2012年03月26日

山下達郎 at 長崎ブリックホール

TATSURO YAMASHITA
PERFORMANCE 2011-2012

2012年3月26日(月)
長崎 ブリックホール

OPEN 18:00/START 18:30

山下達郎@長崎〜20120326壱

公演内容の詳細やセットリストの公開はなるべく御配慮頂きたいというのが当人からのお達しらしいので、まあ程々に。

あると聞いて以前から気になっていた山下達郎ツアーの九州公演、長崎か福岡のどちらかは行ってみたいと思っていた処幸い長崎公演にチケットのキャンセルが出たので足を運んだ。
平日の夕方からの為、現地到着までが一苦労。数ヶ所での渋滞にも嵌りつつ漸く会場に辿り着いたのは開演5分前。長丁場のライブと聞いていたので済ますべきものをそそくさと済ませ、客席への扉を押開けようとしたその時背後でブザーが鳴った。
バタバタとして息をはずませながらも上着を脱ぎ、着席して一呼吸するだけの間はどうにかあって、携帯の電源を確認したり荷物を椅子の下に押込んだりしていると、まだ客電の明るいままSEが流れ始めた。昨年秋にリリースされた最新アルバム『Ray Of Hope』より、アカペラの前奏曲である。

山下達郎のコンサートは当人の言によれば演劇的趣向を取入れているらしく、舞台設営にも毎回相応の拘りを持って組んでいる様だ。今回のツアーでは向かって左に楽器屋、右に倉庫を模した建屋を据え(随所にギターやコルネット、打楽器の類等幾つもの楽器がオブジェとして散りばめられてある)戸外の路上でパフォーマンスを演じるという、謂ばストリート・ミュージシャンの気分で臨むものらしい。2階席後方からなので細かい処は見えないが、センターのヴォーカル・マイクのスタンド背後には小道具も色々用意されている様だ。
徐々に客電が落ちてゆく中左袖よりバンドのメンバーが、そして楽器屋の外階段から山下達郎が登場すると大きな拍手。山下が「トレードマーク」と語る茶色のテレキャスターを構え合図を送るとすぐさま一曲目「Big Wave」のテーマが始まった。

ここ数年の井上陽水もそうだが、プログラムに記された開演予定時刻通りに始まってくれるコンサートやライブというのは実に有難い。関東住いの頃しばしば聴いたライブハウスでの出し物等は予定を30分押しなど当り前で、慣れてはいるが待つ間に胃やら腸やらキリキリと痛んでくる体質なので正直始まる前に消耗してしまう。今日の様に開演ギリギリに到着した時など5分なりとずれてくれれば良いのに…と思わないでもないが、それは此方の身勝手というものである。
演奏曲目はソロ・デビュー以前のシュガー・ベイブ時代の作品から最新作まで新旧取混ぜ、初めてのお客もいるので有名どころや定番の曲を必ず入れて…と、オリジナル・レパートリーの250曲近くにもなった現在では「どの曲をやるか」よりもむしろ「どの曲をやらないか」で頭を悩ませるらしい。しかし「新譜を出すと、その中の曲も演ってやらないと可哀想」とも語り、アルバム単位で見れば『Ray Of Hope』からの曲がアンコール含めおよそ25曲の内5曲と最も多かった。殊に昨年から始まった今回はアルバム発売に合わせて行われるツアーとしては1998-1999年の『COZY』以来12年振りとのことで、より新作の比重が増したのではないかと思う。
ライブ序盤に演奏した「プロポーズ」を女性からの反響の最も多い曲、としながら前半最後では男性諸君が恐らく一番聴きたい曲と銘打って「俺の空」を演奏。長い振り(伏線)に思わず笑ってしまったが、後半の佐橋佳幸とのギター・バトルからラストの捨て台詞「返せよ、この野郎」まで良い意味で非常にアグレッシブで鳥肌が立った。
この「俺の空」は最も顕著だが、冒頭間もない「SPARCLE」のイントロなど要所要所で山下自身のギターがクローズアップされていた。歌い手としては云わずとも多くの人々からリスペクトされる彼だが、同様に優れたギタリストであることを確認出来る生演奏であった。

