2012年10月13日

パノラマな週末

明け方目が覚めて戸外に出ると、この秋一番の冷込みと伝えられる程確かに空気はヒリヒリと凍みて、久しく味わったことのないかじかみを指先に覚えた。肌寒いのは心地良いが、肩や肘、腰などやや傷のある箇所は長時間いると辛くなる。
昼夜の温度差が激しく、陽が昇り影が短くなると今度は汗ばんだ。雲が多く出ている所為か、日中は少々蒸し暑い。上空は風が強いのか、地上で感じるよりも雲の流れが速く観る度に形を変えてゆく。時折陽射しが覗くと、ジリ、と肌を燻される気配がした。


県内各所で秋桜が満開を迎えているらしい。今朝もテレビで諌早の白木峰高原が見頃だと告げていた。
佐世保・下船越町の展海峰は昨年も訪れた秋桜の名所。自生した苗ではなく、春には菜の花、秋は秋桜と植替え育てているのだが、秋桜が本来この国の野生種でなく帰化した品種であることを思うと、この管理された畑の花を愛でるのが望ましいのかも知れない。
出掛けたのは週末の丁度お昼頃。花畑だけでなく、九十九島の人気眺望スポットの一つでもあるので渋滞を覚悟していたが、思いの外すんなりと辿り着いた。しかし、現地には既に先客の観光客が大勢いて、駐車場の空きは僅かだった。我々の後から何台も来場車両があって、あと少し遅く来たら恐らく空き待ちの列に並ぶ目に遭っただろう。

昨年は夕暮れ間近だった為、観る内に陽が沈み辺りが暗くなってしまった。夜間の来場者の為に花期はライトアップが行われ、それはそれで独特な艶を醸していたが、この花はやはり陽の光の下で映える気がする。
生憎着いた時は雲が厚く色味に生彩を欠いていたが、暫く佇み、また散策する間に幾度か陽が差して、濃淡の紅や白、黄色など幾層もの花の色を堪能出来た。
パノラマな週末〜20121013
人々を楽しませる花園はまた数種の虫達の楽園でもある様で、一歩歩くとざわざわと、何らかの羽音がさざめく。セセリチョウやミツバチなら可愛いものだが、黒々として巨大なクマバチが重機の様な羽音を唸らせながらしきりに脇や鼻面を掠めてゆくのにはさすがに怯んだ。見かけによらず大人しい種だと知ってはいても、うっかり怒らせて刺されようものなら酷い痛みと腫れでうなされるだろう。軽く一周した処で花壇を出て、展望台へと向かった。

展望台に連なる斜面の草地には山羊がいて、牧草を盛んに噛んでいる。昨年もいた親子だろうか。見渡してみると4匹。昨年はあと1、2匹いた様に思うが、記憶は曖昧である。
短い角と横長の瞳孔を持つ風貌がしばしば悪魔に喩えられるが、仔山羊は仕草も姿もとても可愛らしい。観光客にも人気があり絶えず周囲に何人かが群がっているが、当の山羊達は無関心を装いながらも少し迷惑そうだ。ふと人垣が途切れた隙に私も仔山羊の傍に近寄ってみたが、不機嫌そうな嘶きを浴びせられてしまった。はっとして背後を振向くと、やや離れた岩にもたれた大人の山羊が覚めた目つきで此方をじっと見据えている。この仔山羊の父親か、母親か。もし私が仔山羊に危害を加える様子があれば、すぐさま飛び起き突進してきそうな気配である。山羊の脚力は計り知れないが、ただの頭突きを喰らっても角が刺されば充分痛そうだ。仔山羊を撫でたり抱いてみたい気分を堪えてそっと立退いた。


展望台に上り九十九島を暫く眺めた後、展海峰を下りて北松へと向かった。駐車場の入口にはまだ短いが車の列が出来始めており、これからどんどん混むのだろう。訪れた時間、待つこともなく停められたのはやはり幸運だった。
北松にある二つの道の駅「昆虫の里たびら」と「松浦海のふるさと館」をハシゴして、スタンプを押す。現在、九州及び沖縄の道の駅ではスタンプラリーが行われており、今月末まで。7月下旬に始まっていたらしいが、暫く道の駅とは御無沙汰だった為つい先日まで気づかなかった。10月に入ってから近場の道の駅を幾つか、意図して巡っている。
パノラマな週末〜20121013
「昆虫の里たびら」は入口にデカいカブトムシのオブジェが掲げられ、目を引く。以前から北松を通る度に気になっていたが、大抵その先の松浦に寄ってしまう為、立寄るのは実は今回が初めてである。
施設はどちらかと云えば狭く、飲食施設は無しで売店のみだが、店内には昆虫標本が飾ってあり、観ていると楽しい。付近には「たびら昆虫自然園」という生きた昆虫とのふれあいを売りにした施設もあり、この辺り一帯がどうやら虫の宝庫であることを窺わせる。
標本は田平に多い種を採集したものだろうか。ノコギリクワガタやアゲハチョウ、モンシロチョウ等誰でも知っている昆虫の標本もあるが、地域限定の希少種が多い様だ。またマイマイカブリなど子供の頃は時々見たが近頃は名前すら忘れかけていた様な種も展示されていた。希少種という訳ではないが翅の色が他にない国産タテハチョウの一種・ルリタテハをその中に見つけた時は思わず嬉しくなった。数ある日本の野生の蝶として、最も好きな種だ。

「松浦海のふるさと館」は北松を巡る時しばしば休憩所として利用しているが、いつから棲みついたのか白黒の主の様な猫が出迎えてくれた。随分人に懐いているらしい。寛いでいる処を失礼して近くにしゃがみカメラを突きつけたら、ノソリと起き上がり、ナァ、と鳴きながらこちらに来た。フーちゃんと呼ばれ、どうやら施設の人達にも可愛がられているらしい。
パノラマな週末〜20121013
少しの間戯れながら、先日訪ねた伊万里の道の駅の駐車場にも主らしき猫が鎮座していたのを思い出した。


松浦の道の駅を出て伊万里方面へ向かうと、程なく日没を迎え宵が闇を忍ばせ始めた。
今福の港の近くで祭の明かりが灯るのを横目で見ながら、何処へ行こう?―展海峰と北松で目的は達し、後はおまけの様なドライブである。
伊万里市街を抜けて佐賀の県道を通り、山内の畜産試験場脇に出た。更に武雄を経由して嬉野へ。峠を越えて彼杵に出ると、大村まで足を伸ばして夕食を摂り、買物をした。帰りはJRに沿って国道34号から205号を北上して佐世保方面へ抜け、帰宅。
思いがけず長崎県北(及び佐賀県西)ぐるり周遊の週末となった。


posted by 紫乃薇春 at 22:16 | Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。