2010年04月21日

不義理の部屋で

二十一年前に産み落とされた言霊。

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日付が変わる
二時間程前には眼覚めていたが
雨戸が半開きで
ガラス戸も網戸を残して開いていたので
これで雨なら 僕はいい濡れネズミだ
それから半時間程は
布団の中で自分の体と戯れ合ってた
血管と肉の襞を波が次第に一点へと打ち寄せ
心ならずも 「あ」と短い声を漏らした瞬間
それは時が逆行しはじめる瞬間でもあって
指と 波の退いた浜辺を紙で拭うと
雨戸と窓を閉めた

今 部屋は黄色いランプの下で
しわ寄せた顔で踊り狂っている
遠くで汽笛
(警笛?)
でも (彼)はこの部屋の住人じゃない
隣家の爺さんに覗き見された気分で
ランプを消した

秋の果実の季節から
夏の終りまで
眠りにくるまって過ごした

イェロー・ランプを再び灯すと
フィラメントが切れたので 僕はライターを探しあてた
左手に火 右手にペン
次第に熱を帯びはじめる指先にひきかえ
この部屋は 底冷えがするようだ


(1989.4.21)
for T.I.

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Copyright(c)Shunji-Oda
このページに掲載した文学作品等の著作権は全て
作者・小田春史氏に帰属します。
無断転載等一切は固くお断りします。


posted by 紫乃薇春 at 20:19 | Comment(0) | ことばたち
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