。陽水は自身のそのルーツにビートルズの「You've Got To Hide Your Love Away(悲しみはぶっとばせ)」を挙げている。また、ビートルズの「She Loves You」を「人生の悲哀とか人間としての悲しみなどを表現し始めたスタートの作品」と評し、先の「悲しみはぶっとばせ」やそうした曲に殊に惹かれた旨を語っている。井上陽水としてのデビュー曲「人生が二度あれば」は正に二拍三連のリズムと、悲哀の情感とを併せ持った楽曲であると田家氏は述べている。そういえば嘗て無承諾で発売されたアルバム『陽水生誕』には、デビュー当時モップスと巡ったツアーで上記の「She Loves You」や同じくビートルズの「I Saw Her Standing There」を歌った音源が収録されている。陽水本人の許可を得ずレコード会社が勝手にリリースした盤なので発売後すぐに禁止措置が取られ、現在では正規には聴くことが出来ないのが残念だが、貴重なデモ音源や(今では組売のリマスター盤等で聴くことが可能になった)アンドレ・カンドレ時代の楽曲が収められていた。先の2曲は当時まだ荒削りながらも尋常ではない声の伸びと張りが生々しく伝わるものだった。

「ビートルズがいなければ、井上陽水は存在しなかったに違いない」という一文で結んであり、区切りの言葉とも取れるが高嶋弘之編のラストの様に次の登場人物の名前が出てきてはいないので、まだ続きがあるかも知れない。
次回はまた飛び石となり2月8日に掲載予定とのこと。

津波観測情報が更新され、これまでに注意報が発令された太平洋沿岸部ではほぼ全域で津波が観測された模様。
引き続き警戒を怠らず、今後の情報に注目が必要である。
posted by 紫乃薇春 at 21:27 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年02月05日

西日本新聞文化面 その3/その4

西日本新聞文化面に連載中の田家秀樹氏『ビートルズが教えてくれた』は先週後半に続きこの週前半も井上陽水編である。その3となる昨日は「地球の裏側にいた同志」と題してビートルズの存在を知った陽水が港町リバプールと自身の出身地であり炭鉱の町・筑豊糸田の盛衰の在り方にシンパシーめいたものを感じるくだりが描かれ、その4である本日はビートルズの影響で初めて自分で曲を書いた高校時代から自作曲をラジオ局に持ち込む手前、即ちデビュー前夜までのあらましが語られる。「部屋にギターはなかった」と題され、音楽に魅力と可能性は覚えながらもまだ、本格的にその道を志すことまでは考えていなかった時期の話である。
まだ斜陽化していなかった映画館の存在を例にとり「当時豊かさは筑豊にあった」としながらも、都会である福岡(恐らく博多界隈)とあくまで地方であり炭鉱という一種特異な産業の土地である筑豊との差を感じていたこと、周囲にはドラムをやる者など誰もおらず、エレキ・ギターすら稀であったと語り、自身の育った(音楽的)環境のひもじさを語った。ファンにとっては有名なことだが彼は元々歯科医の跡取りとして生まれ、無事大学に受かりさえすれば他の選択はなかったのだろう。が、実際は三度の受験に失敗し、歌の世界に身を投じる巡り合せだった。歴史に“if”はないとは云うが、彼が福岡なり東京なり文化の氾濫する都会に育ち、跡取り問題もなかったとしたらもっと早くからギターを含め様々な楽器に手を出し、バンドを組むことにもやぶさかでなく所謂アマチュアの時代を長く経験することとなったのかも知れない。或いは全く別のものに感化され、そちらを志すことになったのかも知れない。しかしそうではない道を辿り、現在の彼に辿り着くことになった。

その3の冒頭を読んで、今回の陽水と田家氏の対談(もしくはインタビュー)が、この連載の為に行われたものであることがわかった。そうであるのか、或いは過去の対談を掘起こして書かれたエッセイなのかがずっと疑問だったのだが、漸く解けてすっきりした。
その4の結びを読む限り、井上陽水編はまだ先がありそうである。明日以降もまだ暫く新聞を買いに走ることになるだろう。
posted by 紫乃薇春 at 22:52 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年02月01日

【井上陽水】2013ツアー情報更新

数日来の暖気は変らず、今日も日中汗ばむ程の陽気。だが、大陸から運ばれた雲が空を覆い朝から雨が降っている。
恐らく隣国の放つ汚染物質を多量に含んでいるのだろう、雨粒が何処か黒ずんで見える気がした。

月が変り、井上陽水公式サイトにて、今年のツアー情報が更新された。
既に決まった4月・5月分に続き6月分の日程が追加され、島根・山梨・北海道・兵庫・滋賀に福島での公演を発表。昨年は公演のなかった北海道でも札幌及び函館と2公演が行われる様で、札幌在住の陽水ファンの友人も今回は漸く溜飲を下げられたのではないだろうか。
4月に決定している九州での2公演(鳥栖及び北九州)についてもチケット発売に関して明らかになり、いずれも一般発売は3月10日(日)だがプロモーターのBEAにて2月12日(火)12時より先行予約受付が行われる。昨年の福岡公演での取得ミスの件もあり、今回はしくじらずに手配したいと思う。

西日本新聞文化面連載の田家秀樹『ビートルズが教えてくれた』第17回は「井上陽水・2」、今回は「“音楽に選ばれた”人」と題して、井上陽水とビートルズとの出会いについて書かれていた。内容は以前も何処かで聞いたか読んだかしたこととほぼ同じ(違っていたら却って難)だが、やはり井上陽水という人は歌手になるべくしてなった人なのだろう、と改めて感じた。歯科医の長男として生まれ跡を継ぐ筈の処を継がず、ビートルズと出会ったことも、アンドレ・カンドレとしてデビューしたものの売れず時期を待つ様に“いのうえようすい”として出直してから日の目を見たのも、アルバム『氷の世界』で日本初のミリオンセラーを成し遂げたことも、意思の働きはあるのだろうが全て必然だったのだろうと思う。そんな彼の素顔が決してスタア然としてはおらず、むしろアウトサイダーめいたはにかみ屋であることも…。
次回掲載は2月4日(月)とのこと。土日はお預けということか。週末でも祝日でもない昨日何故未掲載だったのかが疑問ではあるが、深くは問わないでおこう。
posted by 紫乃薇春 at 19:13 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年01月30日

西日本新聞文化面 その2

昨日の記事の前振りを受けて本日、西日本新聞の文化面に掲載された田家秀樹氏のエッセイ『ビートルズが教えてくれた』(連載第16回)は「井上陽水・1」として、陽水と嘗て行った対談(もしくはインタビュー)の様子を綴っていた。このエッセイの為に行われた対談か、全く関係なく行われたものかはわからないが、井上陽水公式サイトにて「田家秀樹さんとビートルズについて話しています」と記された意味はこれで通じる気がした。
「リバプールは遠すぎる」と題して、井上陽水という繊細でありつつ且つ強靭なフィルターを通して視えるビートルズの姿、陽水のビートルズに対する一種「畏敬の念」に近い想いを垣間見ることが出来た。リバプールはイギリスの地方都市だが、ビートルズの出身地としてその名を知られる町である。ファンにとっては謂わば「聖地」でもある。自身初の海外旅行であるアルバム『氷の世界』レコーディングにおける渡英を含め陽水が幾度かリバプールに行く機会を得ながら躊躇いを覚え、実際に足を踏入れるまでにはかなりの歳月を要したことが彼らしい遠回しな云い方で語られる。挙句は遂にリバプールを訪れたものの、ビートルズゆかりのクラブ・キャバーンクラブやペニーレイン、ストロベリー・フィールズ等曲名にもなった店、またメンバーの生家や母校等ビートルズの足取りを得る手掛かり、或いは足掛かりとなる場所には悉く行かずじまいで過ごしたこと。普通なら喜び勇んで踏込みそうなものだが敢えてそうしない処に井上陽水の人となり、佇まいを見た様に思う。
読みながら私自身のことに当嵌めて考えてみた。私にとっての井上陽水は、井上陽水にとってのビートルズの様な存在である。然るに以前、彼の生地である筑豊の糸田を訪ねる機会に恵まれた際、何の躊躇いもなく現地を訪れたものである。加えて巷では「陽水公園」と呼ばれる彼の楽曲「夏まつり」の歌碑が建つ児童公園や、後藤寺にある彼の母校・西田川高等学校の門前まで臆面もなく足を運んだ。これが普通のファン心理と云って貰えたなら立つ瀬もあるが、私には到底陽水程の奥ゆかしさや羞恥の心が欠けているに違いない。

