2013年10月03日

TATSURO YAMASHITA Performance 2013 at NAGASAKI (セットリスト有・ネタバレ注意)

TATSURO YAMASHITA Performance 2013

2013年10月3日(木)長崎ブリックホール
OPEN 18:00/START 18:30

【注意書】
随所に演奏曲名を記している他、文末にセットリストを載せているので、これから同ツアーの公演を聴きに行かれる方、殊にネタバレを好まない方は閲覧御注意を。

山下達郎〜20131003

昨年の3月以来およそ1年半振りとなる、山下達郎の長崎公演。前回は「BIG WAVE」のテーマから始まったステージ、今年は『僕の中の少年』の頭を飾る「新・東京ラプソディー」で幕を開けた。難波弘之氏の弾くピアノのリズムがざわめきの残る場内に響き渡り、不揃いだった客席の息遣いが次第に合わさり始める。生じた一体感を背負って連れ去るかの様に疾走する「SPARKLE」のギター、山下達郎ならではの骨太のカッティング。3曲目の「LOVE SPACE」まで休みなしで演奏された。

山下達郎は今年2月に還暦を迎えたそうで、別段59歳時分との変りなどない、と云いながらもそれとなく節目を匂わせる。どの曲も(彼自らMCで云う様に)発表当時のオリジナル・キーのまま歌われ、歳は取ってもまだまだ元気、現役であることを強く訴える。但し、高音が連続する「LOVE SPACE」の一際高い声が要求される部分では地声の延長でなくファルセットに切替えるなど、微妙に年齢を感じさせる場面もあった。
この曲のスタジオ録音は若さ漲る達郎の声が正直苦手で、むしろ年輪を刻んだ今の声で聴くのを楽しみにしていたが、裏声がやや痩せて聞こえ残念。とはいえ総じて見れば随所に凄みを感じる健在振りで、癇に障る程の歌の上手さや声量も好みを超えて未だ圧倒的であるのは間違いない。
今年はまた、アルバム『MELODIES』の発売30周年、及び『Season's Greetings』発売20周年に当たる年でもあり、両作のリマスター盤発売に伴ってその2枚からの選曲、殊にやや地味ではあるが充実した選曲が目立ち、取分け前半は達郎曰く「(昨年発売の3枚組(初回プレスは4枚組)ベスト盤)『OPUS』を聴いて勉強してきた一見のお客にとっては」恐らく知らない曲だらけで申し訳ないけれども、「身の不幸と思って」頂くしかない、とも。しかし、その時一番やりたいこと、最も伝えたいメッセージを込めた作品を妥協なく発信するのは、表現者としてあるべき、好ましい姿勢だと思う。
尤も昨年のツアーで語っていた「ライブハウスでやりたい」案件はスタッフから「(収容人数の関係で)お客さんいじめだからやめて」と云われ未だに実現していないそうで、押しも押されもしない(風に見える)山下達郎の様な大御所であっても全てが思いのまま、という訳ではないらしい。

