2011年12月11日

月蝕

昨夜から今朝未明にかけて、皆既月食が観測された。前回日本で起きた皆既月食は今年の6月16日でありおよそ半年振りで、決して長い間が空いたとは云えない。但し、6月の月食は月が欠けたまま沈んでゆく所謂月没帯食と呼ばれるもので、食の終りを日本からは見ることが出来なかった。今回は2000年の7月16日以来約11年振りの好条件に恵まれた皆既月食と事前に伝えられていた。
しかし、時間帯は好条件であろうと肝心なのは天気である。昨日、長崎県北はほぼ終日の曇り空。夕方からの晴れ間を期待していたが、予報ではむしろ遅い時間程下り坂であった。

2000年7月の月食は様々な条件が重なり、数ある月食の中でも最も長い皆既月食のひとつと云われた。その為世紀末とも相俟って各メディアも事前から盛んに取上げ、多くの人の関心を引いた。当日は好天に恵まれ、防寒対策を必要としない夏期の天体イベントということもあって、大勢の人が食を観る為空を見上げたと聞く。私もその日は朝からうきうきして、夕方前には外出し食の始まる直前の夜8時過ぎには当時棲んでいた神奈川県東の隣町の駅に降立ち、絶えず月の見える道を選んで遠回りしつつ、携帯用再生機器(当時はMD)で黒百合姉妹の「月の蝕」をエンドレスで聴きながら、食の終る翌17日の午前1時過ぎまで延々歩いた記憶がある。
当時は月や星を観るのは好きだがちゃんとしたカメラ等も持たず、いずれの夢ではあったが被写体にするなど到底覚束なかった。今世紀の初めに漸く携帯電話を手にして、その2台目にカメラ機能の付いた機種を持つ様になってから気軽に写真が撮れる様になり、やがてデジタルカメラを買い漸く星にもレンズを向ける様になった。以来月の写真も幾度となく撮ってきたが、今回はそうして初めての月食であり是非全過程を収めたい、あわよくば数百枚のスチールを並べて動画を仕立ててみたい、等と目論見を膨らませていた。
しかし先の通りの昨日の天気、夕方になり身仕度を始める時点で気分は相当落込んでいた。半影月食の始まりが20時31分、本影月食の開始が21時45分であるが、それより大分早い夕方の6時前には家を出た。

甚だ悲観的ではあったが、駐車場から顔を出し空を伺うと雲が切れ、鮮明ではないものの星が出ていた。これなら希望が持てるかと俄かに高揚して、天をよく捉えられそうな西海橋方面へ向かって車を走らせた。途中、半影食の開始までまだ2時間もある18時半頃には東の低空に丸い月がくっきりと浮かび、夜道を照らしていた。まず月が見えたことに安堵と感銘を覚えたが、不穏な黒雲が上空の風に圧されて急速に月へと向かっていた。
その後天気は豹変し、19時前には車のフロントグラスを雨粒が激しく叩いた。それでも暫く遠い空に月は見えたが、やがてそれも雨雲の向こうに閉め出されてしまった。
車窓を伝う滴を恨めしげに見ながら、月食の始まりにはまだ間があるので取敢えず腹拵えをすることにした。丁度夕飯時を迎え、空腹であることにやおら気づいて通りすがりの食堂に寄った。

小一時間程食事で過ごし、20時過ぎに店を出た。雨は小降りになっていたが、月は何処にあるのかわからない。
ひとまず西海橋付近まで行ってみたものの、雨が降ったり止んだりの天気が続きどうも芳しくない。西海でそのまま粘る選択肢もあったが、これは当分無理、と早めに割切り一旦帰宅することにした。
途中百貨店に寄り、切らしていた食材などを買ってから帰路に就いた。フロントグラスを打つ雨は強くなったり弱くなったりしていたが、家が近づいた頃ふっつりと止んだ。車を降り、立ち並ぶマンションの隙間から空を伺うと、暗雲がひしめき合いながらも処々に切れ間が見える。そして瞬時月が姿を覗かせた。既に夜の10時を回り、一端が欠け始めていた。取急ぎ買物袋を携えて家に戻り、改めてカメラを担ぎ近所の公園に繰出した。

雲の隙間はか細く、月は頼りなく見え隠れしていた。公園で空の開けた場所を見つけ、慌てて幾度かシャッターを切った。皆既を迎える23時間近で、月は早くも三日月程度にまで欠けていた。欠け始めから段階を追い捉えたかったが、この不安定な天候の下では如何ともし難い。だがとにかく、欠けた形の数枚だけは収めることが出来たので、最悪な晩にはならずに済んだ。

月蝕〜20111210-1211壱

月蝕〜20111210-1211弐

月蝕〜20111210-1211参

その後皆既の様子を捉えたく見守っていたが、23時05分を目前にして雲が扉を閉ざしてしまった。今回の皆既時間はおよそ53分。終了する23時58分までに一度でも赤銅色の月が収められればと待ち構えたが駄目だった。いや、実はほんの一瞬雲の薄くなった箇所が月を横切り、見えるには見えた。だが場所の見当を誤り、レンズを向け直す間にまた隠れてしまった。その後部分食のほぼ終る午前1時過ぎまで佇んでいたが、その晩は二度と月が姿を現すことはなかった。
しかしその一瞬に見た食の月は殊の外明るく、ダンジョンの尺度で云えば3(5段階の4)クラスに見えた。この明るさは月を遮る地球大気の塵の量によるらしく、あれだけ明るく見えたということは、今の地球の大気が思いの外澄んでいるということだろうか。
我が国で次に見られる月食は来年の6月4日、再来年は無くその次は2014年の4月15日だが、これらはいずれも部分月食である。皆既月食を観るには更にその先、2014年の10月8日まで待たねばならない。

話は変るが今月の天体イベントとしてもうひとつ、双子座流星群が現在その時期を迎えている。ピークは今月14日の夜から15日未明と云われているが、週間予報を見ればまた曇りである。
過去には何度も活発な活動に遭遇し個人的に相性の良い流星群であるが、昨年は遂に満足に観られず終った。今年は如何な塩梅だろうか。


posted by 紫乃薇春 at 21:03 | Comment(0) | 星見日記

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