副題は「井上陽水・1」とあるので少なくとも次回、或いはその後数回に亘り続きがあるのだろう。次回掲載は2月1日(予定)となっているが、さて明日の分も買ったものか。こういう時定期購読をしていれば悩まずに済むのだろうけれど。
posted by 紫乃薇春 at 22:51 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年01月29日

西日本新聞文化面

先日、井上陽水の公式サイトに西日本新聞での掲載記事についての告知が載り、1月29日頃からとのことだったので今朝、出掛けついでにコンビニに寄り同紙を買ってきた。
ページを捲ると、文化面に『ビートルズが教えてくれた』と題された田家秀樹氏の文章が綴られている。サイトには「(田家氏と)ビートルズについて話しています」と記されていたので対談かと思ったが、どうやら田家氏によるエッセイ(?)の様だ。
1ページの4分の1程の文章に目を走らせてみたが、ビートルズのことは書かれていても陽水については仲々出てこない。日付が変更になる場合もあるとのことだったので、今日ではなかったのだろうかと少しがっかりしながら読み進めると、文末に至って漸く「井上陽水」の文字が一度だけ登場した。が、あくまでこれは前振りであり、文脈からして本格的に井上陽水について展開するのは明日、もしくは明日以降になる様子。因みに本日の副題は「高嶋弘之・4」で、「“信長”のバカヤロー」と銘打たれていた。
先程、今年のツアー情報の更新をチェックするついでに公式サイトを改めて覗いた処、サイトの告知にも「29日頃〜とお知らせいたしましたが、30日〜に変更になりました」と記してあった。現在西日本新聞の購読契約はしていない為毎朝買いに寄るのが煩わしいが、興味には逆らえない。

ところで、1月27日(日)にBS-TBSで放映された井上陽水の出演番組『筑紫哲也 明日への伝言〜「残日録」をたどる旅』はどんな内容だったのだろう。自宅でBSが受信出来ず観られなかったので、観覧された方の感想を是非とも伺ってみたい処だ。
posted by 紫乃薇春 at 21:13 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2013年01月24日

【井上陽水】筑紫哲也とビートルズ【出演情報】

先日今年度のツアー開催を発表したばかりの井上陽水公式サイトに、近日のテレビ出演及び新聞記事掲載の情報が載った。

◇テレビ出演:BS-TBS
 1月27日(日)19:00〜20:54
 『筑紫哲也 明日への伝言〜「残日録」をたどる旅』

◇新聞:西日本新聞
 1月29日(火)朝刊(文化面)
  『ビートルズが教えてくれた』にて田家秀樹氏と対談
 (掲載日時は事情により変更の可能性有)

生憎の処衛星放送は相変らず受信不能な環境である為テレビの方は観ることが出来ないが、新聞は幸い西日本新聞が主に流通するエリアの為こちらはなるべく忘れずに買いに行こう。
陽水氏の今春ツアー、九州は現在の処鳥栖及び北九州の2公演が発表されているが、チケット発売についての情報が未だに伏せられたままである。その他の地域の公演日程についてもチケット情報が明らかなのは一部のみなので焦ることもなく順次発表されることと思うが、昨年は自身の手違いにより福岡公演を不意にしている為油断は出来ない(その挙句鹿児島に日帰りという、楽しい様な勿体無い様な慌ただしい行程に出くわすことになったのだが)。
ツアーに合わせて新作のアルバム発売などあれば更に嬉しい処だが、ここ数作のペースを見ると…望み薄か。
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2012年07月06日

井上陽水 LIVE 2012 Hello,Goodbye at KAGOSHIMA

井上陽水〜20120706
昨日、気がする―と思った蝉の声を、今日ははっきりと聞いた。油蝉だろうか。街でもよく見かけるが、山で生まれたのが早く孵化したのだろう。
まだ7月の上旬で、鳴くには随分早い様だが実際はどうなのだろう。昨年と比べてどうだろう。九州に移り住んで4年近く経つが、未だに覚えられない。
この声を聞けばもう盛夏。だが今日は晴れ間もあるが雨の降り易い空模様。九州は先日漸く奄美の梅雨が明けたばかりで南部も北部もまだ前線の掌中にある。気の早い蝉もいるものだ。それとも、梅雨明けは近いと告げる声なのか。


2012年7月6日(金)
鹿児島市民文化ホール 第一ホール

開場 18:00
開演 18:30

小島良喜(Piano,Keyboard)
佐藤準(Keyboard)
長田進(Guitar)
高水健司(Bass)
山木秀夫(Drums)

井上陽水(Vo,G,Harmonica)


昨年3月の福岡以来の井上陽水コンサートである。当初は先月24日の福岡サンパレス公演に行く予定だったが、自身の手違いによりチケットが取れなかった。非常に残念ではあるが、幸い本日の鹿児島公演に空きがあった為急遽こちらに訪れた。
前年の福岡は正に東日本大震災の起きた当日で、その日は無事歌い終えたがその後予定された関東及び東北の公演は全て中止になった。
その後暫くは歌う気分になれなかったというが、一年経って漸く現場に戻ってきた。いざ歌うとなれば容赦なく、誰よりも本気で臨む彼らしさが伝わってくる。
井上陽水〜20120706
今夜もほぼ定刻通り。開演予定の18時30分にはブザーが鳴り、5分の後緩やかに客電が落ちた。
先に登場したメンバーがやや硬質でアップテンポなアンサンブルを奏で始める。少し遅れて陽水が登場。センターのマイクを囲む様に4台並べられたギターの中からお馴染みのギルドを取り、演奏に加わる。それまでのワンコード主体のアンサンブルからやがて陽水ファンなら聴き覚えのあるコード進行へと移行。最初の曲は「東へ西へ」。
この曲は昨年の福岡ではイントロの後出だしの「昼」だけ歌いかけて突然「ゲンが悪いので」と止めてしまった、いわくつきの曲である。何故止めたのか、ゲンが悪いとは何を指すのか、そして今回改めてセットの1曲目に持ってきた想いは何か。歌詞の一節「ガンバレ みんな ガンバレ」という文句は震災の当時、もし被災者に向けて発せられた言葉だとしたら如何にも配慮を欠いている。実際には被災地から遠い福岡であるが、脳裏にそれがよぎり彼は踏留まったのではないか。震災から1年余りを経て、前を向き新たに生きて行く意志を持った人々への「ガンバレ」は強圧的ではなく、半分は自分自身への鼓舞を込めて響く。
続く「御免」は四国の高知公演で「高知に因んだ曲をやります」と前置きして歌ったそうだが、確かに高知には「ごめん」という地名がある。但し字は「後免」と書く―現在は南国市だったか。
風の様に颯爽と過ぎた「Make-up Shadow」の後、「俺の事務所はCAMP」を歌う。何とも珍しい曲。1982年日比谷野外音楽堂で聴いた記憶があるが、それ以来実に30年振りに日の目を見たのではないか。ただ、ヒット曲となった「リバーサイド ホテル」の当時シングルB面に収められていたので、意外に曲自体は知っている方も多いかと思う。自らの決意表明の曲でもある:

♪〜
俺の仕事はsing & song

と唄う一方で

♪〜
何か伝えてと望まれても
俺のやりたいことは伝えぬこと

と天邪鬼に唄う。これが『招待状のないショー』の頃から、いや根の処はアンドレ・カンドレの時代から常に彼がモットーとしてきた姿勢。今回の「想いを伝えること、届けること」という主旨とは相反する様だが、彼が絶えず抱える葛藤、もしくは矛盾であり、今回はそれを主題としてぶちあげた、そんな感じを受ける。
「鹿児島の皆さんこんばんは」と最初のMCで、唐突に嗄れ声で「××××でごわす」といって笑いを誘う。いや、ウケているから良いが、今時の御当地の人はそんな云い方は滅多にしないのでは?と思っていたら案の定、すぐに「何にでも『ごわす』とつければ良いもんじゃないので」とオチをつけてまたクスクス声のさざ波が起こる。
ここで、「鹿児島おはら節」の一節を口ずさむ。以前福岡で「炭坑節」や「黒田節」を思いつきで唄っていたが、その時と同様の御当地ソングコーナーである。

♪〜
花は霧島 煙草は国分
燃えてあがるは オハラハー 桜島
(ハッ ヨイ ヨイ ヨイヤサット)
桜島には かすみがかかる
わたしゃおはんに オハラハー 気がかかる
(ハッ ヨイ ヨイ ヨイヤサット)