『MELODIES』は山下達郎最大のヒット曲「クリスマス・イブ」や一時期お茶の間を席巻した「高気圧ガール」など著名な曲が収録され耳に馴染みの良いアルバムであるが、一方でライブでは殆ど演奏されることのない作品も幾つか含んでいる。この日取上げられた「あしおと」や「ひととき」などもそうで、アルバム発売当時のツアーでやって以来実に30年振りとのこと。続く「スプリンクラー」も同時期の作品だそうだがアルバムには入らず、当時はシングル・リリースのみだったらしい。その後ベスト・アルバム『TREASURES』に収録の後、『OPUS』にも改めて収められた。上記2種のベスト盤に収録され、またファンの間での評価も高いと聞くので当然ライブでも定番なのだろうと思っていたが、これもまた当時のツアー以来30年振りの陽の目とのこと。
私が九州に移り住んだ頃、達郎ファンである家人の車には『TREASURES』か『FOR YOU』のどちらかが必ず入っていて、この「スプリンクラー」も繰返し耳にした。車で聴くのは雑音の海を泳ぐのと同じで致し方ないのだが、当初は「ピンピンピンピン、ピンピン」という大正琴(恐らく)の撥音ばかりが鼓膜に響き、正直それが耳障りで苦手な曲だった。或る時、静かな環境で偶々この曲をヘッド=フォンで聴き、初めてそのアンサンブルの全貌に触れた。楽曲のサウンドには並ならぬ意識を持つ山下氏のこと、多くの、というより殆どの曲が一辺でない重層的な響きを備えているが、コード進行とそれに伴うベースライン及びリズム・パターン、そして被さる主旋律また対旋律が各々これ程有機的に応じ合う曲は実に稀である。極端でもなんでもなく、各音が見渡せるか否かで主旋律が全く違うメロディーに聞こえる程、この作品の編曲は重要である。そこで漸く大正琴のあの音の必要性、必然性に合点がいった。
以来山下達郎の楽曲の中でも殊にお気に入りの作品の一つとなった「スプリンクラー」だが、今回生演奏でイントロから歌の冒頭を聴いただけで号泣するとはまさか思わなかった…どうやら自身の思う以上に聴きたかったらしい。
客席から舞台に向かって右手に陣取る難波弘之氏のキーボード群、左手に構える柴田俊文氏のキーボード群の他に、ステージ前方右手(難波氏の手前)に置かれたキーボードが開演前から気になっていた。誰がどの曲で弾くのだろうか?と思っていた処、9曲目の「FUTARI」で達郎自身によって用いられた。まだライブ前半でメンバーを伴っての(しかも厚みのある)演奏だが、何故か弾き語りに聞こえる不思議。ここでのヴォーカルはこの日一番の輝きに満ち溢れていた。

山下達郎〜20131003

『Season's Greetings』は所謂クリスマス・ソングを集めたアルバムで、今回は中盤のアカペラも同アルバムから「My Gift To You」と「Bella Notte」、そして服部克久氏編曲のストリングスに載せてジュディ=ガーランドの「Have Yourself A Merry Little Christmas」を情感たっぷりに歌った。
実の処今はまだ10月に入ったばかりで世間はハロウィンまみれ。季節外れのクリスマス・ソングも「案外良いものだな」とほくそ笑む次第なのだが、これが師走に入りツアー終盤、殊に最終24日の中野サンプラザともなればシーズンも真只中。宴の後は外の寒気も心地良く、居合せた人々は皆その周りだけ違う時間をたゆたう様に幸せの気配を漂わせていることだろう。無理を承知で行ってみたい気分になったが、既にチケットは完売してしまった様だ。

後半は珍しく(?)政治の話を少し含ませてから「DANCER」。続く「希望という名の光」は昨年同様今回もメドレーで、岡林信康の「今日をこえて」そして「蒼氓」の一節へと繋いでゆく。
山下達郎公演の伝統行事の一つ、「LET'S DANCE BABY」における客席からのクラッカーは、昨年より多く鳴った様に聞こえた。前回に続き私もまた便乗したし、こういう楽しみ方は勿論良いと思うが、明らかにフライングの人、用意はしたがタイミングがわからないのかは恐る恐るか何拍も遅れて鳴らす人、余りにも不揃いなのが気になった。クラッカーが使われだしたきっかけは元の音源にあるので、再度『GO AHEAD!』なり『OPUS』なりを聴いてから紐を引いて欲しい。
「LET'S DANCE BABY」からは終盤のクライマックス、「ボーナス・トラック」と宣言してからKinKi Kidsに提供した「硝子の少年」そしてスタンダード・ナンバー「I Got A Woman」を続けて歌い盛上げる。ふと気づくと場内はいつの間にかほぼ総立ち。ノリが良いといって猫も杓子も立上がれば良いというものでもないだろうが、山下達郎の醸すグルーヴは只では済まず、皆足腰が疼いて堪らないのだろう。
「アトムの子」は漫画好きな山下氏から故・手塚治虫へのトリビュート・ソング。この曲もメドレーで「アンパンマンマーチ」を歌い、何故?と思ったが、アンパンマンもまた“アトムの子”なのだ。日本は手塚治虫を体験して以降その影響を一抹でも受けずに育ったものは皆無だと云われるが、それ以前に「アンパンマンマーチ」は優れた名曲でもある。