山下達郎@長崎〜20120326弍

彼のライブには幾つかの恒例行事がある様で、中盤に設けられたアカペラ・コーナーもそのひとつ。当人が「困った時のアカペラ頼み」と語る程思い入れがあり、また力を注いでいるアカペラだが、実演ではどうやるのだろう、コーラス部隊が袖に3名いるのでその人達とやるのだろうかと思っていたら、あらかじめ録音したコーラスを再生しながらメイン・パートを歌う謂ばカラオケ方式だった。多少拍子抜けがしたが、カラオケ自体山下自身が幾重にも声を重ねて多重録音したものであり、ライブよりスタジオワークに立会っている気分ではあるが遜色はない。しかし「僕には絶対音感がないので」と云ってハーモニカで音合わせをしていたのは少々意外だった。あれだけ達者なアカペラの主に絶対音感がないというのが腑に落ちないが、しきりに自身のトークを(東京者としての)洒落だのジョークと促していたので、これもその類かも知れない。
その他の恒例行事としては「Let's Dance Baby」における〜♪心臓に指鉄砲〜という箇所での、客席からのクラッカー。この曲は発表以来、唯一どの公演でも欠かしたことのない皆勤賞の曲だそうだが、その理由がこのクラッカーだそうだ。元はとある公演で二人の客が(レコードでのピストルのSEの部分で)洒落でクラッカーを鳴らしてみた処、瞬く間に全国に波及しどの会場でも多くの客がやる様になったとのこと。山下自身は幾度も「次からはもう、この曲は演らないからクラッカーは持ってこない様に」云おうと思いながら、その度に客の顔が目に浮かび云えず、ここまで来たら最早「毒を喰らわば皿まで」。続けられる限り歌ってゆくので宜しくとのことであった。

事前に聞いてはいたが長いライブ。どのレビュアーの話もおよそ3時間半というが、開始同時に時計を見ると18時35分、終了直後に再度見たら22時02分。約3時間27分、確かに噂と殆ど違わなかった。
長いと云えば長いが実際はそこまでとは感じない、良い意味でのエンターテイメント性に満ちた飽きの来ない内容。曲、お喋り、パフォーマンス、恐らくほぼ全てが「仕込み」なのだろうが、それがアドリブに見えてしまう軽業。それでいて音作りと云い構成と云い完成度抜群。本来は裏方志望で非常に音にうるさい山下達郎という人物の面目躍如か。
長尺には大きなうねりを伴っている。イベント、もしくはパフォーマンスのピークが中盤のアカペラと終盤の「Let's Dance Baby」、テンションのピークが前半の「俺の空」と本編最後の「アトムの子」ならメンタル面での頂点はライブ中盤から終盤に差掛かる流れの中で謳われたRay Of Hopeいや「希望という名の光」であろう。この曲自体が今回のツアーの内なる主題とも云えるが、この曲に入る前のMCを聞きながら実はとある曲を思い出していた。「希望という名の光」を初めて聴いた時その曲と通じるものを感じたのだが、「希望」の間奏の後、よもやのその一節が謳われた:

〜ちっぽけな街に生まれ
   人込みの中を生きる
 
 泣かないで この道は
   未来へと続いている〜

本当に僅かなフレーズのみを選び取っただけで終ってしまったが、この瞬間が最大のハイライトだったと思う。
昔も今も山下達郎のファンでは決してなく、どちらかといえば生理的にはむしろ合わない処が多く、ただ認めざるを得ない力のある人、という位置にいるのだが、そんな人のコンサートに行き激しく涙腺を刺激されることになるとは、正直悔しさもある。それだけ私が素直でないからか。
しかし「口から先に生まれてきた」との当人の弁通り、本当によく喋る人だ。少々きついことを平然と放つもののユーモアがあり面白おかしく笑えるトークもかなりあるのだが、フォークを揶揄する発言などはいささか旨味に欠けていた。まあ、本人がそれを好かない気持はありありと伝わってきたが…いささか手前味噌な発言が多いのもどうか。「洒落だから」と云われても、落ちの付かないこともある。
とはいえ歌声そのままに、殊の外早口でリズミカルに喋る口調はそれ自体が歌の様であった。この界隈、歌が上手いとか声が良いとか云われる歌手は無数にいるが、歌う様に喋れる人となるとそうはいない。この山下達郎とかの井上陽水くらいのものか。

山下達郎@長崎〜20120326参

今回の布陣を:

小笠原拓海(Drums)
伊藤広規(Bass)
難波弘之(Acoustic Piano & Rhodes)
柴田俊文(Keyboards)
佐橋佳幸(Guitars)
宮里陽太(Saxophone)
国分友里恵(Background Vocal)
佐々木久美(Background Vocal)
三谷泰弘(Background Vocal)

山下達郎(Vocal & Guitars)


posted by 紫乃薇春 at 22:49 | Comment(0) | 音楽

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