合いの手の「ヨイ ヨイ ヨイヤサ」を妙に、いや実に生き生きと裏声で唄っていたのがとても印象的。この日のベストアクトの一つだと思う。
NHKで放映中の『ブラタモリ』でエンディング・テーマに起用されている「MAP」が続く。何処か南国調のアレンジで、吉田拓郎の「KAHARA」を思い出した。他にも随所に拓郎を想わせる響きがあったのは、ギターに長田進が参加しているからだろうか。彼は長年佐野元春のバンドにいたギタリストだが、音の志向として陽水よりも拓郎に近いのかも知れない。スタジオ・ワークとしては「Power Down」や「Just Fit」で陽水組をサポートしたこともあり、一見荒削りだが閃くソロを聴かせてくれる。そのどちらか、出来れば両方を生で聴きたかったが、残念ながらこの日はやらなかった。
「タイランド ファンタジア」は今年のツアーでは初出かと思っていたら、前日の宮崎で登場済みであった。「自然に飾られて」との差し替えか。前夜のセットリストをよく見たら今夜のプログラムとほぼ同じ。鹿児島は宮崎での曲目から「クレイジーラブ」を除いた形だが、何故1曲減ったのだろう?出来が良くなかったとか、体調が勝れなかったなど理由は色々考えられるが、会場の使用時間の都合等もあるかも知れない。
アルバム『スニーカーダンサー』から「なぜか上海」「海へ来なさい」と夏を感じさせた後、弾き語りのコーナーへ。「最近は(齢の所為か)無くなってゆくもの、失われてゆくものに昔より感じ易くなった」と前置きして2曲。「夏まつり」そして「人生が二度あれば」。今朝聞いた蝉の声が「夏まつり」の歌詞とリンクして、思わぬ郷愁を呼び起こす。この曲は近年陽水の生地・糸田の児童公園(通称・陽水公園)に歌碑が立った際、選ばれた作品でもある。オリジナルのスタジオ録音には風鈴の音以外SEは使用されていないが、蝉の声を加えるのも良い気がする。が、余りにベタ過ぎるか。後年「Why」でヴォーカル・マイクを屋外に置いて録音した際混入したという鈴虫の音が浮かぶ。

そしてこの夜の白眉が訪れた。或る程度古くからの陽水ファンなら誰もが知る通り、彼の最大のルーツはビートルズである。今年のツアーは去るものがあれば新たな出会い、生まれ来るものもある、その想いを上手く表すとしてビートルズの楽曲のタイトルを引用したとのこと。ツアー開始当初はだからと云ってそれを歌うのはねえ…と躊躇ったそうだが、何日目かの公演で出だしをふと口ずさんでみた処思いがけず大好評。以後バンドを加え改めて正式なプログラムになった―「Hello Goodbye」。陽水が本気で歌うビートルズは「Yesterday」や「The Long And Winding Road」「And I Love Her」等々薫り素晴らしい出来を見せたが、当夜の「Hello Goodbye」も全編がベストアクト。
「さんざん酷い曲を書いてきましたが、中には『悪くないんじゃない?』と云われたのもありまして」と自嘲気味に語りながら「リバーサイド ホテル」「とまどうペリカン」「新しいラプソディー」と1980年代に発表した一連のヒット曲を続けて歌う。そして知る人ぞ知る古い名曲「つめたい部屋の世界地図」を取上げた。但しアレンジは90年代にセルフカバーとして発売した『ガイドのいない夜』のものだ。
「最後のニュース」はこの日のもうひとつのベストアクトとなった。ツアーを始める前歌詞を踏まえて「適切ではない気がする」と当初敢えて外していたが、歌い始めたら尋常でない身の入り様。模索する様な歌い出しから徐々にテンションが高まり、最後は感極まる様に完全に1オクターヴ上を歌う。歌うというより絶叫だが、鬼気迫るという次元を超え突抜けてしまった感じがした。被災地でもこの曲を歌った様だが、聴衆の胸にはどの様に響いたであろうか。
「限りない欲望」は深い処でこのツアーの主題にリンクする名曲だが、欲を云えば「少年時代」の前にもう1曲ロック調の曲が欲しかった処。この日は「My House」も「Just Fit」もなく、「氷の世界」はアンコールに回ってしまった為、終盤のボリュームがやや小振りになった感は否めない。加えて「少年時代」の途中で機材トラブルかギターからノイズが生じ、いささか締まらないラストとなってしまった。

アンコールはPuffyに提供した「渚にまつわるエトセトラ」から「氷の世界」「心もよう」「夢の中へ」と、ノリの良い曲を続けて演奏した。「心もよう」はバラードだが、サビが殊に顕著な様に案外アップテンポな曲である。更に欲を云えば最後に「傘がない」を聴きたい処だったが、それはまたの楽しみにしておこう。
序盤PAが定まらないのは毎度のことだが、今夜は特に荒れていた様だ。バンドがまだベストコンディションには程遠いこともあるかも知れない。今夏陽水は少なくとも2つのフェスティバルに参加するそうだが、このバンドで出るならもっと音を磨いておいて欲しい。

今回初めて訪れた鹿児島の地であるが、急ぎ足だった為会場の傍から遠目に桜島を眺めた他は観光もままならず。
しかし、新幹線の開通で長崎県北から市街地まではグンと近くなった。また改めてゆっくり訪ねてみたいものである。

井上陽水〜20120706

01 東へ西へ
02 御免
03 Make-up Shadow
04 俺の事務所はCAMP
05 MAP
06 タイランド ファンタジア
07 なぜか上海
08 海へ来なさい
09 夏まつり
10 人生が二度あれば
11 Hello Goodbye
12 リバーサイド ホテル
13 ジェラシー
14 とまどうペリカン
15 新しいラプソディー
16 最後のニュース
17 つめたい部屋の世界地図
18 限りない欲望
19 少年時代

アンコール
20 渚にまつわるエトセトラ
21 氷の世界
22 心もよう
23 夢の中へ
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2011年03月11日

井上陽水 Tour 2011 Powder〜福岡公演

本日は福岡のサンパレスホールにて井上陽水コンサートを視聴。
だがその前に、今日の14時46分頃三陸沖を震源地とする極めて大きな地震が発生。最大震度7、マグニチュードは当初7.9と発表されたが、その後8.4に修正された。東北地方を中心に広範囲で揺れ、関東でも震度5弱〜6弱で交通麻痺、また各地で津波、震源から近い太平洋側一帯では大津波が押寄せ、船が何隻も横倒しになっていたり更には火災もあちこちで発生する恐ろしい映像をテレビで観た。
既に犠牲となった方の報もあり、御冥福申し上げます。また、被害に遭われた方々にお見舞申し上げます。
私自身は実家が神奈川にあり、地震の後電話をかけたが繋がらなかった。ひとまずメールを入れておきサンパレスに移動したが、終演後携帯を確認すると家族からメールがあり、かなり揺れたが取りあえず全員無事の報せ。僅かに胸を撫で下ろしたが、ニュースの伝える惨状を前に気持が沈んだ。
その後も暫くマグニチュード7を超える余震が頻発し、未だに絶えず揺れを観測している様子なので、該当地域の方々の安否を心配している。

井上陽水@福岡〜20110311壱

2011年3月11日(金)
福岡サンパレスホテル&ホール

井上陽水
「Tour 2011 Powder」

18:00 開場
18:30 開演

小島良喜(Piano,Keyboard)
福田裕彦(Keyboard)
はたけやま裕(Percussion)
今堀恒雄(Guitar)

井上陽水
(Vocal、Guitar、Harmonica)