怒涛の「アトム」の後寛いだ気分で奏でる「LOVELAND, ISLAND」で本編を終え、一旦退場。オープニングから青いシャツを着ていた山下達郎であるが、アンコールの声に応えて再登場後は還暦を意識して?赤いシャツに色直し。「クリスマス・イブ」に始まり「RIDE ON TIME」でのオフマイクのアカペラと拡声器使用は、これも伝統行事。「別に意味はないんですが」と云いながら、お客の側のクラッカーの様に彼自身がせずにはいられないのだろう。
ソリッドな「YOUR EYES」を以て全プログラムを終了するまで、この日も3時間超えの長丁場。だが意外な程短く感じ忽ちの内に時間が過ぎるのは、類い希なエンターテイナー・山下達郎の確かな手腕と才能によるものに違いない。

あくまでも“ファン”でなく一定の距離を置く只の視聴者の立ち位置で山下氏の公演には接しているが、音楽的高揚で時折我を忘れそうになる瞬間が愛おしく思える様になってきた。
我儘を云えば幾つかの気に入った曲、例えば「HEY REPORTER!」や「風の回廊」、これも最近浮上し出した「ターナーの汽罐車」等、通い続けていればいつか聴ける日が来るだろうか。
何よりも「蒼氓」のフルコーラスを生で聴きたいと望んでいるが、古くからのファンの方によれば嘗ての(ライブにおける)「蒼氓」の位置に当たる曲を今は「希望という名の光」が担っているという話も聞くので、少なくとも当分(全曲を)歌うことはないのだろうか。

メンバーは昨年と同じ布陣。全国ツアーを再開した5年前よりこの顔ぶれは不動らしい:

小笠原拓海(Drums)
伊藤広規(Bass)
難波弘之(Acoustic Piano & Rhodes)
柴田俊文(Keyboards)
佐橋佳幸(Guitars)
宮里陽太(Saxophone)

国分友里恵(Background Vocal)
佐々木久美(Background Vocal)
三谷泰弘(Background Vocal)

山下達郎(Vocal, Guitars, etc.)

最後に今一度お断り:
これより下に当夜のセットリストを掲載するので、ネタバレNGの方はお引取りを。

山下達郎〜20131003

01 新・東京ラプソディー
02 SPARKLE
03 LOVE SPACE
04 ずっと一緒さ
05 あしおと
06 ひととき
07 スプリンクラー
08 PAPER DOLL
09 FUTARI
10 God Only Knows
11 Groovin'
12 My Gift To You
13 Bella Notte
14 Have Yourself A Merry Little Christmas
15 DANCER
16 希望という名の光(〜今日をこえて〜蒼氓)
17 メリー・ゴー・ラウンド
18 LET'S DANCE BABY(〜硝子の少年〜I Got A Woman)
19 アトムの子(〜アンパンマンマーチ)
20 LOVELAND, ISLAND

アンコール
21 クリスマス・イブ
22 RIDE ON TIME
23 愛を描いて-Let's Kiss The Sun-
24 Your Eyes
posted by 紫乃薇春 at 22:27 | Comment(2) | 音楽
この記事へのコメント
こんにちは。
そして はじめまして。
山下達郎さんのセットリストを検索していてこちらのブログにたどり着きました。
達郎さん、素晴らしかったですね。
来年も参加したいなと思いました

こちらのブログも達郎さんライブ同様に盛りだくさんな内容満載ですね。
今後も楽しませていただきます!

最後になりましたが、こちらのセトリ、いただいても宜しいでしょうか?
Posted by a.h. at 2013年10月15日 13:50
> a.h. 様
初めまして。コメントに気づくのが遅くなりましてすみません。
セットリストの掲載は随分迷ったのですが、自身の覚書の意味もあり「ネタバレ」明記の上載せることにしました。お役に立てれば幸いです。どうぞ(コッソリ)お持ち下さいませ。
余りに雑多な記事を書き散らしているので、傾向でブログを分けようかとも思いつつ、重い腰を上げぬまま今に至っています。お目汚し恐縮です。
Posted by vivian at 2013年10月22日 00:08
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