昨年下半期に行われた「Tour 2010 Powder」と同じ顔ぶれで、音や流れもその延長上にある今季のツアー。だがオープニングは「この頃、妙だ」から「リバーサイド ホテル」に差替えられ、謂わば曲目の「顔」が変るだけでも印象が異なるのを感じた。小島良喜の弾く断片的なピアノのフレーズと、その隙間を埋める様に刻まれる陽水のギター。他のメンバーも加わり散らばった音をかき集め、ひと塊にしてゆく。リズムがくっきりと浮かび上がった処で歌が始まった。
「飾りじゃないのよ 涙は」「ミスキャスト」と昨年ツアーの流れ通りに続いた処で、「最後のニュース」が4曲目に登場。いつもコンサート終盤の定曲として歌われていた曲がこのPowderのツアーでは外されていたが、ここに来て序盤に持ってきたことにはどんな意味があるのだろう。歌詞の内容は少なくとも表向き社会性があり、件の地震を受けて想う処があったのかも知れない。
ここでMCが入り、タモリの番組「ブラタモリ」に話題を振ってから同番組主題歌となった「MAP」を。CDでは風の様に口ずさみながら淡々と歌われる佳曲という印象だが、実演では自在に伸縮するヴォーカルと共により生々しさが伝わってきた。
その後は主に昨年ツアーに準じた流れで曲が続いたが、「覚めない夢」から「真珠」そして「タイランド ファンタジア」へと続くバラードは何度聴いても足りないくらいなだらかで且つ心洗われるひと時だ。
「断絶」の前に語りと共にビートルズの曲を2曲、いずれも途中まで鼻歌で口ずんでいたが、曲名を失念してしまった。今宵会場に居合せた方で御存知の方がいらしたら、是非一報願えないだろうか。「断絶」では独特のがなりが前半影を潜め声の不調を匂わせたが、後半ではいつもの様に声を割り、迫力ある歌を聴かせた。一辺倒ではなく緩急を描く意図があったのかも知れない。続いて「白い船」―この曲は本当に久し振りだ。私は過去二度程ライブで聴いたことがあるが、いずれも1980年代のことである。歌い終り「皆さんの胸に去来するものは何でしょうか?」と呟いていたが、陽水本人の胸に行き交う想いは如何なのだろう。この曲は御当地福岡の港をイメージしながら書いたそうだ。
全体に籠った感じの音質がやや気になっていたのだが、「限りない欲望」ではその懸念も無くなり強靭なヴォーカルが俄かに突き刺さる。ひとしきり盛上げた処で「東へ西へ」のイントロを弾き始めたが、冒頭の「ひる〜」の部分だけ歌った処で音を止め、「この曲はゲンが悪いのでやめます」と云ってギターを置いた。止める瞬間ギターのチューニングを弄る音が聞こえたのでそれが気になったのかも知れないが、バックも余りに見事にスッと止んだので元々の仕込みだったのかも知れない。ハンドマイクに持替え「鍵の数」と「虹のできる訳」を。ここ最近の陽水はこうした「抜き」のヴォーカルの曲を年々増やしている様に思う。その後「Just Fit」で再度高揚した後も「少年時代」「長い坂の絵のフレーム」と再び抜きの曲で本編を締括った。
井上陽水@福岡〜20110311弐
アンコールも昨年ツアーと同様、出だしを「氷の世界」で奮い立たせた後「招待状のないショー」でしっとりと、そして「積み荷のない船」から「いっそセレナーデ」と抜きの極みでトーンダウンし、一旦はメンバー全員をステージ上手に呼んで整列し終りの挨拶をしたが、客席の様子を見ながら今堀恒雄、小島良喜等と目配せ。再度持ち場に戻り、「夢の中へ」を熱唱。一昨年のツアーの時同様、前奏や間奏を陽水自らのハーモニカで奏したが、ややぎこちなさのあった一昨年と違い「ノリノリ」という表現が嵌る吹きっ振り。「福岡でやるのはいつも緊張する」と云いながら、頗る上機嫌だったに違いない。

昨日の熊本公演のセットリストをまだ見ていないので現時点では比較出来ないが、それ以前の日程とは曲目に目立つ入替えがあり、このツアーも漫然とせず前向きに模索している様子が伝わってきた。


01 リバーサイド ホテル
02 飾りじゃないのよ 涙は
03 ミスキャスト
04 最後のニュース
05 MAP
06 5月の別れ
07 覚めない夢
08 真珠
09 タイランド ファンタジア
10 断絶
11 白い船
12 限りない欲望
13 鍵の数
14 虹のできる訳
15 Just Fit
16 少年時代
17 長い坂の絵のフレーム

アンコール
18 氷の世界
19 招待状のないショー
20 積み荷のない船
21 いっそセレナーデ
22 夢の中へ

井上陽水@福岡〜20110311参
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2010年12月09日

井上陽水 Tour 2010 Powder at 長崎

井上陽水〜20101209壱

昨夜のライブの後、長崎本線の特急「白いかもめ」で佐賀から長崎まで移動したが、列車は道中著しく揺れた。寝不足による体調不良等もあるのだろうが、久々に乗り物酔いというものを体験してしまった。車両の遅れもあって長崎に着いたのは午前0時過ぎ。普段ならそれからひとしきり夜の街に繰出すのもやぶさかでないが、昨晩はさすがにその元気もなかった。
だがそのおかげで今朝は睡眠時間だけはたっぷり摂れた気がする。当初今日の予定は井上陽水の公演を聴くのみのつもりだったが、思いの外早めに外出出来た為、浦上にある会場の先の平和公園まで足を伸ばし、その後観覧車で有名なココウォークに立寄ってからブリックホールへと向かった。


井上陽水 Tour 2010 Powder at 長崎

2010年12月9日(木)
長崎ブリックホール 大ホール

18:00 開場
18:30 開演

今堀恒雄(Guitar)
小島良喜(Piano,Keyboard)
福田裕彦(Keyboard)
はたけやま裕(Percussion)

井上陽水
(Vocal,Guitar,Harmonica)

会場の物販で新作の『魔力』を買うとクリアファイルのオマケ付き。既に一枚は持っているし昨日は移動日を兼ねていた為買わずに済ませたが、結局今夜の開演前に新たに一枚購入してしまった。
井上陽水〜20101209弐
昨夜佐賀の場内を埋め尽くしたスモークは今夜の長崎のホールにもまた満ちて、だがロビーにまで立込めてはいない分まだ控え目だろうか。
佐賀で齟齬を感じた冒頭の声と楽器のバランスは、今日は大分改善された。昨日は「(音の)実存主義」などと穿ったことを書いたが、二日続きで改めて聴くとむしろより幻想的な世界を創り出そうとしている様に感じられた。1曲目の「この頃、妙だ」や陽水がギターを置いて謳う幾つかの曲などはベース無し、キーボード二人(及びギターとパーカッション)という(これまでの陽水のライブから見ると)一風変った編成によるアンサンブルを活かし、ねっとりとしながら強靭な音像を生み出していた。一方で陽水のギターが先導し核となる「弾き語り」に他のメンバーが被さってくる類の曲では、その音は気体であったり液体である風な感触で、絶えず不定形且つ流動的であり場内を焚かれたスモークの如く満たしたかと思うと、たった一筋の瀧の白糸の様に微かな気配のみ忍ばせたりした。勿論そのどちらでもありどちらでもない様な造りの曲、例えば「タイランド ファンタジア」の様にバンド主体でありつつ水の明滅を漂わせた曲もあり、昨夜も記した様にそれらが不規則なループに乗ってライブ全体に寄せ返す「波」を形成していた。

セットリストは佐賀とほぼ一緒だが一曲だけ、「白いカーネーション」が「もしも明日が晴れなら」に替えられた。その他終演後に貼出される「本日の演奏曲目」(通称「白パネ君」)には載らない部分として、佐賀では「断絶」の後に植木等の曲を取上げたが、長崎では「断絶」を唄う前に陽水が「高校時代に初めて作った曲」(曲名無し)を演奏してくれた。私個人としては初めて陽水を生で聴いたライブでいきなりこの曲を聴く幸運に恵まれてから幾度か耳にする機会があったが、こうした古い、文字通り名もない曲を照れながらも未だに時々披露してくれる陽水が嬉しい。
そういえば「ドレミのため息」の、あちらこちらの地名の出てくる歌詞の処で、昨夜は「佐賀で歌を〜」今夜は「長崎で歌を唄ってる」とそれぞれ置換えていた。もう30年近く昔に神宮球場で安全地帯とのデュオを行った時、曇りがちな空を見上げながら陽水は〜♪星が見えない 夜です〜と「なぜか上海」の出だしを唄った(原詞は〜♪星が見事な 夜です〜)駄洒落の様だが状況ひとつで的確な言葉遊びを陽水は今回に限らす、随所で見せる。「なぜか上海」と云えば今夜歌う前に「長崎に来ると必ず歌いたくなるんです」と語っていた。昨夜の佐賀でも殊に前触れも無く取上げていたが、やはり佐賀・長崎辺りは殊に大陸に近いからだろうか。その大陸の或る国家とは今穏やかでない局面にこの国は置かれているが、それについてはどう捉えているのだろう。多くの人が関心を寄せ何らかの言動に走る中、敢えて何も語らない処が彼らしい。彼の語録は数々あれど、人であれ国であれ具体的に言及したのは昨年の忌野清志郎逝去についてくらいではないか―などと云ったらさすがに極論か。
昨夜はやや延びの悪かった高音域も今夜は比較的よく出ていた様に思う。「虹のできる訳」のサビで一際高くなる処、一番ではファルセットで無難に終えたが二番では地声でそのまま唄い切った辺りが印象的だった。

ところで、今回のツアーで欠かさず取上げている「お願いはひとつ」、実は陽水なりのクリスマス・ソングであることを知る人は昨日今日会場に居合わせた人の一体何割だろうか。
しかしそれは決して華やかなクリスマスムードを祝う曲ではなく、派手な街並をシニカルな眼で見つめながら「こんな寒い、辛い季節は早く過ぎて行ってくれれば良いのに」と唄う望春の曲である。いつぞやの丁度クリスマス時期に被ったライブハウスツアーの折、アンコールでサンタの衣装を纏いながら「来年からクリスマスなんか無くなれば良いのにな」と捨て台詞を吐きつつ「赤鼻のトナカイ」を唄った陽水を思い出していた。


01 この頃、妙だ
02 娘がねじれる時
03 ミスキャスト
04 闇夜の国から
05 ドレミのため息
06 自然に飾られて
07 覚めない夢
08 真珠
09 タイランド ファンタジア
10 断絶
11 もしも明日が晴れなら
12 なぜか上海
13 お願いはひとつ
14 虹のできる訳
15 Just Fit
16 少年時代
17 長い坂の絵のフレーム

アンコール
18 氷の世界
19 招待状のないショー
20 積み荷のない船
21 いっそセレナーデ

井上陽水〜20101209参

「Tour 2010 Powder」はこの後東北に移動し岩手の北上と秋田における2公演で終了するが、つい先日来春2月から3月にかけて行われる「Tour 2011 Powder」の日程が発表された。
九州では福岡サンパレス及び熊本の崇城大学にて公演が予定されており、熊本はともかく福岡には出来ればまたチケットを入手し駆けつけたい。

尚、昨日書き忘れたが今回のツアーで陽水ファミリーの謂ば新顔として加わったはたけやま裕及び福田裕彦の各々のブログがあり、そちらの方でより適切なライブレポートやメンバー紹介、またメンバーがステージで使用する機材等の紹介が掲載されている。

本日はたけやま日和(はたけやま裕ブログ)
http://yaplog.jp/tatakiyama/

裕福バカデミア 〜YouFxxk BAKADEMIA〜(福田裕彦ブログ)
http://blue.ap.teacup.com/punipuni/
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2010年12月08日

井上陽水 Tour 2010 Powder at 佐賀

先週のアクロス福岡における坂本龍一×大貫妙子のコンサートに続き、本日は佐賀にて井上陽水を。福岡での公演当日、それまでの長い晴天を嘲笑うかの様な雨に苛まれた。その翌日は嘘の様にまた晴れて、その後は数日好天が続いたが、昨日の午後より再び崩れた。
今日は朝の内に雨が止んだが、終日不安定な空模様となり夕方頃からまた降出すらしい。自宅からの出掛け際、降られずに済んだことを幸運と云うべきかも知れない。


井上陽水 Tour 2010 Powder

2010年12月8日(水)
佐賀市文化会館 大ホール

18:00 開場
18:30 開演

今堀恒雄(Guitar)
小島良喜(Piano,Keyboard)
福田裕彦(Keyboard)
はたけやま裕(Percussion)

井上陽水
(Vocal,Guitar,Harmonica)

井上陽水〜20101208壱

ポツリポツリと雨粒が滴り始める中、会場に到着。開場までまだ10分程あったが、開くのを待つ客で既に長蛇の列が出来ていた。
18時ほぼ丁度にホールの扉が開き、受付でチケットの半券を渡しロビーに入ると、一瞬視界が怯む程の靄。それはホールの扉からも立込め、どうやら強烈なスモークを焚いているらしい。嘗て、在りし日のセルジュ=ゲンズブールの来日公演に足を運んだ時、開演と同時にステージ後方から押寄せたスモークを思い出させた。

開演予定時刻になり、場内アナウンスの後緩やかに客電が落ちた。照明が完全に消えるか否かと共に、微かなSEが響く。晩秋の虫の音の様な、鈴を振るわせる様な、ただの機械音の様な揺らぎを伴う通奏音。左袖からメンバーが出てきて所定の位置に着く。向かって左から、ステージ左寄りに小島良喜、今堀恒雄。右寄りにはたけやま裕、福田裕彦の順で並び、浅い弧を描く。鮎漁の小鷹網にも似た配置の要石を杭う位置にセンターマイク。そして演奏が始まる。
バンドとしての体裁を宿してはいるがベースの居ない編成は古のドアーズ、或いは陽水自身の楽曲における「Power Down」を想わせるが、そのいずれとも異なる質感の音である。サイケデリックな要素もあるが、むしろ「(音楽における)実存主義」と呼びたい手触りだ。だがそれは曲、或いは局面に応じて同じ人、同じ楽器が奏でているとは思えない程様々に姿を変えた。
メンバーによるインストに導かれながら左袖から井上陽水が登場。3本立てかけられたギターの中からお馴染みのギルドを選び、センターマイクの陰に設えられた椅子に腰掛けてギターを爪弾き、唄い始めた。陽水が座るまで椅子の存在に気づかなかったが、もうもうと焚かれたスモークの所為だったろうか。この日ギターは3本全てアコースティックで、ギルド、ギブソン、そして12弦と最近のツアーではいずれもお馴染みの楽器ばかりだが、12弦は結局最後まで使われなかった。過去のツアーで12弦というと「最後のニュース」かもしくは「新しいラプソディー」で主に使われていたが、今夜はそのいずれも歌われなかった為か。
1曲目「この頃、妙だ」は、陽水が嘗て「(精神的な部分では比較的タフな自信があったのに)おかしくなりかけたことがあった」時の自分に材を得て書いた作品だというが、そんな或る種危ない曲を冒頭に持ってくる意味は何だろう。ツアー副題の「Powder」と云い、ツアーと共にリリースされた新作アルバム『魔力』及びそのジャケット写真と云い、「妖しさ」以上に「怪しさ」が滲む。ひょっとして今陽水自身の精神面、或いは肉体において何らかの異変をきたしているのではないか?
だが4曲程立て続けにリズミカルな曲を歌い、漸く挨拶のMCを入れた陽水はこれまでと変らず、頗る元気そうだった。いつもの様に張りのある、快活ながら深みのある声だ。肝心の歌の方はこのMCが入るまで、力感はあるが他の楽器と馴染んでいない様に感じたが、それは今回に限らず割と毎度のことだ。恐らく力があり過ぎ、PAがその最適の加減を掴み切れないのだろう。プログラムが進むに従ってそれは改善され、当初の違和感も修正された。
井上陽水〜20101208弐
大まかに云えば、今回は「叫ばないライブ」。勿論曲によっては持ち前の馬力でシャウトする場面もありはしたが、例えば1曲強奏すればその後は2、3曲「抜き」の歌が続いたり、それは全体に(主にアレンジにおいて)剛���柔���剛の流れであるのに被さりながら、寄せては返す波の紋様を描き出していた。
それは5曲目まで使用した椅子から次の「自然に飾られて」で一旦立上がりながら、8曲目の「真珠」で再び席に着いたこと、終盤は再度立ち姿勢に移る抑揚と、7曲目「覚めない夢」、14曲目「虹のできる訳」そして17曲目の「長い坂の絵のフレーム」でギターを置き、殊に前2曲はハンドマイクで唄うスタイルにも意識が見てとれた。アンコールは最初の「氷の世界」を除き、ギター無し。そして一層囁く様な、呟く様な歌い方が際立った。「積み荷のない船」など特に、一音毎に表情、強弱、更に色合いまで変化する声色で、あたかも調整によって音色の変るクラシックの古楽器の如く音程ひとつの持つ響きの違いを教えてくれる様だった。
曲数は少な目で、より伝えたい音を映すものをと選んでいるのだろう。日によって曲目に替りがあるのは生身だからに他ならない。この構成が果たしてどれだけ成功を収めているのか、今日聴いた限りでは若干の疑問もあるが、消え入る様に秘めやかな余韻と共に印象深さは培われた。

バラエティー好きな陽水らしいお遊びもあり、今堀恒雄を従えての弾き語り「断絶」を歌った際、軽妙なトークで繋いで植木等の〜♪ハイ ソレマデヨ〜を番外で取上げるなど、随所に笑いの零れる場面があった。しかし「長い坂の絵のフレーム」や「いっそセレナーデ」など、詠嘆を醸す曲の合間には感極まって声のかすれる処など、本来の多感な陽水を垣間見せて此方まで目頭が熱くなった。

井上陽水 Powder Tourの面々は明日、長崎のブリックホールでも公演を行う。我々は今夜の内に長崎に移動し、明日に備える予定だ。
そういえば終始会場に立込めたスモークを見て終演後、相方が「さすが『Powder』だね」と上手いことを云った。

井上陽水〜20101208参

01 この頃、妙だ
02 娘がねじれる時
03 ミスキャスト
04 闇夜の国から
05 ドレミのため息
06 自然に飾られて
07 覚めない夢
08 真珠
09 タイランド ファンタジア
10 断絶
11 白いカーネーション
12 なぜか上海
13 お願いはひとつ
14 虹のできる訳
15 Just Fit
16 少年時代
17 長い坂の絵のフレーム

アンコール
18 氷の世界
19 招待状のないショー
20 積み荷のない船
21 いっそセレナーデ
posted by 紫乃薇春 at 23:27 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2010年11月19日

「魔力」到着

本日Amazonより、井上陽水の新作「魔力」到着。いや昨日の内に届いていたか。昨晩は怠けてポストを覗かずにいた。宅配業者のメール便は便利だが、黙って投函してゆくのでうっかり気付かず暫く経ってしまうこともある。尤もそれを云ったら普通郵便など悉く迂闊の対象になってしまいかねないが。
戯れ言はともかく、梱包を解いて早速「魔力」を聴いた。何とも挑発的なアルバムタイトルでありジャケットの写真だ。或る意味ベタとも取れる表題だが、何を想って付けたのだろう。ジャケットはお馴染みのサングラスを掛けた井上陽水の顔のアップ。それだけなら過去にもあるが、ひょっとこの様に尖らせて開けた口からは実物かエフェクトか、白い煙らしきものが上下に漂っている。煙草の煙とも取れるが、或いは…?因みに現在敢行中の全国ツアーの副題が「powder」。併せて捉えればそこはかとなく意味深である。
思わせ振りに見せておいて実は「何も考えてないんですよ」と煙に巻くのが陽水の「らしさ」でもあるのだが、するとあの煙らしきものはそういう暗喩だろうか。ただもし突然に或る種の報道を知ることになってもショックを受けることの無い様、心しておくことにしよう。
因みに「魔力」とはアルバム1曲目に収められた「覚めない夢」に登場する歌詞である。

収録曲はその「覚めない夢」、昨年シングルリリースされ上半期のツアーでもアンコールのハイライトとなった「Love Rainbow」とその併録曲「LOVE LILA」その他タイアップされた「赤い目のクラウン」「MAP」等を含む全10曲。

01 覚めない夢
02 BLACK SISTER
03 69(SIXTY NINE)
04 世界はミステリー
05 赤い目のクラウン
06 TWIN SHADOW
07 G-ROCK
08 MAP
09 Love Rainbow
10 LOVE LILA

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2009年12月22日

井上陽水 40th Special Thanks Tour 千秋楽

サンパレス〜20091222

井上陽水コンサート
“40th Special Thanks Tour”

2009年12月22日(火)
福岡サンパレスホール
開場/18:00 開演/18:30

井上陽水(Vo、G、Harmonica)

今堀恒雄(G)
今剛(G)
小島良喜(Keyboard)
美久月千晴(B)
山木秀夫(Ds)

我那覇美奈(Chorus)
藤田真由美(Chorus)
Rie Fu(Chorus)

井上陽水〜20091222

今年芸歴40年を迎える井上陽水が自らを祝い、また全国のファンに感謝を伝える趣旨のツアーも今日の福岡で遂に最終日を迎えた。
一身上の都合により関東から九州に移り住んだ為、下半期ツアーの東京公演は諦め福岡での2日間に託したが、結果井上陽水の“御当地”ライブ、そしてまたこのアニバーサリー・ツアーの楽日に立会うことが叶い喜ばしいことだ。ツアー最終日といえば東京公演がこれまで殆どだった様に記憶しているが、今回福岡を選んだのはやはり40年前のデビューと共に巣立った土地だからだろうか。勿論それからツアーの度に福岡での公演は行っていた様だし、地元と仲違いをして飛出したという訳でもないらしくプライヴェートでは再三里帰りをしている様だが、想いの上では今回「凱旋公演」と云えるのかも知れない。

今宵も定刻通りのアナウンスと共に開演。セットの構成は昨夜同様「新しいラプソディー」で幕を開ける流れだが、途中の曲目に若干の変更があった。
MCの内容は今日も40周年であることと福岡時代のことが主だったが、弾き語りの際「昨日云い忘れましたけど」と能古島に行った時のことを話し、「能古島の片想い」を。この古い名曲を生で聴けるのは福岡公演ならではの恩恵だろう。忌野清志郎追悼に寄せた「帰れない二人」の後、今夜は「カナリア」を爪弾いて聴かせた。
今ツアーのいつだかの公演で「自然に飾られて」を謳う際「(これまで数多の曲を書いた中で)謳いたい気分になる曲とそうでもない曲がある。これはその中でも最近殊に謳いたい曲」と語ったそうだが、今宵はその「自然に飾られて」に替えて「移動電話」を、「作った曲の95%は殆ど知られていないと思うんですが、そんな曲を今日は聴いて頂こうと思いまして」と語りながら謳った。確かに、「少年時代」や「傘がない」の様な所謂代表曲と比べたら知名度はやや劣るだろうが、アルバム『永遠のシュール』に先駆けてシングルリリースされた曲なのであってファンを自負する者は誰でも知っていそうなものだが如何だろう。尤も殆どの曲のイントロを聴いただけで曲名が反射的に口をついて出るというのは実際はそう居ないのかも知れない。
その後は昨晩と同様の流れでプログラムが進んだが、毎回感じてしまうのだけれど曲が進む毎目に映る風景も変ってゆく。勿論照明は曲毎に違う趣向を込めていたしアレンジも変化に富むが、何より陽水自身の声が一曲一曲変幻してゆく。その声は豊かな声量に独特な含蓄があり、色彩も景色も宿している。「七色の声」という言葉があるが、七色どころか微分の変化だ。
終盤の「限りない欲望」から「氷の世界」、「最後のニュース」そして「少年時代」と僅か十数分の間なのに、まるで数年の歳月が流れたかの様な感覚に囚われる。それが本プログラム18曲、アンコールを含めて22曲。三十代或いは四十代の頃に比べれば一本の公演における曲の数は減ったが、彫りの深さは遥かに増して物足りなさは感じさせない。これこそが40年続けてきた重みというものか。
今年ひとつの節目を迎えて当人も感慨深い想いは確かにあるだろう。随所で陽水自身が楽しみながら演じていることを感じさせながら、最後の曲「結詞」では涙ぐんでいる様に見えた。

全体に昨日よりPAの具合が良く、冒頭から終始各音の分離が際立って井上陽水の声も聞き取り易かったのが良かった。当人の調子も昨夜より上がっている様で、歌声は勿論、語りの間も潤って感じられた。

これで今年のツアーが終り、陽水は次のツアーまでこれからしばし休息を取るだろう。
同行したメンバー、またスタッフの方々はまだまだ忙しい年の瀬に違いない。
井上陽水40周年の祭を支える一員として選ばれたことが彼等、彼女達の胸にどう刻まれてゆくのだろうか。

白パネ君〜20091222
posted by 紫乃薇春 at 23:10 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2009年12月21日

井上陽水 40th Special Thanks Tour in 福岡(初日)

富士山〜20091221

昨夜はStar Pine's Cafeにて黒百合姉妹のエキセントリックなクリスマス・ライブを堪能したばかりだが、その余韻による二日酔いを弄ぶ間もなく今日は真昼の新幹線に飛び乗り東京から一路博多へ。今宵明晩と40周年を飾る井上陽水ツアーの締め括りに立会う為だ。
40周年は大したものだがそれならば更に切り良い50周年をこそ―との想いもあるが、まだ10年も先のことでもあるのでさておくとしよう。

移動する新幹線の車窓から、真に久々にこれ以上ない程観望日和の富士が見えた。富士山と云えばつい先日、著名人が関与したというだけでメディアに大きく取上げられてしまった痛ましい事故が発生したばかりだが、人界の喜悲など素知らぬ威容で今日も聳えている。勿論、亡くなった方々には哀悼の意を表したい。
名古屋を出て関ヶ原付近に差掛かる頃、空模様は一変して一面の雪景色となった。福岡の天気が気になるが、相方から届いたメールによれば今日の九州北部はやや曇りがちの晴れとのこと。
心配した伊豆を中心とする頻発地震の影響もなく、新幹線は通常通り運行してくれた。


井上陽水コンサート
“40th Special Thanks Tour”

福岡サンパレスホール
開場/18:00 開演/18:30

井上陽水(Vo、G、Harmonica)

今堀恒雄(G)
今剛(G)
小島良喜(Keyboard)
美久月千晴(B)
山木秀夫(Ds)

我那覇美奈(Chorus)
藤田真由美(Chorus)
Rie Fu(Chorus)

先に着きチェックアウトを済ませていた相方とJRの博多駅で合流し、荷物を置く為一旦ホテルに立寄った会場に向かった。
サンパレスに着くと開場にはまだ20分程の間があったが長蛇の列が形成されていた。建物の外で待つということを思えば、冷込みは厳しいが天気が回復してくれて本当に良かった。
予定時刻の18時30分きっかりに間もなく開演を告げるアナウンスがあり、5分程の間を以て消灯。
袖からメンバーが次々に登場し、最後にやや遅れて井上陽水が現れると満場の拍手。陽水の背後にはギルドとギブソン、それに12弦ギターが置かれていたが、まず初めに12弦を手に取り「新しいラプソディー」で幕を開けた。
このオープニングは今ツアーにおいて既に釧路などで行われているとの話を聞いており意表を突かれることはなかったが、「Happy Birthday」で始まった上半期のツアーとほぼ同じ構成のセットで行われた会場もあると聞くので、ひと味異なるセットを聴けて良かったと思う。「Happy Birthday」の幕開けは祭典の始まりという雰囲気だが、「新しいラプソディー」はその曲名通り新たな創造の始まりを予感させる。
続く「嘘つきダイヤモンド」では早くも空間の捻れが現出、ライブはまだ始まったばかりで油断している観客をその捻れによって生じた裂け目に喰らい込む。
だがそこでMCが入り、会場は一転和やかな空気で満たされる。福岡は謂ば井上陽水にとっての御当地であり、語りの内容もこの40年を振り返りつつ博多で過ごした思い出を交えたものが多かった。最初の語りはいささか早口であったが、場内に漂うそこはかとなくまろやかな気配は「地元」ならではなのだろう。
「闇夜の国から」で溌剌と船を漕出し「とまどうペリカン」で一呼吸入れると、バンマスの今堀恒雄を残してメンバーが下がり弾き語り。
ここでも福岡でのことをネタにしながらデビュー当時に書いた曲として「断絶」を。キーボードの小島良喜を加えた後、上京して巡り合った掛替えのない“仲間”である忌野清志郎とのことについて触れ、追悼と共に「帰れない二人」、更にそのシングル盤のA面に選ばれた「心もよう」を続けて謳った。この辺り弾き語りにしてはややそそくさとした印象を受けたが、「帰れない二人」で浮かんでくる清志郎の逝去に募る涙を押し止めようとする陽水の心の動きそのままだったかも知れない。
井上陽水〜20091221
メンバー全員が戻り、アルバム『Blue Selection』に近いジャジーなアレンジで「飾りじゃないのよ 涙は」。「リバーサイド ホテル」でエッジの利いた鋭いヴォーカルを聴かせた後は今堀恒雄の情緒豊かなガットギターのソロに誘われて謳う「ワインレッドの心」。
再びMCが入り、「浪人時代殆ど勉強はしなかったが花見をしたりデートをしたり、遊びに出たり…」と自己批判の様でいてそうでもない話の後、青春の如く「自然に飾られて」を謳歌した。
ここでギターを置き、マイクに差しで向かい合う「招待状のないショー」の香りは絶品。こういうたおやかな(比較的)初期のバラードを今でも歌い続けてくれる陽水が愛おしい。昨年還暦を迎え世間では「翁」の域に差し掛かった人であるのに、未だに少年の心を失わないのだろう。
ここからプログラムは終盤を迎える。「クレイジーラブ」のダイナミックなヴォーカルに続き「限りない欲望」で歌詞の内容に意味深く呼応する鬼気迫る声色。「氷の世界」でバンド諸共最高潮に達した後は12弦を抱え「最後のニュース」そして「少年時代」でノスタルジックな終焉を迎えた。
私事で恐縮だが、ここでまたしても涙腺が決壊してしまった。「最後のニュース」でざわめきが起こり「少年時代」で落涙というのはどうやら既に「パブロフの犬」と同様らしい。

本プログラム終了の後、上半期のツアーと同じ編集VTRが流されてアンコール。
最初の曲は「Happy Birthday」で、ここから先はお祭りだと云わんばかりだ。「夢の中へ」で更に華やぎ会場は総立ちに。しかし「傘がない」のイントロが始まると共に波を打つ様に皆着席する辺りが井上陽水のコンサートらしい。興醒めではなく、よりじっくりと耳を傾けたいのだ。
「傘がない」のうねりに身を委ねながら今夜はこれで終りだろうと思っていたが終らない。かすれた音色でギターを操りながら陽水が歌い始めたのは「結詞」。80年代には幾度か聴いたが久しく封印していた菅のある最高傑作のひとつを今、漸くまた紐解いた。この上ない終演。

PAに若干の難が感じられ、ヴォーカルを含む各楽器の分離が今ひとつに聞こえたが、ツアー最終日となる明日は改善されることを望む。

白パネ君〜20091221
posted by 紫乃薇春 at 23:39 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2009年07月11日

田川巡礼

週明けに関東を離れてからこの数日、本当にただ休養の為だけに費やした様なもので、宿から外出したのは食事以外殆ど無かった。
元々今回は「観光は二の次で」というつもりでいたし、旅先でのこんな怠惰な過ごし方も決して悪いものではない、と思う。出来ることならこのままひと月、いや半年くらいは現地の人の振りをして、何もしない生活を送れないかとだらしない考えを起こしてしまう。
しかし三日四日と骨休めに専念していると、やはり何処かを巡っておきたい欲に駆られるものだ。
以前から足を運んでみたいと思っていた井上陽水縁の地・田川、殊に陽水の歌碑の建つ通称・井上陽水公園(正式名称は「憩いのひろば」)まで出掛けることにした。

今回の出先は身内と一部の人以外には伝えていなかったが、五月連休同様に博多まで来ている。前回は博多どんたくの時期だったが、奇しくも今回は博多祗園山笠の時期にぶつかった。
とはいえ飾り山を幾つか見て回っただけで祭が目当てではないので、本番を前に博多を発つことになるだろう。

博多駅から福北ゆたか線という列車に乗って新飯塚まで。後藤寺線に乗換えて田川後藤寺まで行き、更に平成筑豊鉄道に乗換え糸田駅で下車した。
博多を出て程なく賑やかな街並が遠ざかり、一抹の寂しさと不安が押寄せた。トンネルを抜けると、博多からものの十数分とは思えぬ深い山間。更に進んで中継の飯塚辺りまで来ると思いの外開けた平地に街が広がっていた。
乗換えて後藤寺まではまた山を越えてゆく。後藤寺が近づき現れたのはセメント工場か何かだろうか。嘗ての炭坑の町だった時代を偲ばせる様な雰囲気だが、炭坑業は今は全て廃業してしまったと聞く。

糸田駅案内図〜20090711

糸田駅で降りると小さいが綺麗な駅舎。待合室と美容院が併設されている。嘗ては改札口に駅員が居たのかも知れないが、現在は無人駅の様だ。目的地までの詳細な地図を印刷してくるのを忘れたので、駅の案内図を見ると「陽水歌碑」とちゃんと載っている。案内図を写真に撮っておいたが、しかし大雑把な図なのでそれを頼りに歩いて行ったら案の定途中で迷ってしまった。
道沿いにはさして広くはないが田んぼがあり、陽水の歌詞が〜もうすぐだね 君の家まで〜と脳内でかの声で流れてきたが、まずは目的地を探し当てるのが先だ。
結局やや外れた辺りを暫くうろうろした後、通りすがりの住民の方に「憩いのひろばは何処ですか」と訊ねると「ああ、井上陽水の」とすぐに察して場所を教えてくれた。
陽水歌碑〜20090711
辿り着いた公園は住宅地の中に、それと知らなければ見過ごされてしまう様な佇まいでひょっこりとあった。小さな公園なので歌碑を探すのに惑うこともない。
刻まれた詞は「夏まつり」。「少年時代」でも「傘がない」でも「心もよう」でもなく、ファンの人以外は知らない様な地味な曲が選ばれたのは何故だろうと思ったが、詞の内容が故郷の町のお祭のことを歌ったものだから、という半ば町おこしを兼ねた建立の経緯を偲ばせるものだった。
刻まれた詞は嘗てのレコードに添えられた歌詞カードの、井上陽水自身による金釘流の文字がそのまま採用されており横書き。それは別にとやかく語る処ではないが、ファンならひとつどうしても突込みを入れておきたい箇所があった。他の方のブログでも指摘されていたが、アルバム「断絶」歌詞カードより―と記された処、この曲(夏まつり)は『断絶』ではなくセカンドアルバムとなる『センチメンタル』に収められた曲であり、当然歌詞もそちらに載っている。
陽水歌碑を拝み暫く公園で寛いだ後、来た道とは異なる道を歩いて糸田駅に戻り田川後藤寺に出た。

外出した時間が随分ゆっくりだったので、夕方というよりは夜、という頃。だが夏至からまだひと月足らず、九州は関東に比べて日没も遅いので空はまだ明るい。同行した相方の顔に疲労の色が滲んでいたが、ここでもうひとつ我儘を聞いて貰った。田川後藤寺の駅から近くに井上陽水の出身校・西田川高等学校があるので立寄り見てみたいというものだ。
折しも今年は井上陽水の芸能生活40周年。今までそうした節目を飾るイヴェントに余り積極的でなかった陽水自身が今年はツアーにその名目を冠し、新曲の為に公演毎のコーラス隊を当日のお客さんから募るなど盛上がっている。末席とはいえファンを自負する者として、このくらいのミーハーな行動を偶にはしても赦されるのではないだろうか。
後藤寺駅から西田川高校まではアーケードが延び、生憎の雨模様ではあったが殆ど濡れずに行かれたのが有難かった。
しかしファンにとって憧れのひとつとは云え「巡礼」を前提とした場所ではない。余りに付近をうろうろし過ぎておまけに写真まで撮って、不審者扱いされたら割に合わない。いや実際に職員と思しき男性の一人が途中で気づいたのか、校舎の窓を開けこちらを見ていた。
学校と付近の方の迷惑ということも考え、すぐにその場を立去った。

西田川高校〜20090711

当初今夜の宿泊分までの予約を宿に入れておいたが、延泊して月曜日に帰ることにした。明日もう一日は博多に滞在出来る。
再び寛いで部屋に籠ってしまうかも知れないが、目覚めと天候が良ければ今度こそ能古島に渡ってみたいもの。それが叶えば井上陽水のアニバーサリーに便乗した巡礼もひとつ達成感を得られるに違いない。

末筆になるが、本日7月11日は私の相方の誕生日である。おめでとう。
いつも私の独善的な振舞いを時には叱りながら支え続けて有難う。我身を深く反省すべき処懲りない性格で、心労も並大抵ではないだろう。
これからも度々苦労をかけてしまいそうだが、今日は何より感謝と労いの言葉を贈りたい。
posted by 紫乃薇春 at 22:44 | Comment(0) | 音楽<井上陽水>

2009年07月03日

井上陽水 40th Special Thanks Tour
at YOKOHAMA 2009.07.03

2009年7月3日(金)
神奈川県民ホール

井上陽水〜20090703壱

昨日に続き県民ホールにて、井上陽水公演である。

井上陽水(Vo、G、Harmonica)

美久月千晴(B)
山木秀夫(Ds)
今剛(G)
今堀恒雄(G)
小島良喜(Keyboard)

我那覇美奈(Chorus)
藤田真由美(Chorus)
Rie Fu(Chorus)

(メンバー紹介の順)

昨夜は19時にブザーが鳴りその5分後に客電が落ちたが、今夜は更に早く18時55分にブザーが鳴り、19時きっかりに客席の照明が消された。最近の陽水の、この変に引張らずにほぼ予定時刻通りに演奏を始める律儀さが好きだ。リハーサルではサウンドのチェック等厳しく行っているのだろうけれど、いざ出番となれば勿体ぶらない。以前も同じことを書いた様な気がする。それだけ今のメンバーやスタッフを信頼しているのだろうし、また陽水の信頼に応えられる優秀な人材が揃っているのだろう。
セットリストはオープニングの「Happy Birthday」を初め昨夜と大差ない様であるが、実際は4、5曲もの入替えがありそれだけでも二日間聴けた甲斐があったというものだ。
出だしのPAのバランスが昨夜より向上しており、陽水の声が聴き取り易くなったことも大きい。その分コーラス隊がやや抑え気味に感じられるきらいもありはしたが、要所での仕事はしっかり果たしていた。

始まりから5曲目までの流れは昨夜と一緒、MCの中身も大差なかったが、序盤の弾き語りコーナーで今夜は(ホワイトボードのセットリストには載らなかったが)陽水が高校時代に初めて書いた無題の曲、そして短縮バージョンではあるがデビュー作「カンドレ・マンドレ」を披露した。この2曲はやはり一緒にやってくれるのが嬉しい。今夜はこの曲をまだ生では聴いていないという熱狂的なファンの方の一人が来ていた筈で、漸く溜飲を下げたのではないだろうか。私も、少なくとも揃って聴くのは陽水のライブを初めて聴いた1981年暮のツアーの追加公演以来だ。
弾き語りの「断絶」と「帰れない二人」のヴォーカルも昨夜より状態が良かった。今夜はPAだけでなく陽水自身の調子も出だしから昨夜より良好だったと思う。却って好調時ならではの綻びも処々にあったのが玉にキズだろうか。しかし清志郎を想って歌う「帰れない二人」は歌というより悲鳴に近い迫力だった。
(追記:このレポートはライブの帰り道における走り書きでかなり端折った感が否めずここでも書き損ねたが、とある友人のレポートを読んで思い出したことをひとつ。
「断絶」を歌う前に美空ひばりの「お祭りマンボ」、クレイジーキャッツの「ハイそれまでヨ」を例として口ずさみながら「断絶」を書くに至った経緯を明かしていた。
それによれば当時「途中で曲調のガラリと変る曲にあこがれていた」そうで、それが「断絶」の展開、そして歌い方にも反映しているそうだ)
昨夜の「ワカンナイ」に替り今宵は「新しいラプソディー」を。いつもなら一度しか出番のない12弦ギターが今夜は終盤の「最後のニュース」と合わせて二度使われたのも珍しかった。
中盤のアカペラコーナーで昨夜は「ぞうさん」「桃太郎」の歌を挿み「赤い靴」と「黒田節」を披露したが、今宵は「赤い靴」と「炭坑節」。合間には「めえめえ児山羊」と「通りゃんせ」が口ずさまれた(「めえめえ児山羊」はホワイトボードにも掲載された)。
「通りゃんせ」を歌い進めながらふっとまた「めえめえ児山羊」の一節に戻ってしまう辺り、今夜の陽水が抜群に乗っていることを窺わせた。

井上陽水〜20090703弐

終盤は「ドレミのため息」に替る「移動電話」からスタート。自身の40周年について再三触れるMCの中で「当時は携帯電話もなく…」と語った辺りからこの「移動電話」が脳裏をよぎったが、まさか本当に聴けるとは思わずまた涙腺が弛む。
因みに「移動電話」も「ドレミのため息」もアルバム「永遠のシュール」からの楽曲である。
「クレイジーラブ」から「少年時代」までは昨晩と同じ流れ。「最後のニュース」の三番の「世界中の人と愛と金が入り乱れて いつか混ざり合えるの〜」という処、昨晩はオクターブをずり上げ絶叫していたが、今夜は淡々と歌い上げていた。

アンコールに入り最初の曲は「アジアの純真」から「渚にまつわるエトセトラ」に替えられた。横浜が港町であることに思い至っての変更だろうか。私としては両方聴きたい気がしたがそれはなかった。
八戸の時はアンコールの最初にまず「Love Rainbow」で女声コーラス隊にひとしきり謳わせていたが、その後次第に導入としてまず1曲、という流れになりつつある様だ。「(横浜のコーラス隊は)シャイだけれど、(最後に揃ってのお辞儀など)出る処は出てしっかりアピールしている」という風な感想を陽水が漏らした。
そしてメンバー紹介―昨夜は向かって左端のキーボード・小島良喜からだったが今夜はベースの美久月千晴から始める変則ぶり。「夢の中へ」で一階席総立ちの後は「傘がない」で今宵も締め括り。八戸では「いっそセレナーデ」だった。今回のツアーでは「いっそセレナーデ」をラストに歌うことが多く、確かに素晴らしい曲ではあるが、最後は「傘がない」を聴きたい今の私の気分をこの二日間叶えてくれた陽水に感謝。
そして機材席を開放し追加シートを用意してくれたスタッフ、県民ホール、更にその情報を伝えてくれたe+に心より感謝したい。

コンサートが終り帰り道は雨。曲とは違い傘は持参した私。
自動車の照明と中華街のネオンに濡れた路面が光る様子を面白く眺めつつ、石川町の駅まで余韻に浸り歩いた。

【演奏曲目】
01 Happy Birthday
02 青空、ひとりきり
03 闇夜の国から
04 Make-up Shadow
05 とまどうペリカン
(初めての曲(無題)/カンドレ・マンドレ)
(お祭りマンボ/ハイそれまでヨ)
06 断絶
07 帰れない二人
08 飾りじゃないのよ 涙は
09 リバーサイド ホテル
10 ジェラシー
11 新しいラプソディー
12 赤い靴
13 めえめえ児山羊
(通りゃんせ)
14 炭坑節
15 移動電話
16 クレイジーラブ
17 限りない欲望
18 氷の世界
19 最後のニュース
20 少年時代

アンコール
21 渚にまつわるエトセトラ
22 Love Rainbow
23 夢の中へ
24 傘がない

井上陽水〜20090703参
posted by 紫乃薇春 at 23:37 | Comment(1) | 音楽<井上陽水>

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